セファロスポリンと呼ばれる抗生物質が発見され、これと似た構造を有する薬をセフェム系抗生物質といいます。ペニシリン系と同じように、セフェム系もβ.ラクタム環を有しています。セフェム系でよく使われる分類に第一世代、第二世代、第三世代、第四世代があります。ただ、これらは単純に「開発された期間」による分類です。そのため、同じ世代でも性質のまったく異なるセフェム系が存在します。
一般的に、世代が進むごとにグラム陽性菌がカバーされなくなり、グラム陰性菌をカバーするようになります。つまり、傾向としては、「グラム陽性菌:第一世代>第二世代>第三世代」となります。また、「グラム陰性菌:第三世代>第二世代>第一世代」と考えます。第四世代については、「第一世代+第三世代」と認識します。
ただ、前述の通りこれは開発された時間区分で分けた分類なので、参考程度に留めておいた方が無難です。つまり、例外がいくつも存在するということです。
■ 第一世代セフェム
第一世代セフェムは、グラム陽性菌の中でも黄色ブドウ球菌やレンサ球菌に対して使用されます。そのため、これらの細菌によって皮膚や軟部組織(筋肉、血管など)に感染症を生じた場合に有効です。ただ、グラム陰性菌によって皮膚・軟部組織に感染症が起こることもあります。その場合は、グラム陰性菌をカバーする第三世代セフェムを用いることがあります。
なお、第一世代セフェムは腸球菌に対して効果がありません。すべてのグラム陽性菌に作用を示すわけではないのです。また、緑膿菌や嫌気性菌へのカバーもありません。
■ 第二世代セフェム
第二世代セフェムでは、「市中肺炎(社会生活の中で患った肺炎)や尿路感染症の治療に使われる薬」と「腸管内の感染症に使われる薬」に分類できます。これは、嫌気性菌をカバーするかどうかで性質が分かれます。前者の市中肺炎に使う薬は嫌気性菌に効果がなく、後者の第二世代セフェムは嫌気性菌に効果を示します。
■ 第三世代セフェム
第三世代セフェムでは、大きく「肺炎球菌+多くのグラム陰性菌に効果を有する薬」と「緑膿菌に効果を有する薬」の2つに分類できます。
前者の抗菌薬では、第二世代セフェムの「嫌気性菌に効かない抗菌薬」と同じように、市中肺炎や尿路感染症などの治療に用いられます。また、第一世代、第二世代セフェムは髄膜へ移行しないものの、第三世代セフェムでは髄液へ移行します。そのため、第三世代セフェムは細菌性髄膜炎を治療することができます。
それに対して、緑膿菌に効果を示すことが特徴の第三世代セフェムも存在します。実際に活用するときは、主に緑膿菌による感染症を発症したときです。
このように、第二世代セフェムと同様、第三世代セフェムも薬によって全く異なる特徴をもつことがあります。これを認識せずに、例えば「緑膿菌に効果を有する第三世代セフェム」を市中肺炎の治療に使ってはいけません。グラム陽性菌への効果が乏しいからです。この場合、肺炎球菌(グラム陽性菌)などによる市中肺炎をカバーできません。
■ 第四世代セフェム
第三世代セフェムに比べて、グラム陽性菌へのカバーを増やした抗菌薬が第四世代セフェムです。つまり、第一世代と第三世代セフェムを合わせたような薬です。そのため、グラム陽性菌・グラム陰性菌を幅広くカバーし、緑膿菌へも効果を示すことが特徴です。
白血球の一種である「好中球」が減少しているときの発熱では、第四世代セフェムが有効です。これは、原因菌の1つに緑膿菌が想定されるからです。緑膿菌まで含めて幅広くカバーすることで、感染症を治療するのです。