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深井良祐氏 連載 薬科知識解説 第2回 薬の効き目を予測する〜定常状態のある薬〜

薬には「定常状態のある薬」と「定常状態のない薬」の2種類があります。
これは、半減期から推測できます。最高血中濃度から半減期が経過すると、薬の濃度は50%になります。
もう半減期(合計2半減期)経過すると25%、さらに半減期経てば12.5%(合計3半減期)、
ここからもう半減期過ぎると6.25%まで血中濃度が下がります(合計4半減期)。
血中濃度が6.25%にまでなると、「薬の効果はほとんどない」といって問題ありません。
つまり、薬は4半減期の時間をかけてその効果を失っていきます。
もし、「4半減期が経過した前に投与するタイプの薬」であった場合、この薬は定常状態のある医薬品です。
なぜなら、薬が体内に残っている状態にプラスして薬を服用するからです。
言い換えれば、定常状態のある薬は「半減期×4>投与間隔」となります。

薬が効いてくるとき

4半減期経過すると薬は体内から消失しますが、これは薬を服用するときにも同じ考え方をします。
要は、4半減期かけて薬が体内から消失していったのと同じように、「薬は4半減期かけて定常状態に達する」ということです。
定常状態を有する薬の場合、薬による明確な効果を得るためには「定常状態にまで達する必要がある」と考えられています。
薬を1回投与するだけでは薬物濃度は有効域に届きにくく、薬の効果を十分に得られないからです。
そのためには薬を連続投与しなければなりません。要は、定常状態のある薬は「少しずつ効いてくる医薬品」であることが分かります。

アムロジンは定常状態がある

アムロジン(一般名:アムロジピン)の半減期は約36時間です。1日1回投与の薬なので、投与間隔は24時間です。
ということは、「半減期(36時間)×4 >薬の投与間隔(24時間)」になるので、この薬は定常状態のある薬であることが分かります。
体内に薬が残っているときに薬を追加服用するため、服用のたびに薬物濃度は上昇します。
したがって、薬の効果が最も表れるためにはある程度の時間が必要になります。繰り返しますが、定常状態に到達するためには「半減期×4」の時間の経過が必要です。
つまり、この薬は理論的には「36時間×4=144時間(6日)」かけて定常状態に達する薬です。
この薬を開発したメーカーの資料にも、「投与6〜8日後に定常状態に達した」と書かれています。
これくらいの時間をかけて薬の効果が徐々に増大し、やがて最高値に達するようになります。
ここから分かるのは、アムロジンは「徐々に効く薬」だということです。
このような、「徐々に効く薬」であるアムロジンの投与を中止すると、体内から薬が消失するにはどれくらいの時間が必要になるのでしょうか。それは、薬の効果と同じ時間です。
すなわち、「36時間×4=144時間(6日)」となります。
そのため、もしアムロジンによって副作用が出たとしても、使用を中止した後に薬が完全に体内からなくなるには、薬の効果が表れる時間と同様、144時間(6日)もの時間が必要になるということです。

アムロジン(一般名:アムロジピン)の薬物動態

深井 良祐 氏 プロフィール

薬剤師。岡山大学薬学部卒業後、同大学院で修士課程を修了。

在学時に薬学系サイト「役に立つ薬の情報~専門薬学」( http://kusuri-jouhou.com/)を開設。

医薬品卸売企業の管理薬剤師として入社後はDI(ドラッグインフォメーション)業務・教育研修を担当。

独立後、現在は株式会社ファレッジ代表。薬剤師として臨床にも従事しつつ、
医療系コンサルタントとして活動している。

著書に「なぜ、あなたの薬は効かないのか?(光文社)」がある。

著書:「なぜ、あなたの薬は効かないのか?(光文社新書)」

「薬物動態」「薬害とドラッグラグ」「ジェネリック医薬品の利点と欠点」など、
薬の専門家として働くために必要な知識を分かりやすく解説した必須の入門書。