薬剤師のための心と身体のスタイル提案マガジン ファーストネットマガジン

INTERVIEW 心が震えるような一瞬のできごとこそが。

株式会社カンドゥージャパン 代表取締役

越 純一郎 さん

「カンドゥーに行くとほめてもらえるから、また行きたい」と子どもが言うので、また連れてきました、という家族が今日は最初に入場してくれました。

親子3世代で楽しめるお仕事体験テーマパーク「カンドゥー」

ファッション、航空会社、ラジオ局など、約30のベニュー(パビリオン)では、お子様だけでなくパパやママ、おじいちゃんやおばあちゃんも、お仕事体験に参加できます。
パーク中央の約600席のフルサービス・レストランでは、ご家族でゆっくりとお食事を楽しんで頂けます。

所在地

  • イオンモール幕張新都心 ファミリーモール3階
  • 千葉県千葉市美浜区豊砂1-5
  • HP:http://www.kandu.co.jp/
  • お問い合わせ:カンドゥーコールセンター
  • 0570-085-117 (オヤコイイナ)午前9:00〜午後8:30

企業の社会的存在意義を子どもに伝えたいのです

カンドゥーのベニューで行われる様々なアクティビティ(お仕事体験)を通じて、企業の社会的な役割や存在意義を伝えたいのです。
私は3人の息子をニューヨークで育てましたが、米国では子供が親に「お父さんの会社ってどうやって社会の役に立ってるの?」と聞いてきます。これは、学校の宿題として行なわれているものなのですが、私はそういう教育が日本にもっとあっていいと考えています。
日本では営利活動を「悪」とか「卑しい」などと考える傾向が残っています。私は公務員研修所の行政研修の教官を何年も務めていますが、行政研修をしていても、その傾向を感じることがあります。
しかし、世界でも日本の中でも、それぞれの企業は、それぞれの社会的役割をきちんと担っています。社会には裁判官も、ジャム屋さんも、教員も、医師も、あるいは不動産会社さんも航空会社も電機会社も、それぞれなくてはいけません。社会のために必要なのです。それを、もっと日本の児童で教えたほうがいいと考えています。
カンドゥーでは、企業の中核的価値である「コーポレート・コア・バリュー」を、お仕事体験のなかで伝えようとしています。どのような企業にも、それぞれのコーポレート・コア・バリューがあります。寄付などを行なっているか否かにかかわらず、それぞれの企業には、ぞれぞれの社会的存在意義があるのです。

本当の意味で児童教育に関わっている人材が必要

日本のテーマパークには、本当の意味で児童教育に関わっている人が必ずしも多くないと感じる時があります。お金で買ってきたハードやデザインはあるものの、ソフトがない、人材がない、ノウハウがない、カリキュラムがないなどの実態も、あちこちで拝見しました。
特に、子どもの発達段階に応じた対応について、それを強く感じます。子どもは年齢が進むに従って変わっていきます。まず「魔の2歳児」という言葉があります。2歳児の扱いは非常に難しいのです。次が、「魔の5歳児」。5歳児も難しい。じっとしていられないのです。
そして、小学校3・4年生あたりで、また節目が来ます。それくらいまでの子供は、ママゴトを楽しんでやってくれます。リアルの世界とファンタジーの世界に境目を引く能力がまだないのです。例えば、『ボクが歩いていたら宝島の地図が落ちていたので、行ってみることにしました。』といった作文を書いたりします。こうした年齢層にとってはママゴトがとても重要で、彼らは全てママゴトから学ぶのです。
しかし、それよりも大きくなるとリアルとファンタジーの間に境目を置けるようになります。そうすると、彼らにとってママゴトはもはや「子供だまし」となってしまい、「大人と同じことがしたい」と思うようになります。ですから、そうした年齢層には小学校低学年生までと同じアクティビティではなく、大人と同じリアルな感じを体験させてあげたいのです。

例えば、中学生であれば、「現役の経営者との討論会」として私と討論をしたり、銀行の方に金融の話をして頂いたり。また、カンドゥーにはレストランがあるので、ノロウイルス対策として保健所が要求しているのと同様の手の消毒をしたり。その時には、雰囲気と気分のために、白衣を着てもらいました。また、当社の従業員と同じインターカム(イヤホン・マイクのヘッドセット)を使いながら、無線通信で指示・連絡を行うことを体験してもらいました。
このように、小学校低学年までとは全く違ったカリキュラムが必要だと考えています。
もちろん、例外はあります。たとえば、新生児室ベニューにおいてはお人形を使って新生児の頭囲の測定や、おっぱいをあげるときの角度の付け方などを体験しますが、これらは幼児でも、高学年でも、中学生でも同じに行っています。

カンドゥーについて -三世代で楽しめる教育テーマパーク

カンドゥーのライセンサーであるルイス・ラレスゴイティ氏が創造したロール・プレイ・テーマ・パーク(お仕事体験テーマパーク)には、キッザニア、ワナドゥ・シティ、カンドゥーの3つがあります。
キッザニアとワナドゥ・シティは、内容は大体同じながら面積が全く違います。ワナドゥ・シティはキッザニアの2倍以上の15000㎡もの広大なパークです。一方、最新作のカンドゥーには「3000㎡以下」という方針があり、ここ幕張の第一号店は2500㎡。親の目が届く範囲を重視し、セキュリティにも徹底的に配慮しています。
大型レストランを配置したことがカンドゥーの最大の特長です。来場者はいつでも座れ、立ちっぱなしにはなりません。また、ある専門調査で、シニア世代に「孫と何がしたいか」という質問をしたところ、「一緒に食事をしたい」という回答が一番多く見られました。そこで、「三世代で楽しめるパーク」を目指してこの形になりました。
そして、最も重要な事ですが、当社は決してエンターテイメント企業ではなく、またカンドゥーはアミューズメント・パークではありません。「楽しさ」を手段としては使いながら、あくまでも教育課題に取り組むことを目的にしています。もちろんライセンサーも同じ考えです。

児童教育の新しい課題 -発達障害、セルフ・エスティーム、etc.

私は、高校・中学の教員の研修も行いますが、もちろん保育士の研修もします。そうした現場の声の中に、発達障害の子どもの増加が良く聞かれます。発達障害、自閉症スペクトラム障害には、様々なものがあります。これらは以前からあったものの、見つかるようになったので増えているように見えるのですが、まだ実態も必ずしも解明されておらず、また対応方法も確立されていません。このように、日本の児童教育には、新しい課題が多いのです。
そうした新しい教育問題には、発達障害のほかにも、披見ストレスなど、実に多くの様々なものがあります。その中でもカンドゥーが最も重視しているのは、「セルフ・エスティームの低さ」の問題です。

セルフ・エスティームという言葉をご存知ですか?

内閣府のある調査で、『時々、自分は役に立たないと強く感じることがある。』という設問に対し、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と答えた児童は55.7%!日本の児童は自己否定感が強いのです。
この課題に取り組むため、カンドゥーでは「ほめ達」を導入しました。幾多の企業や市役所などで目を見張る効果をあげてきた「一般社団法人日本ほめる達人協会」の研修を全社員が受けています。
アメリカでは、子どもをほめてあげられる機会が少しでもあると大人たちはすぐ「イェーイ」と称賛します。欧州、北米、南米、アセアン、ロシアなど、私の知る限り世界のほとんどの国では『ほめる教育』が当たり前です。教室では『たたえ合う』のが日常です。タイその他の多くの国では「あなたは私をほめてくれない」というのが夫婦喧嘩の立派な理由になり、また昨年アメリカの多くの州は「子供を怒鳴ってはいけない」という州法を制定しました。日本の「駄目だし教育」は、世界的には極めて少数の例外であることを日本人は知るべきです。

親を教育しているんです

私はカンドゥーではマジシャンとして何百人もの親子に接しました。そこで痛感するのは、親に「どうせウチの子は、大してデキナイ」という思い込みが強いことです。英米にも日本にも、「セルフ・エスティームが低い親のもとでは、子供もそうなる」という研究報告があります。まさに、それが現実になっていると感じます。
そこで、まずお子さんにマジックを教え、お母さんには「お宅のお子さんは素晴らしい!人前でやらせても大丈夫なのでやらせます。成功したら子供さんを思いっきり褒めてあげてください。お家に帰っても、御主人に『うちの子、ホントにできたのよ!』って言って下さいね!」と強く言います。これは親を教育しているのです。
マジックはもちろん成功。親子とも大喜び。泣いてしまうお母さんもいます。親が子を認めなければ、誰が認めてくれるのでしょう。親が我が子を褒める子育てをすべきなのです。

「インスピレーション」は「ひらめく」ではありません

カンドゥーで言うインスピレーションとは、心がインスパイアされること、つまり「心が震えるような体験」といった意味です。
例えば、小学生の頃ドッジボールで私はただ逃げ回るだけでしたが、初めてボールをキャッチした時、そのまま尻餅をついてしまい本当はアウトなのですが、先生がオマケでセーフにしてくれたのです。そのことで、私はスポーツが大好き少年になりました。
また、学校に来てくれた「国境なき医師団」の話を聞いて医学を志した学生がいました。また、不良とされていた少女がある人に「本当は、おまえはいい子なんだ。」と言われたその言葉に支えられて、不良少年不良少女の更生のために生涯を捧げられました。
このように一瞬のできごと、一回のできごとが、子どもの人生に尊い方向性を生み出すことは、実際にたくさん起こっているのです。そうしたものが、私たちの言うインスピレーションなのです。
お酒は飲んでもいつかは醒めてしまいますが、インスピレーションで生まれた「夢の種」「心の中の希望の光」は、消えることなく、子供の人生を導きます。そうした「インスピレーション(心が震えるような体験)にあふれたパークに、カンドゥーはなりたいのです。

越 純一郎(こし じゅんいちろう)プロフィール

日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行し、20余年にわたり日米で投資銀行業務、企画、調査などに従事し、数々の実績を残す。2000年ニューヨークより帰国し、企業再建の現場経営者に転身。7年間で3社を再建。社長塾の主宰など、経営者教育にも熱意を傾注。児童教育にも関心が深く、長年にわたり幼稚園教育企業の役員務め、児童・青少年の育成にかかわる各種NPOの支援に注力する傍らで、自らは児童養護施設に対する英語教師派遣事業を10年以上にわたり継続。講演も精力的に展開中。(財)日本薬剤師研修センター認定インターネット薬剤師生涯教育講座「ファーマストリーム」の開発・運営を行う株式会社テイク・グッド・ケアの代表取締役も兼任。

1954年 東京都生まれ
1978年 東京大学法学部卒業
1978年 日本興業銀行(現みずほ銀行)入行
12年にわたるニューヨーク勤務を含め、22年間に日米でM&A、証券化などに従事
2000年 日本興業銀行退職
企業再建の現場経営者に転身、7年間で3社を再建
2009年 株式会社カンドゥージャパン設立

主な著作物

  • 『アジアの見えないリスク』(日刊工業新聞社/2012年)
  • 『プライベート・エクイティ ― 勝者の条件』(日本経済新聞出版社/2010年)
  • 『事業再生要諦』(商事法務/2003年)
  • ほか