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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第5回 知って納得!精油の性質

これまで精油の概要をお話してきました。今回は精油の性質について触れたいと思います。薬学生・薬剤師のみなさんですから、精油の性質を深く理解することにより、自ずと扱い方がお分かりになると思います。

おさらいになりますが、精油とは何かといいますと、「植物から抽出さえた芳香物質」であり、その正体は「数百種類の有機化合物」ですので、大まかに言うと次の3つの特徴を持っています。
①芳香性
大前提として良い香りがしないと、アロマテラピー(芳香療法)は成り立ちませんね。

②揮発性
常温で気化して私たちの微粘膜につかないと、香りとして感知されませんので、揮発性をもっています。

③親油性
水よりも油に溶けるものがほとんどです。多くの芳香成分が炭化水素骨格に簡単な官能基がついた化学構造ですし、また精油の精製過程で水層に溶けた微量の芳香成分は分留され取り除かれます。水層に浮かんだ油層部分が精油となります。

油になじみやすく揮発しますので、引火しやすい物質と言えます。火の近くは避けて保存しましょう。
またほとんどの場合、水より比重が小さいので、抽出後のフラスコの中では水層の上に浮かんでいます。特殊な例としてクローブ精油やミズメザクラ精油は比重が大きく、水層の下に沈むものもあります。

ここで私がやってしまった悲しい失敗談をお伝えしたいと思います。まだアロマテラピーを習い始めて間もない薬学生時代の頃、経済的な余裕もあまりなかったので、比較的安くて筋肉疲労に良い精油を買ってお風呂に入れようと思い、レモングラスの精油を数百円で購入しました。薬学生はどうしても机の前で長時間勉強しないといけません。肩がパンパンでよく頭痛を起こしていたので、早速、今日はレモングラス風呂にしようと思いました。お湯を張って精油を入れる段階になって、精油が「親油性」であることを、甘くみていました。若気の至りであろうことか、精油10滴をそのまま、湯船に投入してしまったのです。良い香りにウキウキしながら早まって、かき混ぜもせずに足を入れた途端。。。ヒリヒリの灼熱地獄が待っていました。

分子レベルで言えば、水層に精油成分が溶けずに浮かんでいる状態です。水面は部分的に精油成分が100か0かの状態です。そこに体を付けたのですから、100%精油に皮膚を浸してしまった訳です。しかも運悪く、皮膚刺激で有名なアルデヒド類たっぷりのレモングラス精油に、です。

今でも覚えている苦々しい体験ですが、みなさんの精油理解の一助になれば幸いです。精油を入浴に使う場合は、植物油や塩など、基材に希釈してからお風呂に入れてよくかき混ぜれば、安心に入浴することができますので、そちらを強く強くおすすめします。

ということで、次回は精油を上手に使うために欠かせない「基材」についてお話しますね。