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深井良祐氏 連載 薬科知識解説 第4回 高品質のジェネリック医薬品

ジェネリック医薬品はいくつかの問題を抱えていることは事実です。有効成分は同じであるものの、添加物が異なることによって効果に違いを生じることがあります。外用薬であれば、特にこのような違いが表れやすいです。
ただ、ジェネリック医薬品独自の工夫がなされ、効果を発揮するケースもあります。例えば、先発医薬品にはないフィルム製剤として売り出され、持ち運びが簡単で、水なしで服用できるようにしたジェネリック医薬品があります。他にも、防腐剤が添加されており、冷蔵庫などの冷所で保存しないといけなかった先発医薬品の点眼薬に対して、防腐剤をなくして室温保存を可能としたジェネリック医薬品もあります。

単に先発医薬品を模倣するだけでなく、一歩先を進んだジェネリック医薬品も開発されるようになっています。また、ジェネリック医薬品であっても、本当に良い薬であれば先発医薬品を凌駕することがあります。

この例の一つに、ゼリー製剤があります。ジェネリック医薬品として発売されたゼリー製剤が、先発医薬品よりも高いシェアを誇るようになったのです。それがアーガメイト(一般名:ポリスチレン)で、ジェネリック医薬品として発売された薬がトップシェアを誇っています。アーガメイトは、高カリウム血症を改善する薬で、腎不全患者に使用されます。腎臓の機能が落ちると、尿の生成が十分にできなくなるため、老廃物が体外へ排泄されにくくなります。それと同様に、血液中のカリウムも排泄されにくくなります。したがって、血液中のカリウム濃度が高くなって高カリウム血症を発症するリスクが高くなります。その結果、手足や唇のしびれなどが起こり、重度の高カリウム血症になると不整脈を発症するようになります。

そこで、食物中に含まれるカリウムを腸内で吸着させて体外へ排泄させる薬として開発されたのがアーガメイトです。 これによって体内に吸収されるカリウム量が減るため、結果として高カリウム血症を改善することができます。アーガメイトのゼリー製剤自体は2000年に発売され、2011年には売上が68億円になっています。この時点で高カリウム血症の市場ではアーガメイトのシェアが約6割となっており、ジェネリック医薬品ではあるものの、トップブランド の地位を築いています。従来の薬は成分がザラザラした感触のため、服用しにくいという問題点がありました。また、腎不全患者は腎臓の機能低下によって尿の生成機能が弱くなっています。水を体外へ排泄させる機能が弱っている場合、医師の指示によって水の摂取は制限されます。そのような意味では、ザラザラ感を抑え、水なしで服用できるゼリー製剤は、水に懸濁して服用しなくてはいけない先発医薬品に比べて有利だったのです。
このように、ジェネリック医薬品の中でも本当に商品価値が高く、さらに値段が安い場合は医療現場で受け入れられるようになり、先発医薬品を超えてしまうこともあるのです。

深井 良祐 氏 プロフィール

薬剤師。岡山大学薬学部卒業後、同大学院で修士課程を修了。

在学時に薬学系サイト「役に立つ薬の情報~専門薬学」( http://kusuri-jouhou.com/)を開設。

医薬品卸売企業の管理薬剤師として入社後はDI(ドラッグインフォメーション)業務・教育研修を担当。

独立後、現在は株式会社ファレッジ代表。薬剤師として臨床にも従事しつつ、
医療系コンサルタントとして活動している。

著書に「なぜ、あなたの薬は効かないのか?(光文社)」がある。

著書:「なぜ、あなたの薬は効かないのか?(光文社新書)」

「薬物動態」「薬害とドラッグラグ」「ジェネリック医薬品の利点と欠点」など、
薬の専門家として働くために必要な知識を分かりやすく解説した必須の入門書。