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MENTAL CARE 「気づき」トレーニング 第2回「気づき」を行動に移す。

前号の『「気づき」の大切さを知る。』が大変好評でした。薬剤師の皆さまも職場での人間関係について、悩まれているようです。

「人間関係で悩む」と言っても色々なパターンがありますが、大きく分けると3つあります。1つ目はAさんさえいなければもっと職場の雰囲気が良くなるのに、というパターン。2つ目は、Aさんと周囲の人は上手くいっているのに自分は上手くいっていないパターン。3つ目は自分だけが周囲に溶け込めてないと感じているパターン。特に新人さんだと慣れない環境でこんな風に感じてしまうケースは多いですね。どのパターンも当事者なので感情的になってしまいがちですが、まずは客観的に、どういう状況なのかを把握することが一番だと思います。

3つのパターンで、それぞれどのように考え、行動していくのが良いのでしょうか?
まず、1つ目の「Aさんさえいなければ…」というパターンではいかがでしょうか?

客観的に見てもやはり、Aさんに原因があるように思えることもあると思います。その時、一番簡単なのはAさんを責めることです。でも、そうすることにより更に関係が悪化してしまう事の方が多いのです。人手の足りない中、ギクシャクした人間関係では仕事に影響が出てしまいますよね。今のメンバーで上手くやっていくためには、まず、「Aさんがなぜそのような言動をするのかな?」と、Aさんの立場に立って考えてみましょう。Aさんを変えることはとても難しいですが、周りが変わる事で結果的にAさんが変わるという事が起こります。

自分一人で立ち向かうのは大変なので、職場の方たちと相談し、自分たちがどのように改善すれば、Aさんが変わってくれるのかを考えていくのが良いでしょう。薬剤師さんはお忙しい職場なので難しいとは思うのですが、あえてそういう時間を作ることで逆に後々、上手く仕事が回って無駄な時間が無くなったり、イライラしたりしないで済むと思います。

先ほどの2つ目の「Aさんと自分だけがうまくいっていない…」というパターンはいかがでしょうか?

正直、性格的に合わない人はいると思います。プライベートだったら絶対友達になれないけれど、職場だとそういう訳にもいかないですよね。先ほどと違うのは、周りの人はAさんと上手くいっているということです。
まずは、自分と周りの人でAさんとの接し方のどこが違うのかを考えてみてください。例えばAさんが自分と話をしている時だけ口調や態度が違うと感じるとしたら、極端ですが、そうさせているのは自分なのです。同じ内容でも自分の伝え方と周りの人の伝え方が何か違わないか、耳を澄ましてみてください。「気づく」ためには現状を知ることです。感情的に振りかえるのではなく、客観的にその出来事を振り返ることで気づけることもあると思います。気づければ、改善点は比較的簡単にみつかりますよ。後は、意識し行動に移す!です。

最後に3つ目の「自分だけが溶け込めない…」と感じている場合はいかがでしょうか?

その職場に元々いらっしゃる方達の絆が強く、外部から来た人は入りづらいと感じることがあります。実は、この壁を作ってしまっているのは自分なのです。まずはその職場で自分がどうありたいのか、例えば派遣で期間が決まっているから別にそれでも良いというのもありだと思います。しかし、周囲に溶け込んでもっと良い雰囲気で仕事がしたいというのであれば、自分から飛び込んでいく必要があります。プライベートの柔らかいお話で、共通の話題があれば仲良くなりやすいですが、共通の話題がないケースでは話題を探すだけでも疲れてしまいます。やはり仕事の話題が入りやすいと思います。仕事のことだったら質問もしやすいですよね。薬局さんによって仕事のやり方が違ったりするので、さらに詳しく教えてもらえるようにお願いしてみましょう。まずは、聞くことですね。自分で壁を作ってしまう方は、些細なことでも相手の良いところや変化を褒めることです。例えば『髪の毛切られたんですね』『そのお洋服素敵ですね』など、相手も悪い気はしないですよね。相手が笑顔になれば、こちらも笑顔になります。笑顔の連鎖で、徐々に壁も無くなっていきます。やはりこれも自分からのアプローチですね。自分が褒めると相手もきっと自分を褒めてくれます。「返報性の法則」と言うのですが、自分が何かすれば、相手も同じように返したくなる心理が働くのです。

いざ自分から動き出すと言うのはすごく勇気が必要だと思うのですが、いかがでしょうか?

そうですね。まず、動かず何も変わらない状態が良いのか、ちょっと勇気を出して動くことによって変わるほうが良いのか、それぞれのメリット、デメリットを表にして考えてみてください。すると、数的に一番多い項目があったり、「これだけは絶対に外せない」というものが出てきます。それらを十分に検討して答えを出します。それが「動かない」のであれば、もしかするとそちらを優先すべきなのかもしれません。でも、残念ながら行動しないと何も変わる事はありません。多くの場合、動かない原因として「上手くいかなかったら(失敗したら)どうしよう」があります。
しかし、その失敗は起こらないケースの方が多いのです。失敗の可能性も、成功の可能性もゼロではない場合、どうしても人は失敗の可能性を考えてしまいます。でも結果は、やってみないとわかりません。やってみて失敗したら、その時、どうするかを考えれば良いのです。先のことを考えると絶対に人は不安になります。どんなに成功している人でも先のことを考えると不安になるものです。だったら、先の事を考え不安になるより、不安を軽減するための事を考え、今、行動に移す方が先の失敗は軽減されるでしょう?最初はすぐには行動できないと思います。まずは意識する、ひたすら意識することですね。さっきは、こうすれば良かったな、次はやってみよう、よしやろうという感じで、結果やろうとしていたことの半分しか出来ていなくても、前と比べれば大きな進歩です。

実際に動くと、自分に大きな負荷がかかると思いますが、気を付けておくべきことはありますか?

100点を求めないことですね。今までやったことのないことをやるので、いきなり100点は正直無理です(笑)。100点を目指して50点に終わると失敗だと落ち込んでしまいます。でもそれは違います。10点でも、1点でも良いのです、前よりも変わったという事が大切です。前よりも変わった自分を認めてあげましょう!

本日はありがとうございました。次回は「気づき」トレーニング最終回として「気づきが成長につながる」をテーマにお話をお伺いしたいと思います。

(聞き手 : 本誌 阪井)

種田 梨夏子 氏 プロフィール
種田 梨夏子 氏

・日本マリッジカウンセラー資格認定協会 理事長・講師
・BSPA(Best Smile Partners Association)代表
・心理カウンセラー
・シニア(上級)マリッジカウンセラー

心理カウンセラー養成スクールにて資格を修得後、2002年から心理カウンセラーとして活動を開始。また、後輩の育成を目的とした「心理カウンセラー養成講座」の開催や『心のトラブルは予防出来る』との思いから、コミュニケーションスキルやカウンセリングマインドを伝えるためのセミナー、ビジネスマナーやモチベーションUPセミナーなど、講師としても活動。2014年からは、日本マリッジカウンセラー資格認定協会 理事長としてマリッジカウンセラーの育成に携わる一方、結婚後の様々な問題でお悩みの方へのカウンセリングも提供している。同時に、早期離婚がもたらす様々な社会的な影響を危惧し、婚前カウンセリングや婚前教育にも力を注いでいる。