まずは、愛育病院の設立や理念についてお聞きかせ頂きましょう。
愛育病院は、現天皇陛下のお誕生を祝して、昭和天皇よりの御下賜金をもとに、悲惨な当時の母子保健の改善と向上のために、昭和9年に創立された恩賜財団母子愛育会が出発点となり、昭和13年に設立されました。
愛育病院は、母と子の幸せと健やかな子供の成育のため、質の高い医療を提供し、安全で快適な妊娠・出産・育児を支援しています。また、母と子への安全で快適な医療・看護を提供し続けています。
とても特徴的な病院でいらっしゃいますね。
愛育病院は、常に質の高い医療水準を保ち、かつ社会のニーズに応える病院であるための努力を常に行っています。伝統的に行っている丁寧な育児指導と、妊婦さんの主体性を大切にする分娩指導には、社会からも高い評価を頂いています。またハイリスク妊娠・分娩の増加や未熟児医療など、社会のニーズに応じた総合周産期母子医療センターとして、LDR室やNICUを整備して、麻酔分娩の実施、小児科の運営、地域医療施設との連携を目的とした、オープン・セミオープンシステムや助産師外来の導入など、母子医療の安全性と快適性の確保に努めています。
では、愛育病院の将来の展望についてお願い致します。
愛育病院は、平成27年2月に新病院をオープンするべく、JR田町駅の東口近くに10階建ての新病院を建築中で、その新病院では、病床数を現在の118床から160床に増床する予定です。また従来の診療に加え、小児救急センター(PCIU)を新設し、長い伝統により培われた「愛育のこころ」を大切にしながら、社会のニーズに応える母子医療をさらに推進することを目指しています。一方今の愛育病院は「愛育クリニック」として、産婦人科、母子保健科、小児精神保健科、育児不安への相談、産後ケアなどの外来機能を継続し、さらに充実させていく方針です。
それでは愛育病院の薬剤師採用についてお聞かせください。
新病院のオープンに伴い、薬剤科業務の充実強化が望まれていることから、若干名の採用を検討しています。新病院での薬剤科業務の検討及び人員配置計画がまとまり次第、当院のウェブサイトにより募集を行いたいと考えていますので、ご興味のある薬剤師さんは是非チェックしてみてください。愛育病院は、産婦人科、小児科、母子保健科、児童精神科、皮膚科を標榜し、総合母子周産期医療センターとしての診療機能を有していますが、来年オープンの新病院では、新たに小児救急医療施設としての機能も併設することになっており、薬剤師としての業務も専門性を求められることになります。当院の方針に共感できる薬剤師さんにとっては、とてもやりがいのある環境だと思いますね。
愛育病院の薬剤科での仕事内容や職場環境についてはいかがでしょう。
薬剤科では、調剤業務・製剤業務・医薬品情報管理業務・無菌調製業務など、病棟業務としては担当制をしいて、新生児科におけるサプリメントの調製・注射薬の個人セットの配置・救急カートを含む病棟常備医薬品の管理・カンファレンスと回診の同行を通じて患者情報を共有し、持参薬調査・服薬指導・副作用の発現・重篤化の回避等、入院患者の薬物療法の支援を行っています。また医療チームの一員として、院内感染対策・医療安全対策活動にも従事しています。現在、常勤薬剤師4名にパート薬剤師1名が勤務しており、男性2名、女性3名、年齢構成も薬剤科長を除くと20代から40代までと、とてもバランスが取れていると感じますね。
そんな愛育病院が考える理想の薬剤師象や求める人材とは、どんな方でしょうか。
まず病院薬剤師としての基本的な知識や技術を習得していることが第一です。その上で、周産期医療領域と小児医療領域に特化した専門薬剤師としてのスキルが求められます。またチーム医療の一翼を担う立場から、協調性に優れ、社会人として節度のある見識や行動が備わっていることは言うまでもありません。専門薬剤師としての評価を得るための一つの手段として、妊婦・授乳婦専門薬剤師制度や、小児薬物療法認定薬剤師制度など、スキルアップのための資格取得という目標設定を立てることも重要ですね。
薬剤師を取り巻く状況が今後ますます多様化していくことが予想されていますが、日本の薬剤師の将来についてはどのようにお考えですか。
薬学部6年制の卒業生が誕生してから2年が経過しました。これからは基礎薬学と臨床薬学の新たなカリキュラムを修めた成果が、目に見える形で発揮されなければなりません。また病棟薬剤業務実施加算の取得施設も、年々増加の一途をたどっています。病棟に薬剤師が常駐することによって、薬剤師が薬物療法に責任を持ち、医療の安心確保に貢献する存在として信頼される存在となり得ているかどうか、まさに日々の活動が評価されているところです。調剤に従事する薬剤師は病院と調剤薬局に分かれますが、在宅医療推進の流れの中で、今後ますます連携強化を模索していかなければなりません。院内においては、医療チームの一員として個々の薬剤師としての存在感が評価の対象となるので、日々の精進はかかせませんね。「くすりあるところ薬剤師あり」とは、すべての薬物療法に関わり責任を持つこと、そのために何をすべきか、患者や医療従事者から薬剤師として何を求められているかを常に考えていく必要があるでしょう。
薬学生や薬剤師の皆さんには、そんな薬剤師の根本をよく理解された上で、是非ご自分の将来像にあった就職先を見つけていただきたいと思います。そのためにも、改めて自己分析を行い、自分の将来像とその勤務先で自分が働いている姿を重ね合わせて、それがピッタリと合致するような職場を是非見つけて欲しいですね。
最後に、優秀な薬剤師とはどのような薬剤師なのか、今後の薬剤師に期待することは何か、薬学生や薬剤師の皆さんにメッセージをお願いします。
薬学生の実習評価項目にもありますが、知識と技能と態度をいかに高めているか、医療人として社会人として、誰からも信頼されている人材が優秀な薬剤師であると思います。薬剤師は「創薬」と「育薬」の担い手にならなければなりません。より良い医薬品を世に送り出し、適正な使用によって疾病に苦しむ多くの患者のために、医薬品を通して支援する。医療事故の防止対策には十分に検討しなければならないでしょう。これからの薬剤師には、まずはジェネラリストを目指し、その後スペシャリストを目指していただきたいですね。例えば様々な種類のある認定薬剤師や専門薬剤師を目指し、日々勉強していくことも大変意義のあることだと思います。そのためにも、3年後・5年後・10年後の自分を想像して、日々一生懸命生きることですね。薬剤師は人の命に関わる職業であり、そのための国家資格を付託されていることをまずは認識するべきです。様々な薬剤師業務に従事する前提は、患者の利益に叶うものであることを心がけることがなにより大切です。