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その辛さ、治せるんです! 知っておきたい頭痛治療のこと

勝木将人さん(糸魚川総合病院脳神経外科 医長)

新潟高校、東北大学卒業。
日本頭痛学会、日本脳神経外科学会、日本メディカルAI学会などに所属。
日本の経済復興のため、頭痛啓発運動や頭痛診療に役立つAI開発などを行っている。

▼論文(クリックすると別タブで開きます)
日本のある都市における薬物乱用頭痛の有病率に関するアンケートベースの調査—糸魚川研究論文

はじめに。片頭痛は治せる!

たかが頭痛、されど頭痛。QOLを著しく低下させる代表的な疾病の一つです。痛さのあまり仕事や勉強に集中できなかったり、だるさや吐き気を感じて日常生活に支障をきたす方もいらっしゃいます。酷いケースでは、異動、退職、留年など取り返しのつかない状況になってしまうことも。

頭痛が招く間接的な経済損失は日本では年間3,600億円~2兆3,000億円の見込みがあるとされ、WHOの調査では、健康な生活に支障がでる疾病の第2位に頭痛がランクインするほどに、頭痛は深刻な疾病と言えます。

にもかかわらず、頭痛で受診される方はごく僅か。「ちょっと我慢したら大丈夫」「頭痛くらいで休むなんて……」と思ったり、言われたり、あるいはつい言ってしまったことがある方もいらっしゃるかもしれません。頭痛は命にかかわることではないためと軽視されてしまいがちなのです。

ですが、頭痛はきちんと治療すれば治る疾病であり、頭痛専門医や脳神経外科・内科で頭痛の専門的治療を受けることができるのです。月に2回以上頭痛で生活の支障があれば予防薬も適応となります。予防薬があり、頭痛は治療できる疾病だということを、薬剤師の皆様もぜひ知っていただけたら幸いです。


片頭痛とは?

中等度から重度の頭部痛の反復発作を伴う。通常は拍動性で、片側であることが多く、悪心、嘔吐、光、音、匂いへの過敏症を伴う。動くことで増悪するため、休息を取ったり静かに過ごすことで治る。

緊張型頭痛とは?

軽度から中等度の頭部痛の反復性発作を伴う。通常は非拍動性で、両側であることが多く、悪心、嘔吐、光、音、匂いへの過敏症は伴わない。マッサージやお風呂、飲酒、体操などで改善する。


頭痛の治療の3本柱とは?

頭痛には、基本的な治療の3本柱があります。

①痛くなったら痛み止めを飲む(急性期治療薬)

②痛くならないための予防薬(月に2回以上の片頭痛、月に3日以上生活に支障がある場合は予防薬を飲む。または1~3か月に1回のCGRP抗体製剤を注射する。)

③頭痛ダイアリーをつける

 

②や③をしないで、誤って①ばかり行うと、後述する薬物乱用頭痛に発展しかねません。自己判断せずに病院で正しい診断をしてもらい、予防薬で治療をすれば治るという正しい知識を医療従事者、患者、社会全体が持つことが大切です。

②は、頭痛の頻度が多い場合に毎日予防のための降圧薬やてんかんの薬などを内服します。また毎日でなくても、「今日は頭痛が来そうだな」という日に、痛くなる前に五苓散(漢方)の頓服をするといった方法も有効です。予防薬はさまざまあるので、何をどのように服用すると良いのか、頭痛外来でご相談ください

頭痛の強さや生活への支障には個人差があるうえ、仕事や家庭など個人を取り巻く環境も千差万別なので、③頭痛ダイアリーをもとに本人の頭痛の原因やパターンを検討したり生活への支障度を計ることができると、予防薬や痛み止めの選択に役立ちます(図参考)。

頭痛はストレスや寝不足が大きな増悪因子なので、そのような時期だけに集中して予防薬を飲むことも可能です。ダイアリーをつけることで頭痛の傾向が見えてくるので、例えば、締め切りに追われている今月だけ毎日降圧薬を飲む、天気が悪い日だけ五苓散を飲む……といった具合に、その人のライフスタイルに合わせて予防治療を行えるのがベストです。

(図)

「薬物乱用頭痛」に注意。

予防治療をせず鎮痛薬やトリプタンを飲む回数が増えると、頭痛を起こす神経核が興奮しやすくなります。その結果痛みを抑える機能が作動しにくくなり、頭痛が悪化します。そして薬の量が増え、さらに薬が効きにくくなる……という悪循環に陥ること、これが薬物乱用頭痛です。

2021年に新潟県糸魚川市で行った国内初の薬物乱用頭痛の有病率調査では、有効回答を得た5,865人のうち41.1%が過去3か月以内に頭痛を有し、そのう2.3%(136人)が薬物乱用頭痛になっていることが分かりました。43人に1人=クラスに1人いると思うと、けっこう多いと思いませんか?

待望の3つの新薬とは?

注目の新薬「エムガルティ®」「アジョビ®」「アイモビーグ®」は、いずれも注射薬です。抗体が脳内のCGRPそのものやCGRP受容体をブロックすることで片頭痛を起こさなくする、頭痛専用に作られた抗体製剤です。アメリカでは10年ほど前から使われていて、ついに日本でも2021年に発売になりました。

モノクローナル抗体製剤で、1~3か月に1度病院で皮下注射をします。一般的には使用した半数の方の頭痛が半分に軽減、さらに10%の方は頭痛が0になると言われており、副作用もほぼないと言われています。将来的には自己注射も採用され、日本でもセルフコントロールができるようになる見込みです。現時点では頭痛専門医、総合内科専門医、脳神経外科、脳神経内科のみで処方が可能です。

鎮痛剤を大量に処方されている患者さんへアドバイスを。

片頭痛は進行性の疾患と言われており、動脈硬化などと同じで早く対処しないと治らなくなってしまいます。頭痛の頻度がどんどん増え、生活習慣を変えてもなかなか治らず、重大な病気を疑って受診されるときには社会的不利益も被っていてすでに遅いということがよくあります。たとえ命にかかわらずとも、一生頭痛につきまとわれながら過ごすことは辛いことです。

薬剤師の皆様には、大量の痛み止めが処方されていたり、OTC薬をどっさり購入される患者さんがいたらぜひその理由を尋ね、頭痛が原因であれば予防薬や治療薬があることをお伝えいただき、頭痛専門医や脳神経外科、脳神経内科を受診することを一言勧めていただければ嬉しく思います。