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そのスマホで薬局業務をサポート -OKUSURI-AI-

薬剤師にとって欠かせない重要な処方せん鑑査。薬剤師法によって定められた調剤業務の一環で、誤った薬剤の処方や過剰処方、相互作用のある薬剤が併用されることはないかなどをチェックして不適切な処方を未然に防ぐ非常に重要な業務です。
万が一、患者さまに誤った薬剤をお渡ししてしまうと重大な健康被害に繋がってしまう可能性があり、時には業務停止や免許取り消しなどの行政責任が問われる可能性もあるほど。
薬剤師にとって調剤ミスは許されませんが、一人薬剤師として勤務していたり、忙しくバタバタしてしまっていたりすると、ついついヒヤリハット事例が起こってしまうことは少なくありません。
少しでもそういったことを減らし、薬剤師のサポートをするために開発されたのがOKUSURI-AI。
AI搭載の鑑査支援システムです。

 

このアプリを開発したのは東京 青山に本社を置くゲルテック株式会社です。
代表のバトエレデネ ハタンボルド氏(BAT-ERDENE KHATANBOLD)はモンゴル出身。
社員数20名のうち、日本人は1名というITのスタートアップ会社がどのような経緯で日本の薬局向けアプリを開発するに至ったのか、お伺いしました。

 

 

―日本で起業するまでの経緯を教えてください。

幼い頃、父の弟が日本での留学から帰国した際に日本の話をたくさんしてくれました。その時に日本のゲームに触れる機会もあり、とても楽しく感動したのを今でも覚えています。
そこから日本への憧れを持つようになり、私自身も日本に留学しました。


大学では、父がモンゴルで建築関係の会社を経営していたこともあり、建築学を学んでいたのですが、なかでもCADや構造分析などコーディングを用いて計算することに興味がありました。大学院での研究も強度の計算などをしていくうちに、自分は建築ではなくITの道に進みたいと確信しました。

 

卒業後はモンゴルに帰国するか考えましたが、モンゴルはもちろん母国だけれども、日本も自分にとっては第二の母国でした。なので“双方に恩返しをしたい。架け橋になりたい”と考えたときに仕事をするならインフラなどの環境が整っている日本の方が良いと考え、初めは日本の外資系IT企業に就職しました。


ゲルテック社のスタートは就職後、企業に勤めながら学生の時に留学生会で知り合った仲間と趣味半分でIT系のことを色々していたのですが、それがどんどん大きくなり、法人化し、今に至ります。

 

社員はリモート、もしくはゲルテックハブ(千葉県市川市)で作業しています。

 

―OKUSURI-AIの開発きっかけを教えてください。

さまざまな業界や職種の方が集まる会があり、それに参加した際、調剤薬局を経営されている方に知り合いました。とてもよくしていただいて、今まで知らなかった調剤業務を教えていただいたり、実際に見学もさせていただいたりと色々勉強させていただきました。その中で、「これはもっと効率化できるはず」と感じたのがきっかけです。


また個人的な話になりますが、母が糖尿病を患っており、治療のために飲んだ薬が非常に効果を発揮し症状が和らぎました。

この経験もあり、薬の大切さを本当に実感しているので、薬局や薬剤師の方の業務効率化は使命というのは大げさですが、役に立ちたいという思いが強く、開発をスタート。


開発当初は棚卸のためのツールを考えていたのですが、色々話をしているうちに今の鑑査アプリの形になりました。
開発にあたり、パートナーの田無薬品様とディスカッションをしたり、より具体的にするため現場の薬局で検証をしたりすることでより確実な商品づくりすることを心掛けました。
この場を借りて、田無薬品様にも感謝の意を表したいです。


OKUSURI-AIはこれまで人が見てチェックしていた作業を補助してくれるものになります。患者さんに薬を渡すにあたって、間違ったものを渡すことは決して許されません。

 

しかしながら、人のチェックは常に100%正確というのは難しく、ヒューマンエラーが起こってしまう可能性もあります。それを防ぐための鑑査機器というものもありますが、普及率は3割くらいでとどまってしまっているのが現状です。

本当は導入したいけれど高額で手が届かないという薬局が多いようでした。なので、初期費用なく、スマートフォンの中にアプリを入れるだけで利用できる月額低料金のサブスクリプションとしてOKUSURI-AIを開発、リリースいたしました。

 

―どういった方(薬局)に導入していただきたいですか?

1人薬局から中堅規模の薬局さん、また対人業務に注力していきたいと考えている方に導入していただければと思っています。
これは先ほどの開発の経緯にも関係しているのですが、今薬剤師としての役割が対物から対人に移行していっており、患者さんに寄り添った業務を求められています。

しかしながらこれまで通りの業務方法では実現が難しい。

 

患者さんとの時間を増やすためには裏側の業務の時間を効率化できる仕組みが必要だと感じました。裏側の業務の時間が短くなる分、患者さんとのコミュニケーションの時間にしていただき、“かかりつけ薬局”として患者さんとの信頼関係を結ぶためのお役に立てればと思います。

 

―アプリを設計するにあたり、気をつけたことはありますか?

誰でも分かりやすく直感的に操作できるように設計しました。アプリだからこそタッチパネルでタップすれば操作できます。操作するボタンも押しやすい位置に表示するなど工夫しており、機械操作が苦手な方でも迷わず使用できると思います。

 

―今後考えている展開があれば教えてください。

OKUSURI-AIでいうと現場でのニーズに合わせてアプリの機能をどんどん拡張し、本当に必要とされるものを作ることを重要視しています。


薬局業界にもデジタル化の波が押し寄せていますが、まだ手作業や紙などに手を取られ、対人業務に注力できていない薬局も多いと思います。そのような薬局や薬剤師さんがより「対物作業から解放され、対人業務に注力できる」ように、我々は薬局の業務効率化・デジタル化を目指しております。患者受付から調剤・監査・服薬指導など「全ての薬局業務がデジタルでつながる」そのような世界が理想です。

 

一言でいうならば「薬局DX」ですね。

 

そのために、次の目標として、自動薬歴システムや次世代クラウドレセコンなどを検討しております。


少し具体的に伝えると薬局業界の中で、薬歴残業が課題としてあります。なので、薬剤師さんが患者さんに服薬指導する際の音声のデータをレセコンと連携させ、服薬指導からパソコンに戻ったら薬歴が出来上がっている、というような薬歴自動作成システム。また、そのシステムを使用した在宅向けのアシスタントシステムといったところを視野に入れています。

 

 

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