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薬学生のホンネ テーマ「6年制薬学教育」

2006年度よりスタートした6年制薬学教育。
実際に6年制で勉強する薬学生の皆さんに「6年制薬学教育」についてざっくばらんに聞いてみました!
セコメディック病院(千葉県船橋市)薬剤部長の長澤宏之先生にご協力いただき、4年制教育を受けた薬剤師として、また、6年制教育で非常勤講師として複数の大学教育に関与する実務教員としての意見もお伺いしました。
※所属は2017年10月座談会開催時点のものです

星薬科大学5年生

海老原 奈々さん

医療法人社団誠馨会セコメディック病院 薬剤部長

長澤 宏之先生

星薬科大学5年生

斎藤 勇太さん

城西国際大学5年生

関 隼人さん

城西国際大学5年生

五十嵐 哲太さん

城西国際大学5年生

藤田 清花さん

城西国際大学5年生

松原 征司さん

6年制になって良かった?

  • 藤田

    色々考える時間も含めて、大学生活に余裕が出たかなと思います。4年制の頃は、4年生のときに卒論をして、授業もまだあって、就活もして、国試もあって…全部が重なっていましたよね?きっと大変だっただろうなと思います。ただ、6年制に変わってから社会に出た人に対して、現場の方がどう感じているのかを聞く機会がないので、どう良かったのか私にはまだ分かりません。また、患者さんや多職種の方で薬剤師を必要としてくれている方たちが、どのくらいメリットを感じてるのかも気になりますが、今の段階では知ることができないですね。

  • 海老原

    2年多く学生をすることで、薬剤師として働ける年数が2年短くなるので、単純に薬剤師である寿命が短いのかなと思います。実習は学生目線で現場を見られるので、とても大切だと思いますが、あえてデメリットを挙げるとしたらそこですね。最近はレジデントも増えてきていて、研修生的に捉えるのであれば、更に薬剤師としての寿命は短くなるのかなと思っています。

  • 五十嵐

    6年制になって、僕たちはまだ試される世代だと思っています。自分たちが選んだ訳ではないのに、「6年制で本当に良かったのか」というのをこれから自分たちが考えて色々なことをやっていかないといけないので、そこはちょっと辛いなと思う部分ですね。6年制になってもしかしたら大学院に行く人が減ったのではないかと思っています。6年終わってからまた4年となると負担も大きいですし、僕たちの大学の同級生では一人も聞かないですね。

  • 斎藤

    現場の目線や考え方が少し理解しやすくなったように感じます。これは将来どの職に就いても役に立つと思います。ただ、6年制になったにしては内容が足りないようにも感じています。これから薬剤師がやらないといけないことが増えていくので、それをもっと勉強させてほしいですね。バイタルサインや在宅での薬学的管理、健康サポート薬局を目指すなら、健康食品やサプリメントも把握していかないといけないですよね。

  • デメリットとしては間延びしているように感じています。僕の父は薬剤師で4年制を出て「3年で終わるものを4年にしてやってた」という風に言っているので、4年でできるものを6年にしている意味は本当にあるのかなと思います。学校でやることよりも社会に出てから学ぶことの方が絶対多いと思うので、それなら早く社会に出て知らないことをどんどん吸収した方が良いのかなと思います。

  • 松原

    6年制になっても、薬剤師という資格でグローバル化は考えられていないのかなと思います。例えば、貧困が問題になっている国では、学校に行けず勉強もできないまま親になる人たちがいます。薬という視点でどんな風に支援できるのかなと考えたり、調べたりしてみたのですが、ボランティア団体しか出てこず、国際的に薬剤師として力になるのは中々難しいようでした。

  • 長澤

    国内のライセンスだからね。私がインドのグループ病院に行っても調剤や患者さんへの服薬説明はできません。希望を言えば、そういうところを皆さんに切り開いていってほしいと思います。そもそも6年制になった要因は大学で説明されていますか?

  • 全員

    説明はないですね。

  • 長澤

    皆さんが言っていたメリットの部分が正しく、薬という「物」を対象に扱っていた薬剤師を、高度化する医療現場の中で「人」、つまりは患者さんを対象に薬物治療に参画できるよう、もっと臨床経験・意識を持たせましょうということです。そのための長期実習ですが、4年間に11週の実習を2回組み込んでしまうと、研究や論文、国家試験や就職活動に支障が出てしまうので、2年延長しました。更に臨床現場での実習のクオリティも上げなければいけないので、OSCE試験とCBT合格という仮免許を作って、ほぼ薬剤師と同等のことをしてくださいね、ということにしたのです。でも、OSCE試験とCBTはお作法みたいになってしまったので、試験内容の見直しが検討されています。2019年2月からは、実務実習も大幅に見直されます。こうやって今後の活躍を期待されている薬剤師さんのためにも悪いところを改善していっています。
    皆さんはパイオニアですよね。
    実習生を受け入れている側の感覚として言うと、6年制になって非常にコミュニケーション能力が長けたと感じています。我々4年制卒が初めて病棟に行って「患者さんに説明して」と言われたときには震えながらやっていましたが、OSCEや学内での事前実習を経験すると「わかりました!」と入っていくのですごいですよね。また、医師との連携についてもきちんと学んで事前実習をしてきているので、医師のところにも物怖じせずに行ける人が増えています。調剤も実習でやってきているので、すぐにできるようになります。6年制になって良いところは沢山出てきています。でも、逆に「まだそれだけ?」という希望もあるので、是非皆さんの活躍を見せていただきたいと思います。6年間勉強しているというアドバンテージをきっちり活かして、薬剤師のステータスを高めていってもらいたい、というのが現場で頑張っている薬剤師の意見だと思いますね。

  • 松原

    医師や看護師が1〜2年の実習を行っているのに、なぜ薬剤師は6年制になったのにたった11週×2なんだろうと思います。せっかく2年伸ばしたのだから、実習期間ももっと伸ばしても良いと思います。

  • 長澤

    今、教育機関の方でも実習の見直しを考えていて、病院と薬局の期間の変更や通しでの実習プラン、ルーブリック評価も検討されています。今後、皆さんの意見で変わっていくと思います。

  • 五十嵐

    現場に出てみて、大学や教育現場に物が言えるところがあればいいなと思います。皆それぞれ感じるところはあってもそれを言うところはなくて、仲間内で話すだけで終わってしまいます。

  • 長澤

    それこそ、人との繋がりが大事で、就職してからどれだけ視野を広げられるかだと思います。病院にいても調剤薬局、ドラッグストアにいても外の勉強会にどんどん出ていっている人たちは視野がどんどん広がって、そういう人たちはどこかで必ず繋がるもので、こういう誌面で出会えたりするんです。笑 6年制の皆さんは度胸とコミュニケーション能力を持っていると思うので、頑張っている仲間との繋がりで、実力を積み重ね、色々なところに発信していってほしいですね。

今後の医薬業界についてどう思う?

  • 藤田

    薬局がすごく減って、門前から撤退して…となったときに、「実力のない人は切られる」と大学の先生にも言われています。

  • 実家は個人経営の薬局なのですが、薬局はどんどん厳しい状況になっていると思います。外で大手チェーン薬局を見ると効率がすごく良くて、ジェネリックを自社で出して薬局でそれを使って、全部お金がまわってきているので、経営上はうまくいっているように見えます。でも、それが本当に良いのか悪いのかというのはわからないと思います。

  • 長澤

    経営として今は成り立っているけど、社会性を考えて正しいかどうかは判断する人によって異なりますね。

  • 五十嵐

    薬局は減っていくので、中小よりも大手の方が有利ではあると思います。ただ、薬剤師の免許を取ったからといって臨床現場に出なければいけないということではないと思っています。色々な分野を取り入れて、いずれ医療業界に戻ってくるっていうのもありかなと考えています。

  • 斎藤

    大学ではこれからの薬剤師にどういうスキルが必要になってくるかについてはよく聞きますが、少し美化されている部分もあると感じます。あまり暗い話はなく、実習で現場に出て初めてわかったこともありますね。

  • 長澤

    オックスフォード大学の准教授が発表した「20年後にはなくなる職業」の中に薬剤師は入っていませんでした。調剤の機械化がほぼ出来上がってきている世の中で、なぜ薬剤師が滅びる方に入っていないのかというと、人体はロボットのように一律ではないので、同じ薬を飲んでも人によって吸収や排出が異なります。その一人ひとりに合わせていくことや、それを理解してもらうコミュニケーションスキルが薬剤師に求められるところだからだと思っています。
    私が20年近く薬剤師をやってここまできたのに対して、皆さんからもうそんな言葉が出るのかと感心することが多くありました。そういうところにも6年制の効果が出ているのだと思います。将来皆さんの社会に出てからの活躍にとても期待しています。頑張ってくださいね。