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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第2回 アロマからのメッセージ

前回はアロマテラピーの歴史的な部分を簡単にお伝えしました。アロマテラピーって何かという輪郭がわかったところで、今回は香りの伝達経路と嗅覚の特異性についてお話したいと思います。

香り成分が鼻の粘膜にある受容体に結合すると、その刺激がインパルスとして変換され、嗅神経を通じて嗅球に伝わります。その後が嗅覚の特殊なところですが、真っ先に大脳辺縁系に伝わっていきます。
大脳辺縁系の別名は「古い脳」。つまり感情、好き嫌いを司る扁桃体や記憶を司る海馬などがそばにある、人間の根本的な部分である脳にダイレクトに作用するのが、嗅覚の素晴らしいところです。その後に、視床下部に伝わり、自律神経・内分泌系・免疫系をゴロっと変えますし、視床下部から認識を司る新しい脳と呼ばれる大脳新皮質にも伝わっていきます。
例えば、目隠しをして視覚情報を絶った状態でオレンジの香りを嗅ぐと、人はすぐにオレンジとは気づきません。まず「ああ、よい香りだなぁ」と心地よいということを感じたあとで、「あ、オレンジだな」と香りの種類を認識します。これは上記の香りの伝達経路の特殊性により、まず大脳辺縁系に伝わり感情や好き嫌いで捉えた後に、大脳新皮質で理解するために香りの認識にはタイムラグがあるのです。

視覚や聴覚では、この経路は逆になります。例えばオレンジを実際に見た場合、「あ、オレンジだ」と認識してから「あまくておいしい、自分が好きなものだ」と捉えますよね。これは大脳新皮質への情報が先だから、認識が先にくると言えます。
このような理由から、感情や記憶に関する部分を豊かにしたい時には、嗅覚を適度に働かせるとよさそうだと言うことができます。実際に小学生に香りの重要性を伝えて心豊かな子に育ってほしいという願いから、「香育」という学習の分野が誕生しています。アロマテラピーの諸団体はボランティアで学校やPTAの集会などで積極的に講座やイベントを開き啓蒙し始めています。また、認知症など、脳の疾患の初期症状の多くに必ず「嗅覚異常」が現れますよね。日常生活に香りを取り入れることは、実は気づかぬうちに最先端のセルフメディケーションをしていることになると言えます。

香りの使い方は本当に自由です。香りが活かされるところであれば、とにかく応用が効くというのが、目に見えないアロマの優れたところ。私が日常使いで気に入っている方法はズバリ、精油専用のマグカップを一つ用意しておくことです。マグカップに入れますが、決して飲みませんよ。マグカップにお湯を張り、そこに精油を数滴垂らすだけ。お湯の熱で精油分子が飛び、香りが適度に立ちますので、一人分くらいのスペースであれば十分に香りを楽しむことができます。香りが薄くなったら精油ではなく、お湯を足すとまた香りが立ち始めます。これならオフィスでも、ご自宅でも、いろいろな香りを簡単に楽しめますよね!

あともう一つ。シャワーを浴びる前にバスルームの床面の、隅の部分に(踏まないように)精油を数滴落としておくと、シャワーを浴び始めると同時に香り立ちとても気持ち良いです。朝でしたら目が覚める柑橘系のレモンやオレンジスイートを、夜でしたら優しい香りでリラックスできるヒノキやローズウッド、ラベンダーなどをおすすめします。香りのシャワーで気持ちもすっきり着替えて、暑い夏を自分らしく楽しんでみるのはいかがでしょうか?

薬剤師のアロマテラピー