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タイガー薬剤師の 在宅医療徹底解説

第6回 算定すべき訪問指導料

タイガー薬剤師

タイガー薬剤師

タイガープライム株式会社 代表取締役
石川県でタイガー薬局を経営。著書「在宅医療のいろは」2025年4月発売。
●認定:緩和薬物療法認定薬剤師

●運営サイト

  • ブログ:アウトドア薬局 https://pharmacyoutdoor.com
  • Kindle書籍:「薬局薬剤師のための在宅医療基礎講座 :アウトドア薬局のまとめ資料総集編」

 

こんにちは、タイガー薬剤師です!!
この連載では、在宅医療に携わる薬剤師に必要な知識や実践スキルを、順を追って解説しています。


前回は、訪問開始後に欠かせない「訪問指導料の算定」について基本をお伝えしました。
今回はさらに一歩踏み込み、「訪問指導料の算定」をケースごとに取り上げ、判断のコツやよくあるトラブルへの対応法を具体的に解説していきます。
まずは、定期的な訪問指導料について代表的な3つのパターンを紹介します。

 

定期訪問指導料           

(居宅療養管理指導費・在宅患者訪問薬剤管理指導料)

定期的な訪問指導料とは、居宅療養管理指導費と在宅患者訪問薬剤管理指導料を指します。本記事では、両者を区別せず「定期訪問指導料」として解説します。

算定の考え方

算定回数の上限

●原則:月4回まで(算定日の間隔は6日以上あけること)
●例外: 末期の悪性腫瘍患者および中心静脈栄養法(TPN)を
実施している患者は、週2回・月8回まで算定可能

 

ケース 1  28日分処方で週に1度訪問する場合

28日分の処方せんが交付されている患者で、週1回の訪問による薬剤管理が必要なケースです。

定期訪問指導料は、処方せんの有無にかかわらず算定が可能であり、6日以上の間隔をあけていれば週1回算定できます。そのため、図1-Aのように処方せんが28日分であっても、毎週訪問して服薬カレンダーや服薬支援ロボへのセット、服薬指導を行うことで算定が可能です。
※ ただし、末期の悪性腫瘍患者および中心静脈栄養法(TPN)実施中の患者は例外で、週2回・月8回まで算定可能です。

注意点

・ カレンダーの曜日によっては月に5回訪問日が発生する場合があります。
この場合、5回目は算定できず、算定可能なのは月4回までです。(図1-B)

 

ケース2  複数の医療機関を受診している場合

複数の医療機関を受診している患者さんも少なくありません。この場合でも、訪問指示はすべての医療機関からもらう必要はなく、「在宅療養を担う主な医療機関」1か所からの指示があれば算定可能です。

 

算定の考え方

● 定期訪問指導料は、指示を出している「在宅療養を担う主な医療機関」の処方に基づいて算定します。
例: Aクリニックが訪問指示を出しており、B病院は定期通院先。

 

図2-Aのケース:
● 3日: Aクリニック処方に基づき訪問指導→ 定期訪問指導料を算定できる
● 22日: B病院処方に基づき訪問指導→ B病院の処方では指導料を算定しない。この場合も、算定はAクリニックで行う。

注意点

・ 訪問指導料は1つの医療機関でのみ算定可能。複数の医療機関で重複して算定することはできません。
・ ただし、Aクリニックによる訪問(例:3日)から、B病院処方による訪問(例:8日)まで6日以上あいていない場合(図2-B)は算定不可となります。

例外(補足)

・ B病院を「定期受診」としたケース。
・ もしB病院処方に基づいて臨時的・緊急的に訪問した場合は、別途「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料」を算定できることがあります。

 

ケース3 高齢者夫婦への訪問指導

在宅医療では、高齢者夫婦など同じ一戸建て住宅に複数の患者が同居しており、両方に訪問指導を行うケースがあります。ここで重要となるのが「人数区分の特例」です。


高齢者夫婦の場合、算定区分はどこに当てはまるでしょうか?
一見すると、患者が2人なので「単一の建物に居住する2~9人」の区分に思えます。私自身も以前はそのように算定していたことがありました。

 

実際の算定ルール

区分15 在宅患者訪問薬剤管理指導料
1 在宅患者訪問薬剤管理指導料
(12) 1つの患家に当該指導料の対象となる同居する同一世帯の患者が2人以上いる場合は、 患者ごとに「単一建物診療患者が1人の場合」を算定する。また、当該建築物において、 当該保険薬局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の数が、当該建築物の戸数の10%以下の場合又は当該建築物の戸数が 20 戸未満であって、当該保険薬局が在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定する者の数が2人以下の場合には、それぞれ「単一建物診療 患者が1人の場合」を算定する。
診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和6年3月5日 保医発0305第4号

 

診療報酬の通知には次のように記載されています。「1つの患家に当該指導料の対象となる同居する同一世帯の患者が2人以上いる場合は、患者ごとに『単一建物居住者が1人の場合』として算定する。」つまり、同一世帯・同一住居に複数人がいる場合でも、全員を「単一建物居住者1人」として算定します。


高齢者夫婦で2人分訪問しても、それぞれ「1人区分」で算定するのが正しい取り扱いです。

 

ま と め

今回は「定期訪問指導料の算定」を3つのケースで整理しました。ポイントは次のとおりです。

 

ケース1:28日分処方で週1回訪問6日以上の間隔を空ければ算定可。原則月4回まで(※末期悪性腫瘍・TPNは週2回、月8回まで)。
ケース2:複数医療機関を受診算定は在宅療養を担う主たる医療機関1か所のみ。  前回算定日から6日未満は算定不可に注意。
ケース3:同一世帯の高齢者夫婦人数区分は各人とも「単一建物居住者1人」として算定。

 

次回は在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料をケース別に解説します。お楽しみに!
※点数は2024年度診療報酬改定時点。運用前に最新情報をご確認ください。