薬剤師のための心と身体のスタイル提案マガジン ファーストネットマガジン

TALKIN'BOUT セルフメディケーションとしてのアロマテラピー

ビタミンアロマ 主宰・あわせ 代表

吉田 節子さん

セルフメディケーションの推進が薬剤師の重要な役割の一つとなる中、注目を集めているのが「アロマテラピー」。
ファーネットマガジン「薬剤師のためのアロマテラピーセミナー」の講師としてもご活躍頂いている吉田節子先生にお話をお伺いしました。

  • UNIV(以下U)

    アロマには昔からご興味があったのでしょうか?

  • 吉田先生(以下吉田)

    アロマとの出会いは、素敵な雑貨屋さんに行った時に精油の小瓶を見つけたことでした。そして、ちょうどその頃に私の師匠にあたる方が「あなた、薬剤師の卵だったらお勉強してみたら?」とアロマテラピーや家庭で使える植物療法のようなものを直々に教えて下さったのが始まりです。当時はアロマと薬局を別々に考えていましたが、お勉強をすればするほど外国では精油が薬局で売られているんだ、薬剤師さんが後ろの棚から選んで持ってくるんだということが分かりました。そして将来は精油がいっぱい並んでいるような薬局を作りたいと考えるようになりました。

  • U

    そういった薬局を目指してご自身で薬局を立ち上げられたのですね。

  • 吉田

    はい、メルシー薬局という薬局を始めました。調剤薬局なのに、精油がワーっと並んだ薬局ですね。調剤と併設でアロマがサブっていうのが、セルフメディケーションになっていないなと思ったんです。調剤メインでちょっとやっているだけだと面白くないなぁって。

  • U

    セルフメディケーションという言葉がございましたが、セルフメディケーションにおけるアロマテラピーをどのように考えておられますか?

  • 吉田

    大きい口を叩く訳ではないのですが、セルフメディケーションの主軸になるのがアロマだと思っています。アロマの「伝達」について脳内の経路を考えても、大脳辺縁系にまず行って、その後視床下部に下りていって、自律神経、内分泌、免疫系の三つのトライアングルを一気に動かすことが出来るんですね。ということは、自律神経系で困っている方、ストレスを抱えていらっしゃる方、精神疾患の方や内分泌で言えば女性特有の更年期や妊娠・出産にも使えるし、あと免疫を上げるというところで、病にかかってしまっている方のQ.O.L.(生活の質)を少しでも上げることができる。組み合わせることによって、みなさんの生活の質を向上させることができるのがアロマなんです。今はまだセルフメディケーションの主軸というイメージはないかもしれませんが、そうなる可能性が凄く高いと考えています。

  • U

    アロマの効能は多岐に渡っているのですね。

  • 吉田

    目に見えないから損をしているんですよ。逆に目に見えないところに効くんですけどね。ちょっと気分が冴えないというレベルでも、良い香りで落ち着いてリフレッシュして明日に向かうことが出来ますし、本当に免疫が落ちてしまってガタっと体調を崩してしまっている方でもアロマを生活に取り入れることによって幸せに時間を過ごせることは必ずあると思います。

  • U

    香りだと、日常生活にも取り入れやすいですよね。

  • 吉田

    そうですね。もう一つセルフメディケーションの選択肢を大きく広げられるなと思うのが、睡眠に関するところです。脳に効く、感情に効く、古い脳にも効くので、一時『認知症にアロマ』と、浦上教授(編集部注:鳥取大学医学部保健学科生体制御学教授 浦上克哉教授)が効果を立証されて世に出たことがありました。体内時計のリセット、脳内時計のリセットに香りを使うことができるので、今から凄く広がっていくと思いますね。

  • U

    薬局でのアロマへの取り組みは増えているのでしょうか?

  • 吉田

    特に都会に絞られますが、例えば待合室で良い香りを焚いている薬局や、漢方薬局でアロマも一緒に使って未病促進をするような考えのところは、若干ですけれども増えていると思います。ただしアロマの歴史から考えると、薬とアロマは両方とも植物由来のもので切っても切れない関係だと思うので、もっと薬剤師さんに使って欲しいし、もっと伝えて欲しいなという想いがあります。
    また、普及させる上で、薬剤師さんがアロマを選んであげるというのも面白いと思うんですね。一つ例があって、筋萎縮症であまり動けなくなったおばあちゃんをずっと介護しているおじいちゃんから「眠れない」とご相談頂いたんです。その時ちょうどひのきのアロマを焚いていまして「ここの薬局、良い匂いがする。これは何?」と尋ねられたので「これはひのきの香りで、ひのき風呂にもよく使うでしょう?リラックスするんですよ。」とお伝えしたら、「これ、眠れるかもしれない」といってお買い求めになられたんですよね。全員に同じ香りとするのではなく、例えば薬局で普及させるのであれば毎回少しずつ匂いを変えるのも良いと思います。梅雨時でジメっとしていれば檸檬にしてみるとか、暑過ぎる時はうす.く清涼感のあるペパーミントやローズマリーを焚いてみるとか、工夫していくと面白いですし愉しんで頂けます。薬剤師としてもアロマの深みに嵌って頂けると思います。(笑)

  • U

    工夫次第で、薬局にもどんどん広がっていきそうですね。最後に、薬剤師とアロマテラピーの今後の展望を伺ってもよろしいでしょうか?

  • 吉田

    そうですね、アロマが日本に入って来て20.30年になると思いますが、一番残念に思うのが日本ではアロマテラピーが医療として認識されていないことです。それは科学的な裏付けなどが全く無かったからだと思います。そこで化学と薬品のスペシャリストである薬剤師が、この精油にはこのような成分が入っているので、こういった効能がありますよ、ときちんと理論としてお伝えできれば、日本でも医療として広く認識されるのではないかと考えています。健康に役立つものだということは周知の事実なのですが、じゃあその理由は?というところを今までは誰も言えませんでした。その点をきちんと裏付けて説明できる薬剤師がもっと増えればいいなと思っています。

  • U

    ありがとうございました。

  • 吉田

    ありがとうございました。

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