第1回目のコラムでは、薬学部生にとって奨学金が必要不可欠となっている事情と背景について書きました。
今回は、奨学金の種類と現在問題となっている滞納した場合のリスクについて解説したいと思います。
◆ほとんどが貸与型である日本の奨学金制度
奨学金を大きくわけると、「公的な奨学金」と「民間の奨学金」にわかれます。公的な奨学金の代表的なものが日本学生支援機構(旧 日本育英会)の奨学金であり、その他、各都道府県や市町村が独自に奨学金制度を設けていることがあります。
民間の奨学金は、さまざまな企業や団体が設けています。最近、私立大学が独自に奨学金を設けるケースが増えていますが、大学独自の奨学金も広い意味で民間の奨学金と考えていいでしょう。
さらに奨学金は「貸与型」と「給付型」にわかれます。貸与型の奨学金は返済が必要な学生ローンといえますが、その返済が始まるのは大学卒業後からです。給付型の奨学金は返済不要、つまり貰える奨学金です。誰もが給付型を望みますが、残念ながら日本の奨学金のほとんどが貸与型の奨学金となっています。
では、日本の奨学金事業規模の90%近くを占める日本学生支援機構奨学金の内容を見てみましょう。
返済時に無利息の第一種奨学金は、大学の種別や通学環境により貸与月額が決められています。一方、返済時に利息が加わる第二種奨学金では自由に月額が決めることができるほか、私立大学の薬学部進学の場合は2万円の増額貸与が受けられます。
意外に誤解されているのが有利子奨学金の利息です。日本学生支援機構では、利息の上限が3%と定められていますが、それよりもかなり低いのが実情で、2016年3月貸与修了者の利率は固定方式(0.16%)、見直し方式(0.10%)でした。
さらに、2016年10月からは利率の下限が0.01%まで引き下げられたことで、同月貸与修了者の利率は固定方式(0.06%)、見直し方式(0.01%)と実に無利息同然となっています。
続いて、卒業後の返済月額について見てみましょう。
◆奨学金の返済月額を考える
大学卒業後から始まる奨学金の返済額と返済年数は借りた総額により決められます。
第二種奨学金の返済利率は1.0%と実際よりもかなり高い利率で試算していますが、これを見ると、10万円を6年間借りた場合の毎月の返済額が3万円を超えてきます。
第一種と第二種の両方の最高額を併せて借りると、7万円近くもの返済額となります。
薬剤師が高収入の職種とはいえ、奨学金の返済負担が決して軽くはないことが容易に想像できるでしょう。
では、仮に返済が滞ったらどうなってしまうのか。
◆奨学金の滞納時のペナルティーを考える
日本学生支援機構は文部科学省所管の独立行政法人ですが、奨学金事業については「金融事業」に位置付けられました。そのため、滞納時のペナルティーを設けるとともに回収強化に取り組んでいます。
<滞納すると5%の延滞金が加わる>
奨学金の返済を滞らせると、滞納月額に対して年率5%の延滞金が加算され、翌月の返済額と合わせた一括返済が求められます。1ヶ月の滞納ならばまだしも、数ヶ月滞納すると一度には返済することが難しい金額に膨れ上がってしまいます。
<3ヵ月滞納するとブラックリストに登録される>
滞納1ヶ月目から電話や郵便で督促されますが、それに対応せずに3ヶ月過ぎると個人信用情報機関に滞納状況が登録されてしまいます。このことを一般的にはブラックリスト登録と呼び、クレジットカードやローンを組む時の障害になる恐れがあります。
日本学生支援機構の奨学金が金融事業に位置付けられたことで、通常のローンと同じ様に滞納するとペナルティーが科されるとお考えください。
ただし、日本学生支援機構では、返済が苦しい人のための救済制度も同時に設けられています。
◆返済困難者のための3種類の救済制度
①返還期限猶予
最長10年間返済を待ってもらえる
②減額返還
月々の返済額を半額にして倍の期間で返済する
③所得連動返還
卒業後の収入に応じて月々の返済額が減額される新しい制度
これらの猶予制度は、年収300万円以下などとの申請条件が設けられているため、現役の薬剤師さんにとっては少々厳しい条件ですが、結婚・育児などで休職される場合には返済負担を軽減する大切なポイントといえます。
また、一般のローンとは異なり、猶予が認められると、その間の利息や延滞金が免除されるという点も奨学金の特長です。
日本学生支援機構の奨学金は、借りる際のハードルは低くとも、滞納すると一般のローンと同じようにペナルティーがあることを忘れないでください。
次回は、最も注意してほしい「保証人制度」について解説したいと思います。