半減期を理解することができれば、さまざまなケースで応用することができます。ここでは、睡眠薬を例に挙げましょう。眠りに関する障害に、不眠症があります。この不眠症は、大きく四つの症状に分かれます。
不眠症の中でも、床についてもなかなか寝付けない症状が「入眠障害」です。人は布団の中に入ると、平均して10~15分程度で眠りにつくと言われています。これが、日常的に1時間以上眠れず、そのことで苦痛を感じるようであれば、入眠障害と診断されます。寝つきが悪い分、朝、なかなか起きられなかったり、昼寝するときは寝つきがよかったりします。
次に、一度眠ったとしても、夜に何度も目が覚めてしまう症状が「中途覚醒」です。中途覚醒が起きると、必然的に眠りは浅くなります。眠りが浅いために熟睡感のない状態が続くと、眠った感じがしない「熟眠障害」に陥ります。この状態に陥ると、日中、眠気に襲われて仕事などの効率が落ちてしまいます。
さらに、朝早く目が覚めてしまい、そのまま眠れない状態を「早朝覚醒」と言います。早朝覚醒は高齢者に多く見られます。早朝覚醒は若い人にも起こる症状ですが、この場合は、精神的なストレスやうつ病が原因であることが多いと言われています。早朝覚醒の場合、もう一度無理に寝ようとするよりも、起きてしまった方がその後よく眠れるようになることもあります。
このように、不眠症と一口に言ってもさまざまな種類があります。したがって、「どのような睡眠障害を改善したいか」によって睡眠薬を使い分ける必要があります。ここで、半減期の出番となります。睡眠薬は半減期によって「超短時間型、短時間型、中間型、長時間型」に分類されます。
半減期が短ければ、その分だけ薬の作用も短くなります。超短時間型の睡眠薬であれば、すぐに効果を表したとしても、その効果も素早く消失してしまいます。そのため、最初の入眠のときだけに作用しても、朝起きる頃には薬の作用がなくなってしまいます。つまり、超短時間型の睡眠薬は床についてもなかなか寝付けない入眠障害の人に限って有効であることが分かります。また、薬の作用時間が短いということは、副作用も少ないということです。
夜中に何度も起きてしまう中途覚醒の場合、眠っている間も薬が効いてくれなければ効果がありません。こうしたケースでは、短時間型の睡眠薬など、もう少し半減期の長い睡眠薬を使用すれば効果的です。
早朝覚醒のように朝まで持続した効果が欲しい場合であれば、さらに長い半減期をもつ薬が必要になります。そこで、中間型や長時間型の睡眠薬が使用されるようになります。より簡単に考えれば、半減期の短い薬は「寝付きを改善する薬」であり、半減期の長い薬は「長く眠れるようにする薬」だということです。