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薬剤師が奨学金返済のために知っておきたい12のこと

第4回 奨学金の見えないリスク ~滞納した時のペナルティーを詳しく知る~

日本学生支援機構の奨学金は返済が必要な貸与型なので実質は学生ローンです。 住宅ローンなどの一般のローンと比べると、利用者保護の仕組みが設けられていますが、借金であることに変わりがありません。

奨学金の返済は最長20年と長期間続きます。 もちろん繰り上げ返済することで返済期間を短縮することはできますが、ほとんどの人は毎月の給料から長きにわたって返済しているのが実情です。

その途中、何らかの事情で返済を滞らせてしまうといくつかのペナルティーが発生します。

他学部に比べて学費が高額であり、かつ6年制となった私立大学薬学部卒業者の奨学金の返済負担は大きな問題だと考えています。

ある調査では、一人当たりの奨学金の借入総額が約300万円、返済月額が約1万7000円と報告されていましたが、薬学部生の場合は1000万円以上借りている人が珍しくありません。

実際、筆者もセミナー会場で、日本学生支援機構の奨学金を1000万円以上借りている若手薬剤師の方に何人もお会いしました。中には、留年で奨学金が停止されたため、利息の高い信販系教育ローンを借りざるを得なくなり、借り入れ総額が1800万円にもなった男性薬剤師もいました。

しかも、日本学生支援機構が設ける「返済猶予」などの救済制度が、薬剤師には適用されない可能性が高いので注意が必要です。この点については後述いたします。

まずは、奨学金を滞納した場合のペナルティーを整理してみます。

■日本学生支援機構奨学金の滞納時のペナルティー

<延滞金>
滞納額に対して年率5%の延滞金が上乗せされます。そして、翌月には「当月分返済額」+「前月滞納額」+「延滞金」と合わせた返済が求められます。

<ブラックリスト登録>
3カ月滞納が続くと個人信用情報機関に登録されます。このことを一般的には「ブラックリストに載せられる」と言います。ブラックリストに登録されると、カードを作ることができない、ローンが組めないなど、社会生活を送るうえでの不自由を被る可能性があります。

<長期滞納者には法的措置>
滞納3カ月目までは督促を行うのは日本学生支援機構です。その後4カ月目から8カ月目までは民間の債権回収会社に業務が移管され、滞納9カ月目以降となると法的措置を前提に機構から訴訟が起こされることになります。

前回のメルマガにも書きましたが、奨学金申請時に「人的保証」を選択していれば、自分だけでなく親や親戚までをも巻き込んでしまう可能性があります。

日本学生支援機構の奨学金は、言わば希望すれば誰でも借りられるものです。
しかし、現行の制度は金融事業に位置付けられていることを忘れてはいけません。

■49歳までブラックリストに登録される!?

3カ月の滞納でブラックリストに登録されることは前述しました。
では、どれくらいの期間登録されるのでしょうか。この点についてはほとんどの人が理解していないように思います。

<返済完了後も5年間登録が継続される>
個人信用情報機関への登録は“返済完了後も5年間継続される”ことになっています。
これは滞納を解消した時点からの5年間ではなく、全ての返済を終えた後の5年間です。
例えば、薬局に就職した24歳の時、何らかの事情で奨学金の返済を3カ月滞納してしまった。しかし、その後は滞納分も直ぐに返済し、20年後の44歳で無事完済したとしても、そこから更に5年間登録が続くことになります。

若い頃のちょっとしたミスにより、中年になっても困ることになるかも知れないのです。
大学在学中は学生課などの奨学金担当部署が窓口になってくれますが、卒業後は機構と本人の直接やり取りになるので、奨学金の返済手続きを甘く考えるのは禁物です。

■薬剤師には奨学金の救済制度が機能しない!?

日本学生支援機構では返済が厳しくなった人のための3種類の救済制度が設けられています。

①返還期限猶予
奨学金の返済を最長10年間待ってもらえる
②減額返還
月々の返済額を1/2、または1/3に減額し、その倍数の期間で返済する
③所得連動返還
無利子の第一種奨学金のみを対象に次年度から導入される新しい制度
卒業後の収入に応じて月々の返済額と返済年数が調整される仕組み

新しく始まる所得連動返還は現役薬学部生や既卒者には適用されませんが、「返還期限猶予」と「減額返還」は当然対象になります。

しかしながら、薬剤師がこれらの救済制度を利用できない可能性が高いのです。
その理由が収入基準です。返還期限猶予は年収300万円以下、減額返還は年収325万円以下が申請条件となっています。

パートタイム勤務であればまだしも、フルタイムで働く薬剤師で年収325万円以下というのは現実的には考えづらいです。

配偶者や子どもが居る場合は、一人につき38万円控除されますが、それでも薬剤師の平均年収から見ると救済制度の適用は難しいと思います。

残念なことですが、日本学生支援機構には若手薬剤師が置かれている状況が見えていないのかも知れません。

■奨学金の滞納者数は減少傾向、滞納率は3.9%

日本学生支援機構がスタートした2004年度の3カ月以上の滞納率は9.9%であり、奨学金利用者の10人に1人が滞納していたことになります。

その後、利用者が増加する一方で、滞納率は下がり続け、2016年度末時点の滞納率は3.9%と報告されています。(日本学生支援機構「奨学金事業への理解を深めていただくために」)

この数字をもって、ほとんどの人がきちんと返済しているということを機構は強調していますが、非正規雇用が4割を占める現在では、生活を切り詰め無理をしてでも返済している人も相当数いるはずです。

女性が多く活躍する職種の中で比較的収入のよい薬剤師と言えど、奨学金の借入額によっては返済負担が大きなものとなるでしょう。

現役薬剤師に対して奨学金の救済制度が機能しない可能性があるからこそ、奨学金を繰り上げ返済するための短中期的なライフプランが大切だと思います。

久米忠史 先生
久米忠史 先生
久米忠史 先生

奨学金アドバイザー
株式会社まなびシード代表
http://www.shogakukin.jp/

1968年生まれ 和歌山県出身
奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、 全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間100回を超える。
「奨学金なるほど!相談所」では、無料メール相談も行っている。

【著書】奨学金 借りる?借りない?見極めガイド
【著書】子どもを大学に行かせるお金の話
【連載】All About(オールアバウト)「大学生の奨学金」

奨学金アドバイザー久米忠史先生 無料メール相談

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