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UNIV(以下 U)
2025年問題を見据えて、厚生労働省から2016年度診療報酬改定の基本方針が出されました。診療報酬が下がり続けている中、病院の門前薬局から地域のかかりつけ薬局、そして慢性期の患者さんへの対応には在宅医療が広がり、薬局業界が大きく変わろうとしています。
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小松先生(以下 小松)
一般に法律というものはなかなか変わりません。私たちも関係する労働基準法も、実態が現実に合っていない部分もあり変化が遅いのですが、それに比べて医療業界の動きはかなり早いですね。それだけ切迫している状況なんだと思います。
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U
そうですね。今後薬剤師を取り巻く環境も非常に厳しくなると思います。
さて、薬剤師の皆さんは、患者さんのためになりたいという、医療者としての献身的な考えをお持ちの方が多くいらっしゃいます。一方で、いざ社会に出た途端、奨学金という大きな負債を背負う方も多くおられ、今では社会問題にもなっていますね。 -
小松
はい。薬剤師の皆さんの中には、半端じゃない金額の奨学金を借りている方がおられると聞きます。6年間すべて借りれば、私立大学の場合軽く1千万円を越えるわけですが、仮に社会人1年生が銀行に行って、半分の500万円を貸してくださいと言っても絶対に無理です。サラリーマンを10年やっていても無理かも知れません。そんな大金を仕事をする前から借りているにもかかわらず、薬剤師はお給料水準も高いので「薬剤師にさえなれればすぐに返せる」と、何となくそんなイメージをもって進学された方もおられるのではないでしょうか。
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U
確かにおられると思います。そして今、こんなはずじゃなかった、と(笑)。現状を考えると、今後薬剤師の給与水準が上がることよりも、むしろ下がることが考えられます。給与水準が下がると、返済期間が予定より長期に及んでしまうかも知れませんが、その場合、事情に応じて返済を先送りにすることはできるのでしょうか?
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小松
そういう制度もありますが、月々の返済額は減るものの返済期間は伸びるわけですから、借金が無くなった訳ではなく、借りた状態が長く続くということを理解しなければいけませんね。当初40歳位で完済する予定が50歳になっても終わらず、しかも元金は変わらないので根本的な解決にはなりません。そのため、自動車や住宅が欲しくなっても、ローンが組めないという状態がずっと続いてしまうかもしれません。そこでしっかりとした収入が見込める働き方が出来ていれば、そもそもこういう制度を使う必要も無い訳ですし、やはり繰り上げ返済で負担を減らして、人生設計をどんどん進める形が理想ですね。
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U
私が学生の頃の奨学金のイメージというのは、成績が優秀であれば学費が免除になるというものなんですが、今の返済義務のある奨学金というのは、学生ローンと同じように感じます。
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小松
上限3%という低金利ではありますが、まさにそのようなものですね。
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U
今度開催する小松先生のセミナーでは、この奨学金の返済にまつわるシミュレーションのお話もお聞かせ頂けるそうですね。たとえば、年利が3%だとしても、実は毎月の返済額のうちの10%前後が利息分だという…。
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小松
それはセミナーの時に詳しく解説いたします(笑)。
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U
よろしくお願いいたします(笑)。さて、今回のセミナーは、奨学金を効率的に早く返す方法を教えますとかそういったノウハウをご提供するのではなく薬剤師の皆さんに現状を正確に見極めて頂くことが目的だと伺いましたが。
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小松
はい。現状を見極めるためには情報がとても大切です。情報を持っていれば色々と選択肢も生まれますからね。せっかく習得された知識、薬剤師という資格はとても貴重なものですから、それをご自身がどう生かすかということをお考え頂くきっかけになればと思っています。
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U
借金が励みになるというか、モチベーションになっている方もおられるようですが。
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小松
それだけのガッツがある方は頑張れますが(笑)、性格にもよりますけど、それを重荷に感じてしまう方にとってみれば何の励みにもなりません。
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U
おっしゃるとおりですね(笑)。それでは、今回のセミナーのポイントをお教えください。
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小松
まずは現状認識をしっかりしていただくということですね。私の働いてきた20年余りの社会人生活の中でも随分といろんなことが様変わりしてきました。規制緩和もあり、今まで持っていた資格が役に立たなくなった人もおられます。
私たち社会保険労務士も畑は違うとはいえ国家資格を持って仕事をしているわけですが、常に変化を感じています。皆さんも薬剤師の資格を持っているからといって、今までのやり方のまま続いて行くとは考えない方がよいということです。変化への対応や、今どのような変化が起きようとしているのか、という情報を持っておくようにしたいですね。 -
U
では最後に薬剤師の皆さんへ先生からメッセージをお願いします。
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小松
薬剤師さんの場合、今は働く場は多くありますので、さほど困らないかも知れません。ただ今後もしも働く場が少なくなったとすれば「選ばれる」ことになり、ではどうやって選んでもらうのかが大切になります。薬剤師の資格を持っていれば誰でもよいというのではなく、コミュニケーション能力や時代を先読みする力など、薬剤師としてのスキル+αがより必要となってくるでしょう。そのことを意識しながら働くことの大切さを皆さんにお伝えできればと思っています。
借りてしまった奨学金はもう仕方ありません。今をMAXとした考え方ではなく、明るい未来に向かって新しい働き方を見つけていきましょう! -
U
小松先生、ありがとうございました。セミナーではよろしくお願いいたします。
(聞き手 : 本誌 岡)