薬剤師のための心と身体のスタイル提案マガジン ファーストネットマガジン

食と健康 第2回 食と健康

OLIVE OIL MEETS CHINESE

創刊号に引き続き、「食と健康」第2回はなんとオリーブオイルと中華の出会い。
ギリシャからこだわりのオリーブオイルを輸入・販売するオリーブオイルソムリエのジョセフ・カペラス氏ご自身も、和食との可能性は感じていたものの、中華との相性は未知数。同じくオリーブオイルソムリエの前田久美子氏によるコーディネートで、神戸・薬膳中華の「同源」オーナーシェフ、銭 明建さんとのコラボレーションが実現。
薬膳料理を手がけるヌーベルシノワ出身の凄腕シェフが考える「おいしい」食とは…?

  • 前田(以下 M)

    本日はお忙しいところこの対談を実現下さったカペラスさん、銭さん、有り難うございます。
    さっそくですが、銭さんにこのオリーブオイルとの出会いとご感想を伺いたいと思います。

  • 銭(以下 S)

    偶然、お昼にお食事にご来店されていたお客様から、店の従業員がこのオイルをご紹介いただき、フェイスブックを通じて私もお友達になったのがキッカケでした。その後、カペラスさんがお食事にいらっしゃった時にお持ちいただいたのですが、いっぺんに気に入ってしまったんです。
    フルーティで、フレッシュ。オイルと言うよりジュースだと感じました。さっそく、このオイルを使った料理を黒板メニュー(定番ではないが、旬の素材などを使った限定メニュー)として用意したのですが、たちまち人気メニューとなって定番になってしまいました。

  • M

    それがこの「ピータンのオリーブオイルがけ」ですね。薬味と酸味、それにオリーブオイルのマイルドさがピータンの味を際立たせてますね。

  • カペラス(以下 K)

    お恥ずかしいですが、ピータンがこんなに美味しいものだったとは知りませんでした。同時に、これはまぎれもなく中華の味。。。凄い出会いでしたね。

  • M

    カペラスさんは「中華とは相性が良くないかも」と感じていらっしゃったとのことですが、それは何故?

  • K

    中華と言えば油は胡麻油、という固定観念に近いイメージでした。大きく炎を使うイメージもありましたので、オリーブオイルの持ち味である「香り」も飛んでしまうのでは、という想像をしていました。

  • S

    そうですよね。昔ながらの中華料理店のイメージはまさしくその通りなのですが、私どもは「ヌーベル・シノワ」を掲げ、新しい中華を模索するムーブメントの中で、貪欲で斬新な料理を作り続けてきました。あらゆるものを採り入れ、常に未知の料理を作る、そんな時代の料理人なんです。

  • M

    数々の名店で料理長を歴任されていますが、現在の「同源」をおはじめになった経緯をお聞かせ下さい。

  • S

    ある時にふと「○○の豚まんが食べたい」「××のギョーザは最高」っていう「定番」というものを意識したんですよ。ウチの○○が食べたい!って何度もリピートしていただけるようなお店を作りたい、そう思ったんです。

  • M

    私もすっかりリピーターです(笑)。銭さんのカニあんかけチャーハンは毎度外せない(笑)

  • S

    (笑)それは何より嬉しいお言葉です。おかげさまで同源はほとんどのお客様がリピーターなんです。平日もご予約で満席になる事が多くて嬉しい悲鳴です。ただ、中華はご存知のように体力勝負の面もありますので、もう鍋を振る腕の筋肉が・・・
    素材にどうやって火を通すか、そのあたりの微妙な手さばきで味が変わってしまうので、私流のやり方を通すしかない。ドクターからも注意されているのですが、これだけ多くの方が私の「定番」を求めてくださっているのに、味を変えるわけにもいきません。
    現在は定休日ともう1日、木曜日は弟子にお昼を任せ、お休みをいただいております。

  • K

    素材の味を大事にされるがための独自の鍋の振り方があるんですね。驚きました。

  • S

    近頃は中華に対する風当たりも気になるところなんですよ。

  • M

    それはどういう事でしょう?

  • S

    ご存知のように、中国といえば「安全」に対する意識が低いと思われており、お客様から「なるべく日本国内の素材で」というご要望をお聞きすることがあるのです。
    中には中国から輸入するしかない素材もありますので、信頼できるルートからの素材確保を心がけているんです。
    政治的な話になるとお手上げなのですが、時々お店に嫌がらせがあったりしますよ。

  • M

    でもそれは同源さんのおいしさとは何の関係もない・・・

  • S

    そうなんです。私たちは美味しいものをご提供するのが仕事です。ひとくちに「おいしい」という言葉がありますが、それは色んな解釈があると思うんです。たとえば薬膳のおいしさというのは毎日の習慣として漢方薬のように「健康」を増進させる料理。つまり「身体が喜ぶおいしさ」とでも言いましょうか。
    もちろん調味料の「おいしさ」もあるのですが、それを厳密に区別して考えているわけではありません。こうやってリピートしてくださるお客様にとって「おいしい」は千差万別で良いと思っています。唐辛子などの香辛料も、身体に良いかどうか?と聞かれると答えは単純ではありません。
    体温が上がり、血行が良くなりますが、そのぶん心臓や消化器官などには負担が掛かるのです。

  • M

    でも同源さんでの食事は身体が美味しいと言っているように思えます。

  • S

    有り難うございます。
    先ほどから定番メニューの話をしていましたが、やはり新しい素材と出会うと、私もチャレンジ精神が湧き上がります。コースのご予約をいただいてメニューを考えるのは楽しいですよ。
    今日は「食とヘルシー」の取材ですので、3種類のメニューを考えてみました。いずれもこのギリシャのオリーブオイルを使って、素材の持ち味を活かしたメニューです。お楽しみ下さい。

  • M

    また定番メニューが増えそうですね!

EIRINI PROMARIUと同源によるコラボレーションメニュー

  • MENU1冬瓜と燻製豚のスープ。

    オリーブオイルを回し掛けして薫り高い一品に。

  • MENU2スモークした鶏肉と水ナスの甘醤油和え。

    オリーブオイルとローストカカオの香りが絶品。

  • MENU3燻製豆腐の戻しと海老の炒め物。

    ふんだんに野菜を使って銀餡で仕上げたひと皿。オリーブオイルの香りが絶妙にマッチ。

  • K

    今日は新商品をお持ちしました。同じくギリシャのオイルで、開発に3年も掛かってしまったのですが、「オリーブ入りオリーブオイル」です。当たり前のように思われるかもしれませんが、オリーブオイルは意外にオリーブの実の味とは違うものなんです。トリュフやガーリックなどのフレーバーを加えたオリーブオイルはありますが、「オリーブ果実風味」は珍しいと思います。

  • S

    ユニークな取り組みですね。・・・確かに新しい!

  • K

    「食の安全」がブームで終わらないように「健康」については私も勉強を続けていきます。毎年夏には故郷のギリシャに帰るのですが、まだまだご紹介できていない、昔ながらの料理や素材について見聞を深め、来年も美味しいオイルを皆様にご提供できるように努力していきます。(編集部注:この取材の数日後、カペラス氏はギリシャへ。)

  • S

    これからも新しい出会いを期待しています。

  • M

    本日はお忙しい中、お二方とも有り難うございました!

プロフィール
銭明建さん

「同源」オーナーシェフ
銭 明建 さん

学生時代からイタリアン・フレンチレストランの 厨房で調理補助のアルバイトで洋食の基礎を学ぶ。
「東天紅」に入社し、中国宴会料理を学ぶ。
「大阪パークホテル」で北京料理の大宴会料理、 広東料理等を学ぶ。
25才で兄と共同経営でオーナーシェフとなる。
友人の誘いで神戸初のチャイニーズフードバーのシェフを務める。
1990年代、関西初の本格ヌーベルシノアの店として有名だったTAO「須磨リゾート」「磯上通り本店」「北野店」で8年間にわたり料理長部長を務め、中国料理界に影響を与える。
東京「ゴールド香港グループ」に総料理長として招かれる。
神戸に戻り調理顧問を務める。
2004年6月「同源」のオーナーシェフとなる

同源

KOBE STYLE CHINESE RESTAURANT
DOUGEN

《 同源 》
兵庫県神戸市灘区岩屋北町4-4-8 丸山ハイツ1階
TEL : 078-871-7761
営業時間
11:30~14:00 (L.O. 13:40)
17:30~21:00 (L.O. 20:30)
定休日 : 毎週日曜日・第一、第三木曜日の夜
※ ランチタイムは、弟子の技術向上のため弟子が料理を作り営業致します。
http://www.dougen.biz/index.html

ジョセフ・カペラスさん

カペラス エンタープライズ 代表
日本オリーブオイルソムリエ協会 公認ソムリエ
ジョセフ・カペラス さん

ニッポンの夏は世界でも珍しい過酷な季節。この期間を父の故郷であるギリシャの小島で過ごすこと。
これが僕の唯一の贅沢であり、心と体の健康の源なんです」と語るのは、カペラスエンタープライズ代表、ジョセフ・カペラスさん。
ギリシャ人のお父様の後を引き継ぎ、貿易を生業とされていますが、近年は故郷ギリシャの上質なオリーブオイルを日本に紹介することでご自身の夢を実現し、「良いオリーブオイルを楽しんでもらいたい」との思いで奮闘中。

前田久美子さん

コーディネータ/インタビューア
イタリアオリーブオイルソムリエ協会公認ソムリエ
前田 久美子 さん