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令和5年度 第1回東京都がん薬物療法協議会 開催 レポート

開催日時:2023年7月9日(日)10:00~12:00
    (ZOOMウェビナーを使用したWeb開催)
受講料:無料
事前登録者数(参加希望者数):900名
視聴者総数:765名
参加者内訳 保険薬局薬剤師:532名
病院薬剤師:203名
その他:30名
東京都在中:409名
東京都以外:356名

「薬薬連携やその推進に関係するすべての人に参加してほしい」そんな想いから2022年に東京都がん診療連携協議会、東京都薬剤師会、東京都病院薬剤師会の3団体が合同となり発足した東京都がん薬物療法協議会。

発足当時から注目を集めている本協議会の今年度第1回目の研修会の様子をかいつまんでレポートします。

 

2022年度成果報告

2022年度 東京都がん薬物療法薬薬連携推進状況について
2022年度3月11日開催報告
(東京都済生会中央病院 薬剤部 係長 間宮伸幸 先生)

当協議会の主目的は、抗がん薬治療における患者安全の方策協議である。
そのための第一歩として、まずは薬局薬剤師と病院薬剤師が膝を突き合わせて薬薬連携のあるべき姿、現状、問題および課題を共有する必要があると考え、今回は「As is / To be」というフレームワークを用いてグループディスカッションを行った。
参加者は保険薬剤師12名、病院薬剤師12名の計24名。各班6名の全4班に分かれ、班ごとに薬薬連携のあるべき姿と現状を比べた際のギャップ(=問題)を抽出、あるべき姿に近づけていくための方策(=課題)を協議した。初めての参加者も多かったが、意見交換が活発で用意していた付箋が足りなくなることもあり盛況だった。
それぞれのディスカッションから導き出されたのは下記のとおり。1施設単位で行うのはハードルが高いため、当協議会のような組織体制の構築や目指すビジョンの形成が大事であると結論付けた。

 

● 薬薬連携のあるべき姿
統一されたトレーシングレポート、がん患者に関する教育体制の整備がされて
いること、病院・薬局間の情報共有ができていること
● 現状
トレーシングレポートの運用・活用が不十分、がん患者に対する教育体制の不備、
情報共有ができていない
● 課題
トレーシングレポートのフォーマットを共通化する、教育を受けるための業務体制
の構築、情報連携を構築することでクリアしていく

 

第2回東京都がん薬物療法協議会
~三団体合同薬薬連携研修会~参加報告会

▶有限会社ウインファーマグループ 銭場 愛彦 先生

当薬局は昨年9月にオープンした、がん研有明病院の門前薬局です。当然がん関連の処方が多いのですが、開局当時は薬薬連携ができていなかったため、何かしらのヒントを得たいという気持ちで参加しました。


トレーシングレポートについてのディスカッションにて、私の班では、薬局側からは何を書いていいかわからない、書くための時間や人員が足りない、病院薬剤師に知識量が追い付いていないため気が引ける、といった意見が出ました。病院側からは、気後れしなくても大丈夫、どんな内容でもまずは情報が欲しい、といった意見が出ました。
最初は不十分なものでも、まずは1枚書くことが大切で、知識が足りない点は勉強することはもちろん、病院薬剤師に助けてもらうことで最終的に患者にとって有益なものになれば良いと感じました。


研修会を終えた後、実際に薬局でトレーシングレポートを作成しがん研有明病院に提出しました。後日フィードバックがあり、記載方法等を指導していただきました。さらに知識不足を補うために、がん研有明主催のABCセミナーをスタッフ全員で受講することにもなり、研修会に参加したことで、門前病院との薬薬連携の構築を一歩前進させることができました。

 

▶虎の門病院 薬剤部 小田 泰弘 先生

三団体合同という、薬剤師ががん治療に関わるためのコミュニティができたことに大きな期待感を持っています。
第2回東京都がん薬物療法協議会は「As is/To be」フレームワークで課題をあぶり出し、理想と現実のギャップを的確に認識し、グループディスカッションに積極的に参加することで病院薬剤師と薬局薬剤師の相互理解を深めることができた、学びの多い機会でした。


個人的に、研修を通じて「薬剤師とは?」ということに立ち返ることもでき、それは、今こそ薬剤師はどうあるべきか? いつまで薬剤師という職種の中だけで、がん治療を行う患者さんにどう立ち向かえば良いのだろう? という今までの抱えていた私の悩みに、このコミュニティがゴールを定めてくれたように感じました。
今後、このコミュニティが提供する研修会に参加することや研修プログラムなどのツールが作られて、活用することができれば、今後がん薬物療法に薬の専門家として戦っていけるのではないか? と思いました。今回、この協議会に参加したことで、そのスタートラインに自分が立てたという手ごたえを感じました。

今後はこの三団体合同の研修会を通じ、私自身や薬剤師の皆さんが今抱えているがん治療への薬剤師としての悩みやもやもやが、堂々巡りではなく次のワンステップへと進んでいくことを期待しています。そしてこの研修会が提供するもので我々の抱えている思いや課題などが改善され、安心・安全な薬物療法に関われるようになり、患者さんから感謝されるような薬物療法の専門家が今後1人でも育てば良いなと思います。

 

2023年度の進め方について

▶がん研究会有明病院 薬剤部 副薬剤部長 清水 久範 先生

東京都の連携を困難とさせる背景はさまざまあるものの、初期2~3年は”見える化”がキーワード。がん薬物療法の通院治療における患者の安全管理を目的に共通指針を策定することを目標とし、成果物として合同でロードマップを描くことをイメージしている。開催は年3回を想定。

いずれも第1部、第2部は講義型、第3部はスモールグループディスカッションを実地開催。テーマを絞ったその場完結型のものを予定。

 

●第2回 10月28日(土)開催予定

薬薬連携推進関係者連絡会の報告事項、トレーシングレポートの普及状況を
含む東京都委託事業の取り組み、3団体にかける想いを公開予定。
トレーシングレポートについては、日本臨床腫瘍薬学会が認めているデイ
パックの特別講座にて症例の書き方を講義いただき、症例の書き方をひも
解いたうえでトレーシングレポートを書きやすい状況に導く。

●第3回 2024年3月9日(土)開催予定

外部協力のもと現在準備中のプラットフォーム、動画コンテンツ等の共通資材
についての報告。第2部では薬薬連携におけるトレーシングレポートの記載
方法などの実証例、有用事例を盛り込むことを検討。第3部では、共通ツール
の在り方や動画の使い方について協議。

 

⃝ 清水先生からのコメント

1人でも多くの方に薬薬連携についての共通認識を持っていただくことを目的に本研修会を開催しておりますので、今回常時700名を超える大変多くの方にご参加いただけたことに感謝いたします。
Webでの聴講ももちろんですが、実地開催のグループディスカッションにもぜひ気兼ねなく積極的にご参加いただければ幸いです。
協議会としては、今後回を重ねていくに際し、3団体合同の組織として独立した情報発信のプラットフォームを設置し、確実なツール配信と使用啓発をできるようにしたいと考えています。

 

特別講演

▶柏市薬剤師会 副会長 大塚 昌孝 先生

(有限会社つくし薬局 代表取締役)

柏市薬剤師会はがん研究センター東病院との薬薬連携のためにがん研修会を年3回行っており、それが14年間続いていることから今回このような機会を頂きました。


この14年の間でWebでの研修会や会議が盛んになったことは大きな変化かもしれません。ですが、”顔が見える関係”というのは薬薬連携のうえでとても大切で、病院薬剤師にとっても薬局薬剤師にとっても、顔が見えることでこそ生まれるコミュニケーションがあると思います。今回グループディスカッションについても各所からお話があったと思いますが、それを今後もこの会でやっていかれることはとても有意義だと思います。


今回は主に在宅医療に関わる薬剤師についてお話をさせていただきました。ぜひ在宅の現場にどんどん出て他の職種からの声を聞き、それらを聞いて「自分がどう動けば患者さんのためになるのか、他の職種の力になることができるのか」多くの職種との連携(地域のチーム医療)という視点を大切にして薬剤師業務に従事していただきたいと願っています。

 

研修会を終えて

▶間宮 伸幸 先生(東京都済生会中央病院 薬剤部 係長)

700名を超える方が参加されたということで、必要と感じている聴衆者が多いということに手ごたえを感じています。本協議会はまだ種を撒いて芽が出たばかりだと
思うので、水や栄養を与え、いずれ「東京モデル」と言われるような大きな実となるよう、しっかり育てていきたいと思います。

 

発起人 山口 正和 先生(がん研究会有明病院 薬剤部 薬剤部長)

当研修会は、嬉しいことに回を重ねるごとに全国からの参加者が増えています。東京都における三団体合同の薬薬連携に関する取り組みが、東京都だけに留まらず「東京モデル」として全国の参考になればと考えています。
そして、将来を担う薬学生の皆さんにも薬薬連携の重要性とこの取り組みを知っていただき、多くのご参加を期待すると共に若い力として薬薬連携の益々の発展と普及にご協力いただきたくお願いする次第です。


東京都がん薬物療法協議会の今後の活動にご注目ください。

 

ーー三団体合同薬薬連携推進研修会に関するお問い合わせ先ーー

Mail:shinpei.yokoya@nipponkayaku.co.jp
TEL:03-6838-8901           
●お申し込みは「がん研有明」で検索