第3回 薬局提案型の例
タイガー薬剤師
10年以上の在宅医療経験を持つ薬局薬剤師であり、Xと「アウトドア薬局」ブログで在宅医療情報を発信している。
2024年3月にKindleにて出版しベストセラーを獲得。
● 認定:緩和薬物療法認定薬剤師、プライマリ・ケア認定薬剤師
こんにちは、タイガー薬剤師です!!
この連載では在宅医療に関する基本的な知識から、実際の現場で役立つ具体的なアプローチ方法を順を追って紹介していきます。この記事を通して、在宅医療に必要な知識をしっかりと身につけ、地域の患者さんに信頼される薬剤師としてのスキルを磨いていただければと思います。
今回は、前回ご紹介した薬局提案型のアプローチ方法を受け、患者さんが在宅医療に同意した後、次に進むべき手順を介護保険や医療保険の制度と共に詳しく紹介していきます。
手順
1. 要介護認定の有無を確認
2. ケアマネジャーに連絡(要介護認定ありの場合)
3. 医師からの訪問指示
1. 要介護認定の有無を確認
まず初めに要介護認定を受けているかどうかを確認します。これは在宅医療において利用する保険の種類を判断するために重要なステップです。
一般的に、要介護認定を受けている患者は介護保険、受けていない場合は医療保険を使用することになります(下図参照)。
また、公費負担などの理由で医療保険の利用を希望される場合もありますが、原則として要介護認定がある場合は介護保険が適用されるため、必ずしも希望通りにはならないこともあります。(訪問看護の場合は疾患等によって要介護認定されていても医療保険を利用するケースがありますが、薬局ではそのようなことはありません。)
確認方法
要介護認定の有無は「介護保険被保険者証」で確認することができます。認定を受けている場合には「要介護状態区分」に要介護度が記載されているので、こちらを見て判断します。さらに、ケアマネジャーがどこの事業所に所属しているかが不明な場合もあるため、利用者の保険者証に記載されている「居宅介護事業者または介護予防支援事業者及びその事業所の名称」の項目を確認し、担当のケアマネジャーを把握しましょう。
負担割合の確認
加えて、介護保険利用における自己負担割合も確認が必要です。介護保険サービスを利用した場合、自己負担は1~3割と定められており、この負担割合は「合計所得金額」と「65歳以上の方の世帯人数」によって決定されます。多くの方は1割負担ですが、所得によっては2割や3割の方もいらっしゃいます。この負担割合証は毎年7月下旬に更新され、各市町村から郵送で交付されます。要介護認定の有効期間と異なるため、負担割合証については毎年必ず確認しましょう。
2. ケアマネジャーへの連絡 (要介護認定がある場合)
患者が要介護認定を受けている場合には、担当ケアマネジャーへの連絡が必要です。
ケアマネジャーに連絡する際には、以下の情報をしっかりと伝えましょう。
●居宅療養管理指導を実施すること
●計画書および報告書を送付すること
また、ケアマネジャーから薬局の介護保険事業所番号を聞かれることもあるので、事前に確認しておくとスムーズです。
稀に「限度額がいっぱいで、新たなサービスを追加できない」と言われることもありますが、居宅療養管理指導費は介護保険の限度基準額に含まれないため、限度額に達している場合でも適用可能です。この点をしっかり説明できるようにしておくと良いでしょう。
※介護保険限度基準額: 要支援・要介護に応じて介護保険から給付される月額のサービス利用限度を定めたもの。この限度を超えると自己負担が全額となるため、ケアマネジャーはさまざまなサービスを調整し、限度内に収める必要がある。
3. 医師からの訪問指示
在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定するためには医師からの訪問指示が必要です。要件いずれにも「医師の指示」、「求め」という文言が含まれています。一例として在宅患者訪問薬剤管理指導料の要件を下に記載します。
●訪問指示の注意点
指示の方法については原則として文書による指示とされています。指示期間(最長6ヶ月)の記載が必須になっておりますが、処方箋での記載であれば指示期間は省略可能であり、その際は処方日数もしくは1か月の期間です。指示の文言については細かい規定はなく、「訪問指示」というニュアンスがくみ取れるものであればOKです。
訪問指示書として発行してもらう場合でも問題ありませんが、通常6ヶ月を上限に発行され、定期的な更新が必要です。訪問が長期にわたる場合は、医療機関と薬局でやり取りしやすい形式を取ると良いでしょう。
ま と め
今回の記事では、新たに在宅医療を開始する際の基本的な手順と、それに関わる制度について解説しました。在宅医療では、医師だけでなく、ケアマネジャーや訪問看護師などの多職種と密に連携し、患者さんが安心して療養生活を送れるよう支援することが大切です。薬局が関わる制度については、しっかりと理解を深め、スムーズなサービス提供を目指しましょう。
次回は、患者さんへの訪問指導の実施手順や、契約に関するポイントについて詳しく解説していきます。