瀧川社長のご経歴をお聞かせください。
近畿大学薬学部を卒業後、外資系製薬メーカーMRとして2年間、病院勤務を2年間経験しました。その後、元々母が経営していた瀧川薬局で26歳の時に鳴尾店を新規開局、現在阪神間で調剤薬局6店と漢方相談薬局1店を経営しています。
瀧川薬局チェーンの特徴を教えてください。
6店舗の調剤薬局は、いずれも専門性の高いドクターと共に地域に密着した医療を提供しています。例えば、ペインクリニック、痔の疾患、ALSやパーキンソンを扱う脳神経内科、そして漢方の刻みを行う与古道店があります。
この与古道店では、生薬の刻み漢方を保険調剤にて患者に提供できるようにドクターと議論しながら、中医漢方処方の中から保険適用できる生薬を選択して、オリジナル処方を組み立てています。また、患者さんからの漢方相談や食事指導にも柔軟に対応できるよう、国際中医師の資格を持つ薬剤師が4名従事しています。
東洋医学と西洋医学にはどのような違いがありますか?
西洋医学における医療技術の急速な進歩により、日本人の平均寿命は飛躍的に延びています。しかし、私は寝たきりにならないよう健康寿命を延ばすことの方がより重要だと考えています。本来、人の持つ免疫力・自然治癒力を高めて、健康寿命を延ばすことは、東洋医学の守備範囲であり、その経験と知識が大きな役割を果たすと考えています。
例えば花粉症のアレルギー症状がありますが、西洋医学では鼻水を止める、目のかゆみを抑えるといった対症療法が主体です。東洋医学でももちろん対症療法をとりますが、アレルギー体質を治すという、もう少し根本療法に近い考え方を持っています。
漢方とはどんなものですか?
漢方に使われている薬味は大根や人参、牛蒡といった普段私たちが食べている食品の延長にあるものです。漢方はある効果を期待した料理のレシピと言えばイメージが湧きやすいでしょうか。この漢方処方を構成する薬味の1つが生薬です。そして2種類以上の生薬が混合されたものが漢方薬となります。
例えば、十味敗毒湯という漢方がありますが、エキス剤であれば10種類の生薬は一定の割合で入っています。刻み漢方では、この患者さんには5番目の生薬の割合を増やすとよく効くというように、一人一人に合わせたオーダーメイドの漢方を作ることができます。このように、中医学の漢方を処方する処方元のドクターと相談して、漢方薬を構成する生薬の特徴を調整することで、患者の症状に合わせたより効果の高い漢方調剤ができます。
漢方に興味を持つ薬剤師の方々へメッセージをお願いします。
薬剤師は、薬の専門家です。生薬の一つ一つが持つ特徴をよく理解して、漢方処方の組み合わせを勉強し始めると、漢方への興味がさらに深まると思います。漢方薬を処方設計して、患者さんに提供するのは、薬剤師の仕事だと考えます。薬局でしか扱えない薬局製剤やOTC漢方を上手に利用して、患者さんの相談に応じていくことができるのです。患者さん一人一人の体質に合った食事療法や生活環境のアドバイスができるように医学的知識をしっかり身につけて、日頃の服薬指導に役立てて頂きたいと思います。
瀧川薬局チェーンの今後の展望をお聞かせください。
最近、調剤薬局の利益追求を目的とした経営方針や、医薬分業のあり方について多方面からバッシングを受けているようです。本来薬局というものは、医療提供施設であることから、地元住民の要望に即した医薬品や医療の提供に加え、今まさに厚生労働省が提唱する地域包括ケア構成員の一員として、健康情報の発信元となり、地域住民の健康寿命の延長に寄与しなければならないと考えています。そのためには、生活環境や食事指導を含め、患者さんに信頼される薬剤師を育てていかなければなりません。今後は、ただ単に店舗数を増やして売上を確保するのではなく、各店舗が地域住民の生活基盤に溶け込んでいけるような薬剤師の育成、薬局経営をしていきたいと考えています。
(聞き手 : 本誌 高山)