第4回 訪問指導の実施手順・契


タイガー薬剤師
10年以上の在宅医療経験を持つ薬局薬剤師であり、Xと「アウトドア薬局」ブログで在宅医療情報を発信している。
2024年3月にKindleにて出版しベストセラーを獲得。
● 認定:緩和薬物療法認定薬剤師、プライマリ・ケア認定薬剤師
こんにちは、タイガー薬剤師です!!
この連載では在宅医療に関する基本的な知識から、実際の現場で役立つ具体的なアプローチ方法を順を追って紹介していきます。この記事を通して、在宅医療に必要な知識をしっかりと身につけ、地域の患者さんに信頼される薬剤師としてのスキルを磨いていただければと思います。
今回は、前回ご紹介した新たに在宅医療を開始する際の基本的な手順を受け、患者さんへの訪問指導の実施手順や、契約に関するポイントについて詳しく解説していきます。
訪問指導の手順
訪問指導を円滑に進めるためには、以下の手順を参考としてください。
1. 事前準備
● 診療情報提供書やケアプランを確認し、訪問の目的や必要なサービスを明確にする。
● 必要な書類(契約書、重要事項説明書、個人情報使用同意書)を準備する。
2. ケアマネジャーに連絡(要介護認定ありの場合)
●患者および家族に契約内容を説明し、同意を得る
●疑問点には丁寧に回答し、理解を得た上で署名・押印をしてもらう。
3. サービス提供の実施
● 計画通りに訪問し、薬剤管理や服薬指導などのサービスを提供する。
● 訪問記録を残し、次回訪問に活かせるよう情報を整理する。
● 多職種へ必要な情報を共有する。
4. 継続的なフォロー
● 患者の状態に応じてサービス内容を見直し、必要に応じてケアプランの変更をケアマネジャーと連携して行う。
契約に関する重要なポイント
契約書と重要事項説明書の役割
契約書と重要事項説明書は、患者と薬局間のサービス提供における合意内容を明確にする重要な書類です。これらの書類は、患者側に安心感を与えると同時に、薬局が提供するサービスの適正さを保証する役割を果たします。
適切な書面による説明と理解を通じて、トラブルの未然防止や円滑なサービス提供が可能になります。書類に記載されている内容については一度一通り目を通して理解しておくようにしましょう。
契約時に必要な書類
●契約書
●重要事項説明書
●個人情報使用同意書(必要に応じて省略可)
それぞれの書類のひな形についてはアウトドア薬局ブログ記事を参照してください。
では、各書類の主要な一部の項目について解説していきます。
契約書の主要項目と説明のポイント
契約書は、サービス提供の基本的な合意事項を文書化したものでり、サービス内容、契約期間、費用、解除条件などが具体的に記載されています。
●第1条(目的):契約の目的は、利用者ができる限り自立した生活を送るための支援です。
(目的)
第 1 条 乙は、介護保険法等の関係法令及びこの契約書に従い、 甲がその有する能力に応じて可能な限り自立した日常生活を営むことができるよう、 甲の心身の状況、 置かれている環境等を踏まえて療養上の管理及び指導を行うことにより甲の療養生活の質の向上を図ります。
2 乙は、居宅療養管理指導サービスの提供にあたっては、甲の要介護状態区分及び甲の被保険者証に記載された認定審査会意見に従います。
●第2条(契約期間):契約期間は、その都度記載しましょう。迷った場合は、要介護認定の有効期間に合わせるようにしましょう。
(契約期間)
第 2 条 この契約書の契約期間は、令和●年●月●●日から令和○年○月○○日までとし ます。但し、上記の契約期間の満了日前に、甲が要介護状態区分の変更の認定を受け、要介護 ( 支援) 認定有効期間の満了日が更新された場合には、変更後の要介護 ( 支援) 認定有効期間の満了日までとします。
2 前項の契約期間の満了日の7日前までに甲から更新拒絶の意思表示がない場合は、この契約は同一の内容で自動更新されるものとし、その後もこれに準じて更新されるものとします。
3 本契約が自動更新された場合、更新後の契約期間は、更新前の契約期間の満了日の翌日から 更新後の要介護 ( 支援) 認定有効期間の満了日までとします。
●第5条(主治医との連携):主治医の指示のもとでサービスが実施され、連携していくことを伝えましょう。
(主治医との関係)
第 5 条 乙は、甲の主治医の指示(処方せんによる指示)に基づき居宅療養管理指導サービスの提供を開始します。
2 丙は、居宅療養管理指導サービスの提供に関して、 甲の主治医と密接な連携を取ります。
●第10条(費用):サービスにかかる費用の詳細については重要事項説明書で詳しく説明します。
●第12条(秘密保持):個人情報の管理について厳格に行うことを明記しています。個人情報使用同意書でも確認します。
(秘密保持)
第 12 条 乙は、正当な理由がない限り、その業務上知り得た甲及びその後見人又は家族の秘密を漏らしません。
2 乙及びその従業員は、サービス担当者会議等において、甲及びその後見人又は家族に関する個人情報を用いる必要がある場合には、甲及びその後見人又は家族に使用目的等を説明し同意を得なければ、使用することができません。
●第13条-第15(解除および契約終了):契約解除の条件や手続きについて説明し、患者に安心感を与えるようにします。
重要事項説明書の説明ポイント
重要事項説明書は、契約書では記載しきれない詳細な情報や補足的な内容を利用者に説明するために用いられます。この書類により、サービスの提供体制、緊急時対応、苦情処理方法などの情報を患者やその家族に分かりやすく伝えます。
●事業者概要:薬局の基本情報(所在地、指定番号)を正確に伝えます。
●提供するサービス:居宅療養管理指導が中心であることを明確にします。
●職員の体制と担当者:メイン担当の薬剤師や緊急時の連絡体制について説明します。
●緊急時の対応:営業時間外の対応についても詳しく伝え、安心して利用できるようにします。
7. 緊急時の対応等
①緊急時等の体制として、携帯電話等により24 時間常時連絡が可能な体制を取っています。
②必要に応じ利用者の主治医または医療機関に連絡を行う等、 対応を図ります。
●利用料:サービスの費用、加算点数などを具体的に説明します。
8. 利用料
サービスの利用料は、以下の通りです。
介護保険制度の規定により、以下の通り定められています。
①居宅療養管理指導サービス提供費として
居宅療養管理指導費
算定する日の間隔は6日以上、かつ、月4 回を限度。
ただし、ガン末期の患者、中心静脈栄養を受けている患者、注射による麻薬の投与を受けている患者の場合は、1 週に2 回、かつ、月に8 回を限度。
●苦情対応窓口:苦情があれば迅速に対応する窓口を案内します。できれば担当者とは別の人にしましょう。
個人情報使用同意書の注意点
在宅医療では、多職種間での情報共有が不可欠です。その点について理解してもらいましょう。個人情報の利用同意については、重要事項説明書に同意欄を設けることも可能であり、記載漏れがないように注意しましょう。
説明時のポイント
●自分自身がまず書類に書かれている内容を完全に理解する。
●契約書の内容を利用者が理解しやすいようにわかりやすく説明する。
●利用者や家族からの質問には丁寧に回答し、納得を得る。
● 契約書や重要事項説明書への署名・押印前に、内容をしっかり理解しているか確認する。
ま と め
今回の記事では患者さんへの訪問指導の実施手順や、契約に関するポイントについて紹介しました。契約書や重要事項説明書の適切な説明と理解は、患者との信頼関係構築の基盤です。各書類の内容をよく理解し、疑問点にしっかり答えることで、患者が安心して在宅医療サービスを利用できる環境を整えることが重要です。
次回は、実際に訪問開始する際の訪問指導料の算定について詳しく解説していきます。