第2回 薬局提案型の例
タイガー薬剤師
10年以上の在宅医療経験を持つ薬局薬剤師であり、Xと「アウトドア薬局」ブログで在宅医療情報を発信している。
2024年3月にKindleにて出版しベストセラーを獲得。
● 認定:緩和薬物療法認定薬剤師、プライマリ・ケア認定薬剤師
こんにちは、タイガー薬剤師です!!
この連載では在宅医療に関する基礎的な内容から少し発展的な取り組みを紹介していきます!!
続けて読んでいただくことで在宅患者を獲得することから、依頼が継続してもらえるようになります。
第1回では「在宅医療はじめの一歩」として在宅介入における4パターンについて紹介し、その中でも薬局提案型がこれから在宅医療を始める薬局にはオススメということ。そしてその理由について解説しました。今回は「薬局提案型の例」として、具体的にどのような患者が在宅医療の対象となるのか、またどのように声をかけ、伝えると在宅介入につながりやすいか紹介していきます。
在宅医療の対象患者
まずは在宅医療の対象となる要件について確認してみましょう。対象患者の条件については以下の通知で示されています。
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について
(保医発0305 第4 号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 厚生労働省 令和6 年3月5日)
区分15 在宅患者訪問薬剤管理指導料
1 在宅患者訪問薬剤管理指導料
(1)在宅患者訪問薬剤管理指導料は、在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、あらかじめ名称、所在地、開設者の氏名及び在宅患者訪問薬剤管理指導(以下「訪問薬剤管理指導」という。)を行う旨を地方厚生(支)局長に届け出た保険薬局の保険薬剤師が、医師の指示に基づき、薬学的管理指導計画を策定し、患家を訪問して、薬歴管理、服薬指導、服薬支援、薬剤服用状況、薬剤保管状況及び残薬の有無の確認等の薬学的管理指導を行い、当該指示を行った医師に対して訪問結果について必要な情報提供を文書で行った場合に、在宅患者訪問薬剤管理指導料1から3まで及び在宅患者オンライン薬剤管理指導料を合わせて月4回(末期の悪性腫瘍の患者、注射による麻薬の投与が必要な患者及び中心静脈栄養法の対象患者にあっては、週2回かつ月8回)に限り算定する。在宅患者訪問薬剤管理指導料は、定期的に訪問して訪問薬剤管理指導を行った場合の評価であり、継続的な訪問薬剤管理指導の必要のない者や通院が可能な者に対して安易に算定してはならない。例えば、少なくとも独歩で家族又は介助者等の助けを借りずに来局ができる者等は、来局が容易であると考えられるため、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できない。
この中で「少なくとも独歩で家族又は介助者当の助けを借りずに来局ができる者等は、来局が容易であると考えられるため、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できない。」と記載されている。
この文章通知から考えられる在宅医療の対象患者は以下のような方が通院困難として対象になると考えられます。
- 通院時に家族や介助者の付き添いが必要な方
- 独立して歩行は出来るが、認知症のため家族の介助が必要な方
- 寝たきり、準寝たきりで通院が困難な方
また、在宅での療養を行っている患者という点についても記載されています。
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について
(保医発0305 第4 号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 厚生労働省 令和6 年3月5日)
区分15 在宅患者訪問薬剤管理指導料
1 在宅患者訪問薬剤管理指導料
(3)「在宅での療養を行っている患者」とは、保険医療機関又は介護老人保健施設で療養を行っている患者以外の患者をいう。ただし、「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合」(平成20 年厚生労働省告示第128 号)、「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」(平成18 年3月31 日保医発第 0331002 号)等に規定する場合を除き、患者が医師若しくは薬剤師の配置が義務付けられている病院、診療所、施設等に入院若しくは入所している場合又は現に他の保険医療機関若しくは保険薬局の保険薬剤師が訪問薬剤管理指導を行っている場合には、在宅患者訪問薬剤管理指導料は算定できない。
医療機関や介護老人保健施設など医師や薬剤師の配置が義務付けられている施設は原則として対象外となります。一方で自宅以外でもそれに準ずる施設では対象となります。
在宅医療の対象となる施設や住宅、介護事業所は以下の通りです。
- 自宅(集合住宅を含む)
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム(がん終末期患者のみ)
- 軽費老人ホーム(B型、ケアハウス)
- 認知症対応型共同生活介護事業所 (認知症グループホーム)
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 特定施設
- 身体障害者施設等
- 小規模多機能型居宅介護事業所、看護小規模多機能型居宅介護事業所(泊まりサービス利用時)
以上の在宅医療の対象となる前提条件について理解しておき、うっかり対象外の方に声をかけたりしないように気を付けましょう。特に「通院困難」については要注意です。
どのような患者に声をかけたらよい?
対象となる患者の要件を確認したところで、具体的にどのような患者に声をかけたらよいのかを考えてみましょう。ざっくり書き出すと以下のような方が考えられます。
- 代理の方が薬を取りに来ている方
- 誰かに付き添ってもらっている方
- 服薬状況に不安がある方
- 配達している方
①②について
これらのケースが最も声をかけやすいのではないかと考えます。
その理由としては代理で来る、もしくは付き添っているということは前述した「通院困難」に該当する可能性が高いこと、そして代理の方や付き添っている方の負担を減らすことが出来るためです。薬局が訪問指導を実施すれば、代理来局や付き添いが不要となります。
特に、これまでは本人が1人で来ていたのに代理の方が来た、付き添いがあった場合は声をかけやすいのではないでしょうか。
声のかけ方の具体例としては
「代わりに取りに来られるの(一緒に付き添うの)大変ですよね。薬局から薬剤師が自宅に訪問して指導する制度もあるので、それを使えばご負担は減るかもしれません。」
などと負担を労う言葉から入ると受け入れてもらいやすくなります。
費用のことを気にされるかもしれませんが、代理や付き添う方の時間もタダではありません。自宅で療養中の患者で1割負担であれば518円もしくは650円でサービスを受けられます。そのような説明も出来るとより一層受け入れられやすくもなります。
③について
このケースで注意すべき点としては「通院困難」に該当しない可能性がある点です。通院可能である場合には、外来服薬支援料1の対象になります。
服薬状況に不安があるというのは、毎回飲み忘れによる残薬がある、予定日を過ぎて受診しているような患者となります。薬剤師が介入することによって、自宅で一緒に管理方法を考えることが出来ることをお伝えしましょう。
かかりつけ薬剤師など信頼関係が構築されていれば、受け入れやすいでしょう。
④について
配達については是非があるかと思いますが、ここではその議論は割愛します。実際には配達を希望される患者に対して、有料もしくは無料で配達を行っているケースは多いと思います。このような患者、特に無料での配達の場合は難しくなります。
訪問指導料を算定することで費用負担は増加してしまいます。可能であれば配達を始めて希望するタイミングで在宅訪問についての制度の紹介をすることが望ましいです。ただし、これまで配達していた患者に対してはこれまでは配達だけであったが、在宅医療では実際に自宅に入って管理についても指導、お手伝いして、これまでよりも手厚いケアを行うことが出来ることを強くアピールすることで受け入れられることもあります。
これまでより何が良くなるのか具体的に伝えるようにしましょう。
ま と め
今回の記事では在宅医療の対象者と具体的な声掛けについて紹介しました。
次回は声掛けで同意を得られたら、何をしていけば良いのかを介護保険や医療保険の制度と共に紹介していきます。