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スポーツファーマシスト活動報告

第27回 食事に禁止物質が混入したときは

2020年8月27日、ネット上で「クレンブテロール」という単語が話題となりました。
そのネット記事は、「競泳選手が、ドーピング検査で陽性となり調査の結果、メキシコ合宿時の食事に混入したものと判断され違反にはならなかった」というものでした。

日本水泳連盟の発表によると、高地合宿をしていたメキシコで2020年2月26日に検査を受け、約3カ月後に禁止物質検出の報告を受けた。FINA(国際水泳連盟)は現地滞在中に食べた肉の種類や量などを知らせるよう要請し、食事メニューの詳細を提出した結果、故意の摂取ではないと判断されたそうです。
しかし、ここで考えていただきたいのが、2月の3か月後なので、5月頃違反の通知が来たことになり、身の潔白が晴れたのが8月末です。約3か月は仮で資格停止中ということになります。その間、練習はしてはならないのが決まりです。3か月は競技者にとってとても長い期間です。

このようなことを未然に防ぐために「特定地域で生産された食肉に関する注意喚起」がJADA(日本アンチ・ドーピング機構)から発表されました。
https://www.playtruejapan.org/topics/2020/000477.html

~以下、一部抜粋~
当機構は、WADAの通知に従い競技者が競技会やトレーニングでそれらの国(メキシコ、中国、グアテマラ)に滞在する場合、以下の行動を推奨します。
1)競技会主催団体または国際競技連盟が指定するレストランで食事を摂ること
2)指定のレストラン以外で食事をする場合には、複数名で食事をした上で、食事内容、時期、場所を記録すること

とはいえ、やはり心配です。
多くの方から質問を受けました。そのやりとりをご紹介いたします。

  • 外食ではなく、購入して宿舎で調理する場合はどうなのでしょうか?

    指定のレストラン以外で食事をする場合と同様です。食事内容、購入時期、購入場所を記録することが大切です。写真に残しておくことも大切ですね。

  • 日本にも中国産、メキシコ産の食材が売っていますが、購入しない方がいいですか?

    日本に売られているものは検疫があるので問題ないとは思いますが、心配なら避けてください。

  • 指定のレストラン以外での食事ってどこが安全でしょうか?

    指定のレストランが原則ですが、近くにない場合は、海外のチームも利用しているかどうか事前に調査してみてください。

この回答が100点で100%安全な回答ではありません。リスクを低くするためのものなので、万が一のことも想定する必要があります。
なるべく調査期間を短くできるように、自分が摂取しているもの、どこで何を購入したのか、日頃から記録する癖をつけることが大事ですね。

約1年ぶりの更新となりました。
東京オリンピック・パラリンピックが開催されるはずだった今年、私もドーピング検査員として活動する予定でした。
来年の開催決定がなされましたが、成功に導くために立ち止まらず、勉強し続けて選手たちの役に立ちたいと思っています。スポーツファーマシストの方も、そうでない方も一緒に頑張りましょう。