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TALKIN'BOUT アスリートを支えるスポーツファーマシスト

日本水泳連盟アンチ・ドーピング委員会委員/公益社団法人 東京都薬剤師会 スポーツファーマシスト活動推進ワーキンググループ

長谷川 真帆さん

  • UNIV(以下 U)

    長谷川さんがスポーツファーマシストになろうと思われたきっかけを教えて下さい。

  • 長谷川(以下 H)

    3歳の頃からずっと水泳をしており、スポーツに関わる仕事がしたいと思っていました。薬学生時代からドーピング検査員をしていたのですが、ちょうど大学卒業頃にスポーツファーマシストという資格ができ、それを取得したのがきっかけです。

  • U

    現在も水泳はされているのですか?

  • H

    今でもたまにマスターズに出たりしていて、今年はオープンウォーターの3キロに挑戦しようと思っています!

  • U

    どうすればスポーツファーマシストになれるのでしょうか?

  • H

    基礎講習会と実務講習会を受けてテストに合格すればなれます。スポーツファーマシストの認定は4年更新なのですが、毎年規則や禁止物質も変わってきますので、年に1回必ずeラーニングで実務講習を受けています。

  • U

    スポーツファーマシストの活動のお話をお願いいたします。

  • H

    私は水泳連盟でアンチ・ドーピング委員会委員をしています。全国大会レベルの試合で、啓蒙活動のためのブースを開いて薬の相談を受けたり、ドーピングに掛からない薬の一覧表やドーピングについての問合せ先などを配布しています。また今年からは、遠征や合宿で海外に行く際に、トレーナーの方達が持っていく救急箱の管理もさせて頂けるようになりました。

  • U

    活動を通して、やりがいを感じるのはどんなところですか?

  • H

    選手から「今までは風邪を引いても、薬の服用でドーピングに引っかかるのではと心配なので気合いで治すという感じだったが、安心して相談できるところができて良かった」とお聞きするととても嬉しいですね。また、オリンピックなどで活躍する選手をサポートできるのもやりがいですし、薬剤師として誇りに思える部分ですね。

  • U

    選手が風邪を引いて病院に行っても、先生はドーピングの事は意識されていないですよね?

  • H

    そうなんです。ですので、選手には病院に行ったら必ず「自分はスポーツ選手なのでドーピングに掛らない薬を処方して下さい」と伝えて下さいとお願いしています。またスポーツドクターではないお医者さんの場合、ドーピングについては詳しくないので、選手から処方薬の確認の連絡をもらったり、お医者さんから質問されたりすることもあります。

  • U

    個人競技とチーム競技とでは、ドーピングの禁止物質は違うのでしょうか?

  • H

    競技種目によって違います。競技種目によっては追加項目があったり、アルコールが禁止されていたりします。ですので、選手個人だけで管理するというのは難しいと思います。最近になってメディアで「うっかりドーピング」が注目されるようになり、選手からも色々尋ねられることが増えましたが、それも一部のメジャーな競技だけですね。マイナーな競技ではドーピングに対しての意識は低いように思います。

  • U

    食事にも注意が必要だと聞いたことがあります。

  • H

    そうですね。中国で食べた牛肉の肥料に筋肉増強剤が使われていて、それが原因で違反になった選手も過去にいらっしゃいます。中国とメキシコでは必ず指定されたレストランに行くこと、また集団で食事を摂るように指導されています。
    また、栄養ドリンク剤もビタミンが含まれているだけなら良いのですが、日本製でも生薬が入っていたりすると製造過程で植物や動物を使用していますので、「選手の自己責任になります」というのが一般的な答えになります。

  • U

    東京オリンピックを控え、スポーツファーマシストは更に注目されると思いますが、より活躍できる体制を整えるためには何が必要でしょうか?

  • H

    薬剤師がスポーツ界に積極的に出て行くことが必要ですね。今は相談窓口のようなもので、薬剤師会のホットラインやJADAホームページのスポーツファーマシスト検索で電話番号やメールアドレスを調べて質問する形式なのですが、これだと顔が見えないので質問する側は不安を覚えます。現場にスポーツファーマシストが向かう方が良いと思っています。

  • U

    今後の事も考えると、やはり英語も必要ですか?

  • H

    そうですね。既に東京オリンピックに向けて海外から視察の方が来られていて、宿泊場所のチェック等をされています。例えば薬局はどこにあるか、どこに聞けば良いのかなどの面で力になりたいと思っています。
    また、大会等でドーピング検査を海外で受ける選手も多いのですが、その際は全て英語で話されます。内容を選手に伝えることはもちろん、検査手順も本来は世界共通なのですが、海外では少し違う時がありますので、選手を守るためにも「違う」と言わなければなりません。

  • U

    スポーツファーマシストに向いているのはどのような方だと思われますか?

  • H

    スポーツをしている人は気持ちが熱い方が多いので、まずそれについて行ける方ですね。また、試合会場の中に自分たちのブースを設けられるのも、競技会の運営スタッフやコーチ、選手の皆さんのご協力があってのことですので、迷惑にならないように、感謝の気持ちを忘れず、コミュニケーションがしっかり取れる方が向いていると思います。あとは、今のスポーツファーマシストは自分の休みの日に活動するので、プライベートの時間が少なくなります。スポーツ好きな方でないと少し難しいかもしれませんね。

  • U

    ご自身がスポーツファーマシストとして向上させたいところはありますか?

  • H

    現場に出るとドーピングだけではなくて、「どっちのサプリメントが効きますか?」など、選手は競技力を高めるために一生懸命ですので、その辺りで薬剤師としても力になれることがあるのでは、と思っています。こっちの方が早く治るよ、サプリメントでも今の状態ならこれを飲む方がいいね、というアドバイスができればと思っています。

  • U

    薬剤師の方にお伝えしたいことはありますか?

  • H

    スポーツファーマシストに興味がある薬剤師さんも、実際何をどうしたら良いのか分からず、そこで終わってしまわれることが多いようです。スポーツファーマシストが活動できるフィールドも、現状では薬剤師会か競技団体内にしかなく、それ故薬局にお勤めの薬剤師さんが選手と関わる接点も薬局ぐらいなのです。もっと薬剤師会と競技団体が話し合ってドーピングは薬剤師に任せよう、という流れになればいいですね。薬剤師の方もスポーツファーマシストに興味があれば、どんどん積極的に関わってほしいです。私自身も講演会や懇親会でスポーツファーマシストを普及させる提案や広報活動を頑張ろうと思っております。

  • U

    最後にスポーツファーマシストにとって大切なものは何でしょうか?

  • H

    1番は「正確に的確に答え(応え)られること」ですが、とにかくスポーツが好きであることですね(笑)!

  • U

    ありがとうございました。