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連載:教えて!お金のあれこれ

第23回 薬剤師の奨学金事情

木元 貴祥(きもと たかよし)氏

木元 貴祥(きもと たかよし)氏

パスメド ‒PASS MED‒ 代表 https://passmed.co.jp/

1986年生まれ
滋賀県出身日本イーライリリーのMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の薬理学講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。
現在はSkypeを利用した薬学生向けのオンライン家庭教師や看護師国家試験対策予備校講師業の他、下記サイトの運営を行っている。

●運営サイト

  • 新薬情報オンライン:https://passmed.co.jp/di/
    新薬の作用機序等を分かりやすく解説。月間アクセス数10万PVの人気サイト
  • メディカルタックス:https://passmed.co.jp/setsuzei/
    医療スタッフ向けの節税・資産運用について税理士・薬剤師・FPが解説
  • パスメド薬学部試験対策室:https://passmed.co.jp/pharmacy/
    無料の演習問題2000題以上。薬学生向け、試験対策サイト

●著書

  • 薬剤師国家試験のための薬単・病単・薬問・病問
  • 薬剤師になったら最初に読みたい 大学で教えてくれなかったお金の本
  •  薬の使い分けがわかる! ナースのメモ帳:
    こんなときはどれを選ぶ? 薬剤師さんと一緒に作った薬のハンドブック 
  • 新薬情報オフライン 新薬の特徴がよくわかる!              
    既存薬との比較と服薬指導のポイント
  • 知らないと絶対損する 薬剤師のためのお金の強化書

 

株式会社PASS MED(パスメド)の木元貴祥です!
本格的に暑くなっており、熱中症には要注意の時季ですね! くれぐれもお身体をご自愛くださいませ。
さて、今回は薬剤師と奨学金について解説しています。第11回の記事でも紹介していましたが、薬剤師における奨学金のデータを更新し、返済状況について考察していきます。また、次回は返済時に活用できる返還支援制度なども紹介していきます!
薬学部の学費は非常に高額です。授業料が年間200万円、そしてそれが6年間……。

スムーズにいったとしても、学費だけでも総額1,200万円かかります。


そんな学生生活を支えてくれるのが奨学金。
しかし、借りた分だけ卒業後に重くのしかかってきます……。
貸してくれたことに感謝をしつつ、しっかりと返済をしていかないといけませんね。実は私も学生時代に奨学金を借りていましたが、最近やっと完済することができました!! 

 

薬剤師の奨学金の借入額は平均461万円

薬学部は学費が高額であることから、一般的な大学生の利用率(19.2%)1)よりも高い傾向にあり、6年制薬剤師のうち薬局薬剤師(n=933)では45.8%が奨学金を利用しているとのアンケート調査2)があります。これは4年制薬局薬剤師(n=2,595)の利用率(23.4%)2)よりも高い結果でした(図1)。
また、一般的な大学生の奨学金の借入額は平均310万円3)ですが、奨学金を利用したことのある薬局薬剤師を対象としたアンケート調査(n=1,046)2)では、借入額は平均461万円という結果でした(図1)。4年制と6年制を比較したデータ2)もあり,借入額は6年制のほうが多い傾向にありました。6年制薬剤師では、借入額600万円以上の割合が4割を超えていて、借入額1,000万円以上の割合は2割弱です(図2)。

1) 教育費負担の実態調査結果(2021年12月20日発表)
2) 薬剤師の需給動向把握事業における調査結果概要
3) 奨学金や教育費負担に関するアンケート報告書(2022年9月実施)

 

奨学金の金利と薬剤師の返済状況

JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)が実施している貸与型奨学金では、無利子の第一種奨学金と、有利子の第二種奨学金があります。第一種奨学金は成績や収入基準が厳しいため、多くの方が第二種奨学金を借りていると思います。
第二種奨学金であったとしても金利は非常に低く設定されていて、2024年~2025年の金利はおおよそ1%前後です。ただし。数年前は0.1~0.5%でしたので、昨今の金利上昇によって若干金利は高くなりつつあります。


例えば、460万円の奨学金を借り入れた場合、年間の金利を1%、20年で返済するシミュレーション(元利均等返済)※では、総返済額と返済月額は以下の通りです。

 

総返済額:5,099,676円
返済月額:21,249円
※簡易シミュレーションのため、実際とは異なります。ご了承ください。

 

利息の部分に該当するのは、20年間で約40万円です。年間だと2万円ほどですね。これは住宅ローンやカーローンなどでお金を借りる場合と比較すると、かなり安い金額です。
通常、利息は返済期間が長ければ長いほど負担となるのですが、奨学金の場合は非常に低金利に設定されているため、そこまで返済を急がなくてもよいと思います。奨学金の繰り上げ返済にドバっと使うのではなく、預貯金は転職や結婚などのライフイベントに備え、手元に置いておけたほうがきっと安心につながるでしょう。

 

このように、奨学金も返済の計画を立てるのが大切です。
もちろん、お金に余裕がある場合は、早めに返済するのもOKですよ。


さて、気になる返済状況ですが、薬剤師における奨学金の年間
返済額と返済期間は表の通りです4)
中央値でみると、月2万円(年24万円)を約15年で返済していますね。

 

返済には支援制度を活用

奨学金の返済にあたっては、地方自治体や企業による支援制度が用意されているケースがあります。しかし、認知度が低かったり、制度が整備されていなかったりすることから、奨学金を利用した薬剤師のうち多くが支援を受けずに返済しているという現状です(図3)4)

まとめ

薬剤師の約半数は奨学金を借り入れている。
薬剤師の奨学金の借入額は平均461万円。
月2万円(年24万円)を約15年で返済していることが多い。
返済には各種支援制度が用意されている。

 

4年制時代はそこまで奨学金を借りている人は多くなかった印象ですが、6年制時代では多くの方が奨学金を借りている状況です。
私も仕事柄、学生さんと話す機会が多いですが、最近では1,000万円以上の奨学金を借りている人も珍しくありません。


次回の記事では、代表的な支援制度と最近始まった返還支援制度について、そのメリットなどを紹介していきます。私が奨学金を借りた時にはこのような支援制度はほとんどありませんでした。知っていて利用しないのももちろんありですが、知らなくて利用していないのは避けたいところだと思いますので、知っていただく良い機会にしていただければ嬉しく思います。