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INTERVIEW 病院薬剤師と薬局薬剤師が繋ぐこれからの地域医療

医療法人友紘会 彩都友紘会病院薬剤部 部長/薬剤師

上森 美和子先生

ファルメディコ株式会社
ハザマ薬局茨木彩都店 管理薬剤師

松原 有希先生

薬局薬剤師としてのご経験があり、現・彩都友紘会病院の薬剤部長としてご活躍される上森先生と、病院勤務を経て現・薬局薬剤師としてご活躍されるハザマ薬局茨木彩都店・管理薬剤師の松原先生に、今後の地域医療を担う存在である病院薬剤師、薬局薬剤師それぞれが目指すべき連携の姿というテーマでお話を伺いました。

  • UNIV

    まず、上森先生のご経歴からお願いします。

  • 上森

    大学卒業後、研究開発、医学部の実験助手を経て、医療現場に入りました。調剤薬局で1年、大学病院で10年ほど勤めたのち、彩都友紘会病院の開院時から薬剤部長として勤務しております。

  • UNIV

    どういったご経緯で医療の現場に移られたのですか?

  • 上森

    私が学生の時の薬剤師の仕事は、調剤薬局や病院では「薬を調剤する事」だったんですね。メーカー勤務後に縁あって実験助手として働いていた時、共に勉強していた医学生の話を聞きながら、「薬剤師」として自分も「医療」に携わる身なんだなぁ…と感じました。(笑)
    患者さんと親密な関係を築ける薬局業務、病棟薬剤師業務が始まり出した当時の大学病院での仕事には、「医療人」としてのやりがいをすごく感じていました。最先端の治療や様々な疾病についてたくさん勉強させて頂いて、もっと取り組める活動の場を広げていきたいと感じていた時に、今の病院からのお話を頂いて…、病院スタッフとの連携をより密に行える環境で、地域の医療を支えていきたいと志しました。実務実習を受け入れる体制もあり、後進を育成できるという環境にも魅力を感じましたね。

  • UNIV

    ありがとうございます。では松原さんのご経歴をお願いします。

  • 松原

    大学卒業後6年間は病院薬剤師として働いていましたが、2011年の夏にハザマ薬局に入社し、外来業務と在宅業務に携わってきました。現在は彩都友紘会病院から徒歩圏内に新規開局したハザマ薬局茨木彩都店で管理薬剤師として勤務しています。

  • UNIV

    松原先生が病院から薬局というフィールドに挑戦された背景をお聞かせ下さい。

  • 松原

    私が学生の時は、「調剤薬局=患者様にお薬を渡すだけ」というイメージがあって…、「それだけで薬剤師として成長できるのだろうか?」という考えがあり、薬局への就業は全く考えていませんでした。病院に就業し、本当に色々な経験をさせて頂き、スキルアップは出来ていたと思います。ただ、何年もやっていく中で、「自分が病院薬剤師として、今後どうなっていきたいのか?」という姿を想像できなくなってしまいました。そんな時に、「調剤薬局の在宅業務」というものを初めて見る機会があり、「すごく面白そうだな」と。病院では病棟活動もあったので、患者さんと触れ合う機会も多かったのですが、病院内にはドクターや看護師さんもおられ、「薬剤師が患者さんにとって一番頼れる存在」では決して無かった様に感じていたんです。在宅の現場では患者さんがより薬剤師を身近に感じてくれる気がして、自分の中の「患者さんに寄り添える存在になりたい」という志を新たに、今の職場を選びました。

  • UNIV

    お二人は元々お知り合いだったそうですね。

  • 上森

    実は私が大学病院で勤務していた時に知り合った間柄なんです。もう10年以上になるでしょうか。彩都友紘会病院が開院した際は近くに調剤薬局が1軒も無かったのですが、近くに新しい薬局ができるよと聞いて…ご挨拶にこられた管理薬剤師さんがなんと松原さん。「えーっ!こんな所で再会するなんて!久しぶり〜!!」とお互いに。(笑)

  • UNIV

    10年振りの再会!それは凄いですね。「地域の医療を支えていきたい、患者さんに寄り添いたい」という熱い想いを持って、この彩都の地で運命的に再会されたお二人ですが、地域医療を支えられるにあたっての「病院と薬局」、今後の協働についてのお考えはいかがでしょうか。

  • 松原

    私が病院で働いていた当時ですが、入院時の持参薬をチェックする際に「患者さんや家族が本当にこれだけの量の薬を管理して、きちんと服薬できているの?」と思うことが多々ありました。調剤薬局の薬剤師さんはどのように服薬指導をされているのか、服薬の状況まできちんと把握されているのだろうか…と。逆に今は薬局薬剤師の立場で、病院を退院された患者さんが外来受診の後薬局に来られた時、入院時に医師や薬剤師からどのような説明を受けられているのか、私達薬局薬剤師の解釈と異なっている点はないのだろうか、という所が非常に気になります。
    患者さんの退院時は病院から薬局へ、入院時には薬局から病院へ、双方向で患者さんのさまざまな情報を伝達・共有する事ができると、患者さんにとってもより安全・安心な情報が提供できますよね。

  • 上森

    最近は入院時にお薬手帳を利用される方が増えたように思います。松原先生が仰ったように、これからの病院と薬局の連携を推し進めていくひとつとして、こういったツールを活用するのはとても良いことだと思います。退院される際の詳細な情報記載は勿論ですが、最近は薬剤師外来も始まり、そこで把握出来た情報もお薬手帳にしっかりと記載するようにしています。病院から在宅に移られる方も、外来から入院に移られる方もいらっしゃるので、患者さんを介した形になりますが、病院と薬局がしっかりと情報の連携を取り、どちらでも同じ医療サービスが受けられるようにする事が大切ですよね。
    今後は退院時カンファレンスにも病院の薬剤師を積極的に参加させていきたいと考えています。そこに調剤薬局の薬剤師さんも参加して頂けると、より薬薬連携も密になっていくのではないでしょうか。

  • UNIV

    「病院薬剤師経験のある薬局薬剤師」、「薬局薬剤師経験のある病院薬剤師」、お二人のような方が今後の旗振り役となって下さると、より力強い薬薬連携の姿が見えてくる気がしています。最近では薬物療法認定薬剤師といった資格も薬局薬剤師が取れる流れになってきていますし、今後「地域医療を支える薬局薬剤師」の活躍も大きく期待される所ですね。病院と薬局、それぞれが果たす機能とその連携が、これからの地域医療に欠かせないものである事を再認識すべきですよね。

  • 上森

    それがまさに理想的な形だと思います。先の薬歴ひとつを取ってもそうですが、連携をスムーズに行う手段など、関わりをより蜜に取っていける体制を作っていきたいと思います。その為にはまず、お互いが顔の見える関係である事が大切だと思います。病院と薬局の薬剤師同士で勉強会をしたり…薬局薬剤師さんに病院の勉強会に来て頂いて、ドクターと直接お会いする場を持つことも必要ではないでしょうか。双方にいつも身近に感じられる存在であれば、形だけの連携ではなく、お互いの立場や考え方、欲しい情報も分かってくると思うので、もっとギュッと繋がっていくのではないでしょうか。

  • UNIV

    松原先生もおっしゃっていましたが、特に若い世代の薬剤師・薬学生からは「病院でしか携る事のできない仕事が多い」とよく聞きます。「薬局はいつでも行けるからまずは病院で働きたい」、「病院の方がやりがいが大きい(はず)」というフレーズを耳にする機会が多いように思いますが、薬局薬剤師のやりがいはどういったところでしょうか?

  • 松原

    そうですね、患者さんにとって身近な存在である事だと思います。病院勤務時代は抗がん剤も含む注射薬の無菌調剤も経験し、多くの薬を扱う事もできました。非常に勉強になりましたし、今もその経験は活きていると思います。そういう意味で「病院内でしかできない業務」は確かにあるのですが、その逆も然りだと思います。先日も「薬の事を聞きたかったので、病院じゃなくて薬局に電話しました」という患者さんがおられて…、とても嬉しかったですね。

  • UNIV

    調剤薬局だからこそ出来る事もある、という事ですね。

  • 松原

    外来の患者さんで「しっかり飲んでいます」と言って下さる方でも、お薬が余ってしまっていたり、改めて伺ってみると飲み方を間違われているケースも少なくありません。ご高齢の方や一人暮らしの方は特に、深く関わっていかなくてはいけないと感じています。最近も、飲めていない薬を棄てているという患者さんがおられたのですが、ドクターからすると飲んでいる筈なのに効果がない、だから増量しよう…となりますので、副作用も大きな心配になってきます。地域の患者さんには調剤薬局の薬剤師が一番接する時間も機会も多いと思うので、相談しやすい立場での支援を続ける事で、身近にいる「薬のプロ」として頼られる存在になりたいと思っています。それが「薬局薬剤師としてのやりがい」に繋がりますね。

  • 上森

    私も調剤薬局で勤務していた頃は、患者さんをすごく身近に感じていたように思います。気兼ねなく薬局に来られて、日常生活の事などをお話しくださって…。入院患者さんに比べると程度も比較的軽い患者さんが多いので、そういう部分では普段の生活の延長上にある関係でしたね。

  • UNIV

    薬局がこれまで求められていた「処方せん通り正確に、お薬を調剤してお渡しする作業拠点」から、地域の患者さんを診ていく存在へと変わりつつありますね。今後の地域医療を支えていく中で調剤薬局の果たす機能は不可欠だと強く感じています。
    松原先生のお話にもありましたが、病院での経験は、調剤薬局の「在宅現場」にも非常に前向きに活かせていると…、今後病棟経験のある病院薬剤師が薬局のフィールドに挑戦するという形で、地域医療に大きく貢献するという可能性も十分に考えられますよね。

  • 松原

    在宅患者さんへの関わりに、病院薬剤師の経験は大きく活かせると思います。私も病院薬剤師だったので、薬局から外に出ることも、患者さんのお宅に伺うことも全然抵抗が無くて、むしろ病院の薬剤部にいる様な感覚で働いています。

  • UNIV

    病院の機能が自宅に移るというだけで、「薬局が病院の調剤室」で「患者さんのご自宅が病棟」みたいなものでしょうか。

  • 上森

    病院薬剤師の私も在宅業務はとても魅力的だと感じています。ハザマ薬局さんでは、新卒薬剤師に1年目から在宅業務を任せる事で、責任感ややり甲斐の醸成だけでなく、学びや気づきから、色々な事に興味を持って仕事をするようになっていると伺いました。当院でも入職3ヶ月後には病棟で活動して貰っています。病院全てがそうだという訳では決してないですが、多くの病院では、2.3年間調剤をしっかり覚えてから病棟に上げましょう、という所が実は多くて。6年間の学習と実習経験を積んでいるのに、そんなに長期間調剤をしないとベッドサイドに行けないなんて…と感じてしまいます。入社1年目であっても、やらせてみてあげる事は大切だと感じています。病院での病棟業務が調剤薬局でいう所の在宅にあたると思うのですが、同じですよね。在宅医とともに患者さんのところに行って、疼痛コントロールができているか、症状緩和ができているか、一緒に患者さんの状況を診させて頂けるような環境がしっかりとあれば、1年目から大いに活躍できる薬剤師はたくさんいると思います。後輩達からみて、活き活き働いている先輩がいる、私はそういうのが理想ですね。

  • 松原

    私自身も患者さんに寄り添える立場で、主体的に仕事ができるようになり、自分の想いを形にできていると感じます。病院薬剤師だった時は、薬局薬剤師さんとの連携が全然出来ていなかったと反省していますが、培った経験をもとにして、薬局現場で感じる新しい理解も大きくありますので、こういった感覚や想いをしっかりと共有しながら、今後も活動を進めていけたらいいなと思っています。

  • UNIV

    これからの薬局は地域の健康発信基地としての活躍も期待されています。ポジティブに捉えると様々な可能性が広がっているという事ですよね。薬局薬剤師は、チャレンジしたいと思ったらできることは相当あるという感じですね。

  • 上森

    ミキシングもするし、在宅医とともに患者さんのそばに出向いてお薬の調整もするし、飲めているかどうかの確認もするし…、調剤薬局でも病院と同じような業務や関わりは十分に可能だと思います。私達薬剤師は日々、患者さんから教えてもらって、勉強させて頂いている立場だと思うんですね。関わらせて頂いた患者さんから学ばせて頂いた事や経験を、その次に出逢う患者さんに繋げていく事が医療人として大切な事だと感じています。その場所が、病院であろうと調剤薬局であろうと同じなのではないかなと思いますね。

  • UNIV

    おっしゃる通りだと思います。活躍されるフィールドこそ違えど、患者さんに安心・安全な医療を提供したいという想いは共通ですよね。今後業界が大きく変革していく中で、医療の本質的な部分を国民から問われている背景もあります。そこに良い意味で緊張感を持ちながら、求められる職能をしっかりと果たしていくことが「薬剤師」としての誇りに繋がり、またそれが世間に評価されて…、善循環していく事が大切なのでしょうね。本日は貴重なお時間をありがとうございました。

  • 上森・松原

    ありがとうございました。

医療法人友紘会 彩都友紘会病院

大阪府茨木市彩都あさぎ7丁目2-18
http://www.saito-yukoukai-hp.jp

ハザマ薬局 茨木彩都店

大阪府茨木市彩都あさぎ3丁目1-13
http://www.pharmedico.com