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麻薬取締部(マトリ)まるごと解説

昨年の麻薬取締官2名へのインタビューが大反響だった麻薬取締部。改めて組織の概要やキャリアステップ、この仕事の魅力などをたっぷりと伺いました。
マトリの仕事に興味がある方、必見です!

薬物乱用のない、安全な日常と健やかな社会を目指す。

ネットやSNSの普及により、今では誰でも簡単にドラッグを入手することができてしまいます。
好奇心、誘惑、知識不足……きっかけは何であれ、薬物乱用という深い奈落への入り口は、普通の生活を送る人々の何気ない日常に潜んでいます。そして自分だけではなく、家族や関係のない人の人生をも狂わせてしまう可能性があります。
そんな薬物乱用の恐ろしさ、失うものの大きさを誰よりも知るのが麻薬取締官です。
私たちは、情報のアンテナを広く、深く、静かに張り巡らせ、密売人や乱用者を検挙していきます。
「薬物汚染のない健全な社会」を実現させるため、麻薬取締官は日々薬物犯罪に挑み続けています。

組織概要

麻薬取締部には、大きく分けて3つの部署があります。

  1. 捜査課
    特別司法警察員として、昼夜を問わず薬物犯罪にかかる捜査・情報収集活動を行っています。具体的にはインターネットを利用した薬物密売人の検挙、密売人に薬物を供給する大物密売人の検挙、海外から密輸される薬物事犯の摘発、薬物犯罪収益の没収など、積極的に捜査を行っています。また、あらゆる情報媒体からの薬物関連情を整理、収集しています。
    組織内で最も配置される人数が多い部署です。薬学の知識はさまざまな場面で活用されます。
    法律の知識が必要となりますが、研修があるため心配無用です。
  2. 調査総務課
    会計等の庶務のほか、麻薬の許認可、病院、薬局、製薬会社等への正規流通麻薬等の監督・指導を行っています。医療用の麻薬や向精神薬などが適正に使用されるよう監視し、横流しや不正利用を防いでいます。薬学の知識を存分に活かすことができるのもこの部署のメリットです。時には捜査課からの要請に応じて、捜査応援に行くこともあります。
  3. 鑑定課
    押収した薬物、使用器具、被疑者の尿などの鑑定を行う部署です。薬物使用歴を知るための毛髪分析や、薬物使用者の特定等を目的としたDNA型鑑定など、客観的な立証を行う上で重要となる、より高度な鑑定にも取り組んでいます。配属される人は少数ですが、捜査官からはその薬学知識を頼りにされています。

麻薬取締官になるまで

  1. 採用
    30歳未満の薬剤師あるいは薬剤師国家試験合格見込み者、または国家公務員採用一般職試験合格者の中から、面接を経て採用されます。
  2. 採用後の研修
    採用後1年の間に、2~3週間の研修が3回あり、そこで麻薬取締官業務(司法警察業務等)について学んでいきます。集合研修なので、全国の採用同期と顔を合わせ、寝食を共にしながら切磋琢磨して研修に励みます。
※令和3年現在は新型コロナウイルス感染症予防のため一部の研修をオンラインで実施しています。

具体的なキャリアステップについて

*経験が必要になるので飛び級はなく、必ず各ステップを踏んでいきます。

Q&A

麻薬取締官の仕事の魅力は何でしょう?

麻薬取締官の仕事は「薬物乱用のない安全な日常と健やかな社会を目指す」ことですから、つまり「正義」です。正義を全うするために日々奮闘する、という点で現役職員は皆やりがいを感じているはずです。
主たる業務は薬物犯罪捜査で、捜査はチームで動きます。成果はチームとしての成果です。失敗もチームの失敗です。チームの一員としても役割を全うすることはベテランも新人も同じです。もちろん個人の力量が上がらなければチームの能力も上がりませんので、個人の努力も必要です。ちょっと抽象的で分かりにくいかもしれませんが、孤独な仕事ではなく、見えない努力も必要ですがその努力が報われることがある、正義を全うする、魅力的な仕事だと思っています。

 

振り返ってみると、初めて取り調べを任されたときのことはよく覚えています。相手はベテランの薬物乱用者で、私では全く相手にされず、取り調べも進みませんでした。見かねた先輩が取調室にすっと入ってきて、被疑者に「あのな」と話し始めました。すると不思議なことに、被疑者の態度が軟化しすらすらと話し始めたのです。驚きました。自分の無力さを痛感するとともに、これが麻薬取締官なんだなと思いました。職人技なんですよ。取調べは特にそうですけど、相手との駆け引きというか、人間対人間の真剣勝負。捜査の醍醐味というのでしょうか、ベテラン職員が出てくると、なぜだか現場がうまく収まるんです。
捜査の技術をマニュアル化することは難しいです。
「見て・真似て」を繰り返さなければ身につかない職人技ですが、この高みを目指すのも麻薬取締官の面白味の一つです。

 

「こういう人はマトリに向いている」と思う人物像は?

一言でいうと「素直な人」です。
物事を常識的にまっすぐ見ることができて、なんでも吸収できる人ということが第一です。そのうえでやる気、熱意、組織や業務への理解度などが求められます。理想を高く持つことは悪いことではありませんが、理想を追求するだけではなく「今、自分がやらないといけないことはこれだな」と素早く理解できることが大切です。そういった内面を持っている方に来てほしいと思っています。

まだまだ聞きたいQ&A

他機関との人事交流はありますか?

厚生労働省本省、警察、税関、県庁、地方厚生局の他部署、在外公館など他機関との人事交流を行っています。
出向先機関の実務を経験することでより理解が深まったり、出向が明けた際にはその経験や人脈が大きな財産となって組織間の連絡・連携のキーマンになるなど、出向にはさまざまなメリットがあります。

 

警察など、他機関と一緒に捜査することはありますか?

日常的には警察、税関などの他機関と合同捜査する機会があります。
昔と比べると、関係機関間の連携がスムーズになりました。
合同で捜査し力を合わせることでそれぞれの特性を最大に生かせることができ、より大きな成果を生むことができます。

 

身に危険が及ぶことはありますか?

ガサ入れなどは怪我をしないようにチームを組んで行きますし、被疑者と派手な格闘になるようなことも滅多にありません。
ただし、いつどのような抵抗に遭うか分からない危ない世界にいるという危機感は持っておかないといけないため、日々の鍛錬は必要です。

 

配属希望は聞いてもらえますか?

自分の希望を伝える機会は設けられています。

 

転勤はどれくらいのペースでありますか?

一概には言えませんが、幹部クラスになってからのほうが異動スパンは早く、1ポスト2年くらいで異動となることが多いです。

 

体力に自信がないけど大丈夫でしょうか?

逮捕術訓練がありますのでそれについていけるだけの体力は必要ですが、突出した強い体力はなくても特に問題ありません。

 

女性の活躍について教えてください。

全国の麻薬取締官の約2割が女性です。
公務員の育休・産休制度があり、復帰する女性職員がほとんどです。