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カウンセライダー日並の『こみコミ通信』 あなたらしく、美しくキャリアをデザインする vol.1

カウンセライダー日並の『こみコミ通信』

これまでカウンセリングにあたったのは、なんと7000人!
キャリアカウンセラーの日並先生にキャリアデザインについて、また薬剤師の皆さんからよく頂くお仕事のお悩みについてお伺いしました。

  • UNIV(以下 U)

    早速ですが、「キャリアデザイン」とは何でしょうか?

  • 日並(以下 H)

    キャリアデザインは解釈様々ですが、私は「これからの厳しい社会を生き抜いていく力を身につけること」としています。社会を生き抜いていく力を身につけるために、新卒の方はまず会社に入るという選択が妥当です。そこで様々な事を学ばせてもらい、優れた人に指導や影響を受け、自分の土台と将来の人脈を作っていきます。組織で力を身に付け、自分の力で社会を生きていくことが出来るようになれば、違う道を新たにデザインすることも、組織の中で大きな影響を与える立場に上り詰めることも可能です。

  • U

    会社ありきの考え方ではなく、「自分」が社会を生き抜いていくための力ということですね。

  • H

    そうですね。「主体的」というキーワードがキャリアデザインでは重要です。
    また、社会を生き抜くにはまず「社会」を知ることが重要です。薬剤師さんの世界で言うと、地域包括ケアシステム構築の推進により、全国どこの病院でも薬局でも患者さんの薬歴情報が見られるようになっていきます。また「かかりつけ薬剤師」としての期待に応えていかなければなりません。その変化に伴い、「自分は社会のどこに立つのか」「そのためにどんな力が必要か」も変わってきますので、それを見極めることがキャリアデザインの初めの一歩ですね。

  • U

    具体的にはどのように考えていくのでしょうか?

  • H

    人にはいくつかの立場があります。組織人、家庭人、地域人、社会人、そしてプライベートな個人。立場によって役割が違います。役割が違えば視点が変わりますし、行動や表現も変わります。それぞれの立場でどのような目標を掲げるかが、デザインの具体的な描き方です。またそれぞれの役割を担うことで相乗効果も生まれます。家庭人の経験が組織人として活かせたり、地域人としての役割が社会人としての意識を高めたりします。何年後には会社でこういうポジションにいたい、趣味の領域ではこうなっていたい、それがキャリアデザインを描いた時の具体像です。

  • U

    なるほど。よく若手の薬剤師さんから、就職後理想と現実とのギャップに悩んでいるというお話を伺います。「組織人」として描いたキャリアデザインと現実とのギャップですね。このような場合にはどうしたら良いでしょうか?

  • H

    特に新卒の方は社会を知らないまま会社に入るので、ギャップが生まれるのは当然です。「こんなはずでは無かった」と落ち込むのではなく、むしろ現実を知り、デザインをやり直すチャンスを得たという発想をしてみましょう。現実を知ってこそデザインにも具体性という美しさが出てきます。
    『理想』というと現実感が薄れるように感じますので『目標』という言い方に変えた方が良いですね。ここに到達したいという目標を持つと、今すべきことが明確になります。この目標に向かって日々行動を積み重ねていくと「小さな節目」がやってきます。それは「このままいくと、最初の目標と違うところに行ってしまう」と気付いた時です。目標と現実のギャップを小さな節目で埋めていくことも、キャリアデザインの大事なところです。目標が明確であればあるほど、軌道修正のために何をすれば良いのかが具体的に見えてきます。

  • U

    一度作ったキャリアデザインをずっとそのまま持ち続けるのではなく、軌道修正していくことが大切なのですね。
    「具体性という美しさ」について、詳しくお聞かせください。

  • H

    美しいキャリアデザインというのは、行動しながら考えたものです。行動すると何らかの結果が出るので、次を考える指針が出来ます。何もせず考えるだけでは何の結果も出ません。だから毎回毎回消しゴムで全てを消して描き直すのでボロボロで整合性がなく美しくないのです。やってみて結果を出し、たとえ失敗だったとしてもそこから何かを得て、次も自信を持って描いていく。自信を持ってキャリアをデザインするには経験を積み重ねることが必要不可欠なんです。「やってする後悔とやらずにする後悔は1対2」なんだそうです。やらずにする後悔の方が倍です。だから迷った時はまずやってみる。やれば必ず何かしらの結果が出るので、次はこうした方が良いということが分かります。その繰り返しこそが美しいキャリアデザインを作り上げていきます。

  • U

    他にも、薬剤師さんから仕事にやりがいが感じられないというお悩みをよく伺うですが、この点についてはどのようにお考えですか?

  • H

    組織にもよりますが、専門職でなければ大きな配置転換があり、年々キャリアの幅や視野が広がっていきます。しかし、専門職は大きな配置転換がない場合もあり、良くも悪くも業務内容がルーティンになりがちです。専門的知識や経験はどんどん積み重なりますが、他の部分がキャリアとして身に付きにくかったり、視野が狭くなったりする傾向があります。視野を広げる方法として会社以外の人と会う、或いは違う部署の人と付き合うことが効果的です。いわゆる「17時以降は会社に背中を向けなさい」ということです。これは「会社では会えない人と会いなさい」という意味です。
    相談でよく「毎日、同じことをしていました」と言われるのですが、それで当然なのです!毎日違うことをしていたら会社が立ち行かなくなってしまいます(笑)。毎日同じことをしていると自分では大した仕事ではないと思いこんでしまいますが、客観的に見ると「凄い仕事」なのです。社外の人との交流で自分の仕事の重要性や意味、やりがいに気付くことが出来ます。また視点の異なる人の意見を聞くことで新たな発見もあります。

  • U

    その気付きがあれば、仕事に対するモチベーションも変わってきますし、自信にも繋がりますね。

  • H

    そうですね。自分が得た経験を自信に変えた方は滅多に相談には来られないのですが、逆に後悔に変わった人は、次にどうすれば良いか分からなくなるようです。

  • U

    経験が後悔に変わるというのはどういうことでしょうか?

  • H

    人間関係や待遇面の不服等がきっかけになり、「嫌だ」という感情だけで転職に動いてしまうような場合ですね。後悔する人は一部を見て全部を判断してしまう傾向があります。一人の上司と折り合いが悪いだけなのに、組織全部が悪いという考え方になってしまうのです。悪いところばかりに目がいって、辞めるしかないという気持ちになり、辞めるための行動を始めます。これが一番後悔に変わってしまう原因のように思います。

  • U

    それでは、後悔に変えないためにはどうしたら良いでしょうか?

  • H

    組織では仕事のやり方や取り組み方がパターン化していることが多いので、どうせ辞めるなら今までやったことのないやり方を試してみるのも後悔をしない方法ですね。そうすると今まで見えなかったものが見えてきて、意外に私はこの職場に合っているかもしれない、というポジティブな精神状態になってくることがあります。物事を決断する時は笑顔で決断する方が良い結果が出ますし、重大な決断であればあるほど笑顔で決断すべきです。「やっぱり残った方が良かったのではないか」と後悔するのは、続けるメリットもあったはずなのにそこをきちんと見ていなかったということです。続けるメリットも見出した上で、本当にもうここは自分の居場所ではないなと納得できると後悔にはなりません。前職で全部やりきったと思えれば経験は自信になるので、次の職場も笑顔で選ぶことができます。

  • U

    ありがとうございました。次回号もよろしくお願い致します。

日並 昭夫氏プロフィール
日並 昭夫 氏

株式会社 パーソナルヴィジョン研究所

経歴

2003年武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科を修了すると同時にカウンセラーとして独立。現在は、個人のキャリア開発支援、若年者の就労相談をメインとしたカウンセリングを行う。就職だけを目的とせず「個人の生き方」をベースとして、現実に則した実践的なスタイルを確立している。また高校・大学等でのキャリア教育推進、企業に向けての社員定着支援も積極的に行っている。