はじめまして、奨学金アドバイザーの久米忠史です。
普段の私は全国の高校や大学のオープンキャンパスなどで主に保護者対象の講演活動をおこなっています。
このたびファーネットマガジン編集部からご依頼をいただき、2017年3月までに計6回、奨学金に関するコラムを執筆させていただくことになりました。
奨学金を利用して薬剤師を目指しているみなさんに、毎回テーマを設け、わかりやすく解説していきたいと思います。
第1回目となる今回は「薬学部と奨学金」の関係について考えてみます。
数年前から、テレビや新聞をはじめとするメディアで“奨学金”に関する報道を目にする機会が増えています。しかし、そのほとんどが奨学金制度に対する批判であり、そのため奨学金に対してネガティブな印象や誤解を持つ人が多くいるように感じています。
◆日本の奨学金制度
長らく日本の奨学金制度を支えてきた日本育英会は、2004年に発足した独立行政法人・日本学生支援機構に業務が引き継がれ、現在では毎年130万人以上もの人が奨学金を利用し、その事業予算は1兆円を超えています。
出所:文部科学省ホームページより転載
日本の奨学金は貸与型、つまり返済が必要な実質学生ローンです。
そのことが批判のひとつになっていますが、特に日本学生支援機構の設立以降、滞納時のペナルティーが強化されていることが第一のポイントです。
滞納時のリスクとリスク対策などの詳しい内容については、次回のコラムで解説したいと思います。
では、なぜこれほどまでに奨学金の利用者が増えたのか・・・
それを紐解くキーワードは“進学率の上昇”と“学費の高騰”に尽きるでしょう。
◆昔とは様変わりした進学事情
現在の保護者が高校生であったころと今との進学率の違いを見てみましょう。
出所:文部科学省 学校基本調査
今から31年前となる1985年度の高校卒業後の進路で最も多いのは就職(40%)であり、4年制大学への現役進学率は18.7%に過ぎません。
当時は受験戦争が過熱し、入試の競争倍率が高く浪人する学生も多かったのですが、それでも浪人生を含めた同年度の大学進学率は26.5%に留まっています。
それが現在では、2人に1人が現役で大学に進学しています。この30年間で高校卒業後の進路の1位が就職から大学進学に入れ替わるとともに、進学することが当たり前の時代になってしまいました。
次に学費の推移を見てみましょう。
出所:文部科学省調べ
1985年度の国立大学の初年度納付金は372,000円、私立大学の平均額が711,000円でした。
この頃までは確かに国公立大学の学費は安いといえたかもしれません。
しかし、その後は国公私立大学ともに学費の上昇が続き、現在では保護者が高校生だった頃の2倍近くにまで高騰しています。
ご存知のように、景気の低迷が続く我が国は勤労者世帯の実質所得が減少し続けています。
保護者の収入が減っているにもかかわらず、なぜか大学の学費は上昇し続けたのです。
◆私立大学が支える日本の高等教育と薬学部の学費
海外他国とは異なり、日本は私立大学の比率が高く、全大学生に占める私立大学の在籍者割合が73.4%となっています。(文部科学統計要覧・2015年版)
つまり、大学の学費を語る際には、国公立ではなく私立を基準に考えなければ実情とかけ離れた結果になりかねません。
しかし、逆の見方をすれば、入試難易度の壁があるものの、私立大学の学費を準備できるならば進学費用問題は大幅に解消されるともいえます。
では、最新の薬学部の学費を具体的に見てみましょう。
出所:旺文社 教育情報センター(2016年9月1日)
旺文社教育情報センターが全国の大学を対象におこなった調査で、2016年度の私立大学の薬学部の初年度納入金の平均額が2,153,655円であることが報告されています。
国立大学の初年度納入金817,800円(入学金282,000円/授業料535,800円)と比べると2倍以上ものお金が必要になります。
これは全私立大学の平均額であり、大学によっては100万円近くもの差があるようです。
また、授業料に含まれない費用もあるので、実際の必要学費はより高額になるでしょう。
しかも、2008年度に4年制から6年制に移行されたことで、薬学部は昔よりも遥かに高額な費用が掛かる進路になりました。
そのため、薬学部で学ぶ学生にとっては、他学部以上に奨学金が欠かせない存在となっていますが、前半で触れたように奨学金にはリスクが存在します。
次回の当コラムでは、奨学金の基本的な内容とリスク、リスク対策について解説したいと思います。