薬剤師のための心と身体のスタイル提案マガジン ファーストネットマガジン

TALKIN'BOUT 主役は薬剤師であるあなたです

株式会社ニック/代表取締役

𠮷川正男 氏

ニックグループの歴史をお聞かせください。

社会人スタートは家業の菓子問屋を継いでいたのですが、友人から山口県の薬局を任せたいと頼まれたことから薬局業界に携わり、薬局経営を始めました。その当時は、医療のことも薬局のこともほとんど分からない新参者で、業界や店舗運営のことは全て薬剤師さんとドクターにお任せし、私はただキャッシュフローのチェックだけをしていました。そこで私が感じたことは調剤薬局事業については昔から今日に至るまで、ビジネスモデルのほぼ大半は国がイニシアチブを握っていますので、それに則っていればやっていけるということです。初めから大きな目標をもって始めたわけではありませんでしたし、これが今日のニックグループの主軸になるとも分かりませんでした。ただ、調剤薬局業界は守られた環境であるからこそ、今までと違った展開ができるのではないかという可能性は感じていました。

𠮷川社長ご自身が営業や店舗開発をされ、急激に店舗数を増やされたのですか?

そうですね。日々の薬局業務は薬剤師さんにお任せして、店舗開発は私が率先して行いました。その当時は、薬剤師ではない私が営業に出向くと不思議な顔をされることもありました。しかし、商談を進めていく中でご理解を頂き、信頼関係を構築して、ここまで拡大したという感じですね。あっという間の27年でした。その間もずっと、各店舗の薬剤師さんが主役なのだと、明確に考えてきました。色々な地域がありますので、仕事を取り巻く環境もそれぞれ全く違います。だからこそ、統一組織化された本部からのトップダウンではなく、各店舗が中心となり、主役を演じてもらうことを尊重しています。
また、各地域の薬局様と連携を取ることで、もっと効率の良い薬局運営と患者様へのサービス体制を構築できるのではないかと考えています。共有できるものは薬も、人も、持っているノウハウも含めて、横の繋がりを大切にし、地域医療の確立と収益の確保ができる体制を整えていきたいと考えております。その想いの象徴が、既存の118店舗です。約半分は我々が独自に開発した店舗、残りの半分はM&Aの店舗です。M&Aによる店舗は今後も増えていくものと考えております。ニックグループの特徴としてはM&A店舗の半数以上、前社長様に残留をして頂いております。その間に店舗運営の問題や経営課題を抽出し、我々がその問題解決を図ることで薬局を継続し、更なる成長へと仕向けることで後継者へバトンが支障なく手渡せるよう バックアップさせて頂いております。

年商200億規模の会社になってくると、社長の色濃いオーラがあるのかと思っていましたが、𠮷川社長は非常に自然体ですね。

あまり無理はしていませんね。昔は無理をしていたこともあったんですが、そういうときは実績として良い形が残っていないことに気付いたんです。だから、あまり無理をしないようにしています。自分がやりたい事業をやりたい人との出会いがあった時に始めます。今も薬局事業以外にも介護用品販売・レンタルや経営コンサル事業をしておりますが、根幹はどんな仕事でも共通ですので、これからもそういったタイミングがあれば事業の展開があるかもしれません。改めて考えると私は運が良く、本当に良い人に恵まれてきました。だから、私自身が色濃いオーラを出す必要もありませんでした。

𠮷川社長の「薬局(コンセプト)」についてのお考えをお教えください。

薬局が果たす役目は患者さんとしっかり向き合って、医療機関と連携を取り、薬剤に関する知識・情報を持って、地域医療を確立することだと考えています。また、薬局経営については、国が作るビジネスモデルをしっかりと把握し、どの方向に進んでいくかをある程度予想し、我々がしなければならない仕事の優先順位を見極めながら経営を行っています。ただ、国の方針が今後どのように変わっていくかは不明確なので、選択肢をたくさん持ってフットワークを軽く、いつでも方向転換ができるような組織、環境作りをしていくことが大切だと思います。
ここ数年私が感じていることなのですが、医療業界で生計を立てている人は年々増えています。ただ、この流れが国の考えに沿っているかというとそうとは言い切れません。構造改革を推進し、合理的な仕組みを作って、この業界の適正な規模を考えていくべきだと思います。薬剤師さんはそれに合わせた給与体系の中で働くしかないのでしょうか。私は今の薬剤師さんたちにはまだ余力があるのではないかと考えています。もっと力を出せば、薬剤師さんのこれからの社会的地位も十分守っていけると考えています。しかし、そのためには我々がマネージャーとして、薬剤師さんがタレント性を発揮できる環境作りが必要になってきます。人財の個性をどう見るか、またそれぞれの個性をうまくつなぎ合わせて、どう形を成すかというのがポイントになってくると考えています。

どのような人財を求めていますか?

薬剤師さんの中にはこれから5年、10年先、どんな目標をもってやっていけば良いのかが分からず不安になっている方も多いようです。しかしそれは難しいことではなく、目の前にいる患者さんにどのようなコミュニケーションを図り、地域医療にどう取り組んでいくか、ということが一番重要なんですね。そのことにモチベーション高くできる薬剤師さんとお仕事がしたいですね。また、今の薬局や医療機関に対して物足りないと感じている方や、自分の店舗について「ここは自分の店で、自分に責任があるんだ」という考え方ができる方には、その薬局の経営をお任せしても良いと考えています。我々はそれぞれの地域、店舗、その薬剤師さんの希望や志にマッチしたご提案をしていきたいと考えています。楽しい仕事の取り組み方は数え切れないほど存在するはずです。気概に満ち溢れた薬剤師さんへはサポートを惜しみません。主役である薬剤師の皆さんに充分な力を発揮していって頂きたいですね。

(聞き手 : 本誌 武内)