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インタビュー

大切なペットの薬だから -12薬局-

株式会社12薬局(わんにゃん薬局)

株式会社12薬局(わんにゃん薬局)

2020年4月、日本初の動物専門の薬局として業務スタート。
動物病院内での診察後送られてくるオンライン処方せん(調剤指示)を基に12薬局内の薬剤師が調剤、患者さんのご自宅もしくは動物病院へ薬を直接お送りする医薬分業サービスを提供しています

医薬分業が進んだ現在、ほとんどの方が病院で貰った処方せんは近くの薬局、もしくはかかりつけの薬剤師のところへ持っていくと思います。

ただし、これは「人」の場合。

犬や猫、その他さまざまな種類の動物を診てくれる動物病院の場合はほとんどの病院で獣医師が診察から治療、薬の処方、調剤まで多岐にわたる業務を担当しています。そのため、少数スタッフで運営しているところだと1人1人の負担が大きくなってしまったり、動物たちにとっては慣れない院内での待ち時間が長くなってしまったり、双方にとってマイナスとなっています。

この状況を改善すべく、12薬局が設立されました。

 

ー設立したきっかけ

初めは獣医師からの問い合わせです。


全国の動物病院の7割が獣医師1人とスタッフで対応しています。そのなかで診察から調剤までの全ての医療行為を1人の獣医師で行っており、手が回らない。色々と周りのスタッフが工夫をしてサポートをしてくれているが、スタッフの負担も増えてしまい必然的に残業が多くなってしまっている、というお話でした。


我々の行っていた事業のなかでどういった取り組みができるか相談を重ね、薬剤師法の中で動物病院の調剤業務を担えるのは診察した獣医師もしくは薬剤師と規定されていることから調剤の部分を手助けできないか、ということで日本初の動物薬局がスタートしました。

 

ー12薬局による調剤の流れ

上記の図は12薬局を利用した際の患者様に薬が渡るまでの流れとなります。
利用することで

  • 患者様の診察・処置後、薬処方までの待ち時間が軽減
  • 獣医師の調剤業務軽減

となり、患者様、獣医師双方の負担軽減が叶います。

 

●患者様の待ち時間軽減

動物病院に来る子たちって病院そのものが苦手というだけでなく、病院に入ると他にもさまざまな動物がいるという空間がストレスだったりするのでなるべく早く連れて帰ってあげたいというのが飼い主さんたちの気持ちです。

その中でも待ち時間があるのが現状なので、例えば大型犬を飼われている方は待ち時間は他の待っている子を怖がらせないように、夏の暑い日でも病院の外を散歩させたりしている場合も多くあります。

 

待ち時間を軽減させるだけでなく、こういった負担やストレスが軽減できたというお声もいただいています。

 

●獣医師の調剤業務軽減

はじめにお伝えしたように獣医師が診察から調剤までの全てを担っている状態の動物病院が多くを占めています。しかも動物用の薬の調剤は人の調剤よりも手間がかかることが多く、よって時間もかかってしまいます。


弊社にご依頼いただくことで調剤指示のデータを専用システム「VMOシステム」へ入力いただく作業は発生いたしますが、実際に調剤をおこなうよりも短時間で行っていただけます。
そして12薬局ではお送りいただいた処方せんは弊社の獣医師や動物病院業務経験者などが在籍する業務部がチェック、薬剤師が監査した
うえで調剤を行います。


動物薬というのはまだまだ種類が少なく、処方される薬の7割近くは人体薬を使用しています。ただ人の薬のため動物に使用するとなると、用量を服用するペットの体重に合わせなければなりません。
そこで必要となってくる工程が分割作業です。錠剤を4分割したり、細かいものだと8分の1まで分割したりします。それ以下の分量となる場合は粉砕し、粉薬として調剤します。

 

錠剤のサイズ、形状によって分割するためのハサミが変わります。

 

調剤した薬は一包化し、薬が数種類あったとしても飲ませ忘れを防ぎます。また、分包紙に「ペットの名前・医薬品名・用法・用量」の記載も可能なので、多頭飼いでも誤飲を防ぎます。

一包化、情報が印字された薬のサンプル

 

実際に12薬局で働いている薬剤師さんにもお話を伺いました。

―12薬局に転職したきっかけを教えてください。

私自身猫を飼っており動物が好きというのもあり、12薬局は転職前から知っていて注目していました。元々は普通の調剤薬局で勤務していたのですがその時から定期的に募集があるか確認していて、募集を見つけた瞬間に応募しました(笑)

 

―動物調剤だからこそ戸惑ったことはありませんか?

やはり薬の分割などの練習は必要でした。でも慣れてしまうと見た目ほど難しいものではありません。それよりも今まで触れてこなかった動物薬の知識が必要になってくるので勉強は必須でした。

また人体薬が処方されている場合でも、ペットが服用しやすくするために人に対してはあまりない工夫を行ったりするのでそこは戸惑った部分かもしれません。
また人と違って自由診療になるので同じ症状でも先生によって処方の仕方がさまざまな点も初めは戸惑いました。

 

―どういった方が動物調剤に向いていると思いますか?

やっぱり向上心や探求心がある方が良いと思います。

過去に管理薬剤師として働いていたとしても動物薬特有の調剤方法があったりするので、半年くらいはある程度の勉強が必要となってくるので。


また実際に動物を飼っている、好きでないと頭にも入りにくいかもしれません。自分自身が動物病院に行ったときにどうだったかなど利用
者側の立場を知っているからこその気づきもあると思います。

実際、働いている方もほとんどの方が何かしらのペットを飼われていますね。あとは極端に不器用な方だと少し難しいかもしれません(笑)

ご自宅で飼われているちーちゃん(左)と万次郎(右)

 

今後の展開・目標

2022年に愛玩動物看護士法が施行され、愛玩動物看護師が国家資格として誕生しました。それに伴い、動物看護師が行う診療の補助の内容が具体的に明記され、従来の業務分担を見直す動物病院も出てきています。その中で「調剤」の部分を我々が担い、環境の変化への対応を手助けできればと思います。


ただ日本国内の動物病院数は約12,000件あり、今後院外処方が一般的になった時、現在の12薬局の体制(東京と大阪の2拠点)ではとてもじゃないですがまかなえません。なので今、全国の薬局さんと提携を結んでいる所です。
例えば九州エリアは大賀薬局さんと、中国エリアでは鳥取県の徳吉薬局さんと業務提携を結ばせていただきました。

今後は北海道・東北エリアにも範囲を広げていきたいと思っています。

 

12薬局 HP:https://12pharmacy.co.jp/