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スポーツファーマシスト活動報告

第17回 禁止表国際基準(S1:蛋白同化薬)~サプリメントにもご注意を~

禁止表のS1の蛋白同化薬は、ドーピング違反として挙げられる有名な物質の一つです。
近年では、ボクシング選手から検出された「ジルパテロール」や、過去に何度もドーピング違反として検出されており、かつ国体で初のドーピング違反の原因となった「アンドロステンジオン」などがあります。

【禁止される理由】
・筋力の強化と筋肉量の増加
・闘争心の向上
・様々な副作用(肝臓がん、脂質異常症、血圧上昇などの心血管障害など)
・男性:女性化乳房、無精子症、インポテンツ
・女性:多毛、男性化

また、「ジルパテロール」や「クレンブテロール」には蛋白同化作用の他に、気管支拡張作用も持ち合わせています。「ジルパテロール」や「クレンブテロール」は家畜を筋肉質にするため、海外では肉質の改善を目的として使用する国もあります。そのため、これらの物質を使用した家畜の肉を口にすると、人の体内からも同様の物質が検出され、ドーピング違反となることもあります。

蛋白同化薬は塗り薬としての使用も禁止です。過去に、ヒゲを増やす目的で男性ホルモンを使用した選手が違反となり出場停止となったことがあります。禁止表国際基準のS9の糖質コルチコイドは一般的にステロイドと呼ばれることがあるため、S1の蛋白同化薬と混同してしまう方もいますが、S9の糖質コルチコイドは塗り薬として使用する際は禁止されません。

海外製のサプリメントにご注意を
蛋白同化薬は海外製のサプリメントにも多く含まれています。
国際オリンピック委員会(IOC)が2000年10月~2001年11月に行った調査では、蛋白同化ホルモンの含有が記載されていない634個のサプリメントや健康食品の内、約94個(14.8%) に禁止物質である蛋白同化ホルモンが含まれていたことが判明しています。
(引用文献:Geyer H, Parr MK, Mareck U, Reinhart U, Schrader Y, Schänzer W. Analysis of non-hormonal nutritional supplements for anabolic-androgenic steroids – results of an international study. International Journal of Sports Medicine, 2004, 25, 124-129.)

日本人選手でも海外製のサプリメントを使用し、違反になった選手は多くいます。
近年、インターネットで手軽に海外からもサプリメントが購入できるようになりました。HPには「筋肉が付きやすい」、「他のサプリメントよりも優れている」、「ドーピングにはならないきちんとした製造がなされている」などのコメントが記載されています。
サプリメントはあくまでも食品であり、医薬品ではありません。禁止物質の明記がなく、混入していたとしても、責任は選手が負うこととなり、メーカー側の責任ではありません。スポンサー契約をしていたメーカーの商品だったとしても、例外は認められません。ギャスパリニュートリションはANAVITE以外にSP250というサプリメントでも違反者を出しています。日本製の競技団体公認のサプリメントにも蛋白同化薬が含まれていることがわかり、HPで注意喚起された事例もあります。

どのような商品に蛋白同化薬が含まれているのか分からないので、アスリートの方はサプリメントを使用する際、薬剤師やスポーツファーマシストの方はサプリメントの相談を受けた際は慎重になりましょう。