薬剤師のための心と身体のスタイル提案マガジン ファーストネットマガジン

インタビュー 健康維持・増進における薬剤師への期待

医師

溝口 徹 氏

管理栄養士

大柳 珠美 氏

オーソモレキュラー.jpサプリメント「ONサプリ」は2017年6月中旬より、オーソモレキュラー.jpホームページで販売開始予定。
http://www.orthomolecular.jp/
薬局でのお取り扱いも可能。詳しくはオーソモレキュラー.jp (03-6380-0106)まで。

オーソモレキュラー療法とは

―どのような治療法ですか?

  • 溝口

    投薬だけに頼らず、食事と栄養素で病気を治すという考え方の治療法です。
    2017年4月にカナダのトロントで第46回国際オーソモレキュラー医学会が開催され、そこで講演の機会を頂きました。年1回の開催ですので、46年間学会が続いている歴史ある治療法です。20カ国以上からの参加者は医師だけではありません。歯科医師、薬剤師、栄養士、栄養療法士…垣根なく、栄養という切り口で議論をしています。

―治療実例を教えてください。

  • 溝口

    例えば、鬱で悩んでいた女性患者さんが、この治療で薬を飲まなくても良い状態になり、それまで考えてもみなかった「子どもがほしい」という気持ちが出てきました。実際に妊娠してお子さんに恵まれ、ご夫婦でとても幸せになられています。また、抗がん剤や放射線、手術で元気がなくなっているがん患者さんも、高濃度ビタミンC点滴を行うと段々肌の色艶が良くなってきます。すると奥さんが、私も一緒に治療して欲しいとおっしゃるんです。がんの治療で「私も一緒にやりたい」なんて他の治療法ではないですよね。ご夫婦でニコニコしながら点滴をしている姿を見ると、医師としてこの治療に出会って本当に良かったなと思います。

実践と「糖質制限」への誤解

―具体的な食事・栄養素について教えてください。

  • 大柳

    私たちは「オーソフードスタイル」を提唱しています。

    【オーソフードスタイル 7コンセプト】
    1.タンパク質、ビタミン、ミネラルの確保
    2.脂質の重要性とバランス
    3.血糖コントロール
    4.食物繊維による腸内環境整備
    5.アレルゲンへの対応
    6.アルコール、カフェインの明と暗
    7.加工食品、食品添加物への留意

    患者さんへは「主食でおなかを満たさずに、おかずでおなかをいっぱいに」とお伝えしています。そうすると、皆さんにイメージして頂きやすいですね。
    「糖質制限」と聞くと、主食を抜くことだけをイメージされる方が多いと思います。また、「お肉だけ食べれば良い」、「野菜にも糖質が含まれるので食べなくても良い」といった断片的にクローズアップされてしまった情報もあります。言葉に表される「制限」の部分だけではなく、おかずメインでおなかを満たすことで、タンパク質やビタミン、ミネラル等不足しがちな栄養素を補う食事だと理解をして頂きたいと思います。

  • 溝口

    オーソという名前には「最適化」というニュアンスが含まれます。オーソフードスタイルは栄養や血糖を最適化する食事ですね。また、脂質のバランスを最適化することで、私たちの身体の色んなトラブルが良い方に向き始めるチャンスを作ります。

  • 大柳

    腸内環境もとても大切です。どんなに良い栄養を取っても、吸収できなければ改善には繋がりません。そういう意味では、糖質制限で食物繊維の糖質まで気にして制限すると言うのは本末転倒だと感じますね。また、取り入れる食材が、どう育てられたのか、どのように精製されたのか、その「質」にも注目して頂きたいですね。

  • 溝口

    ただ、気を付けてはいてもおかずメインの食事ができない機会も多いですから、そういう意味では日常の健康維持、健康増進のためにサプリメントを使うというのは非常に有効だと思います。

サプリメントの活用

―食事で補えない栄養素をサプリメントで摂るということも含めて、オーソフードスタイルということですね。

  • 大柳

    栄養を総合的に考えたものとして、今回4種類の「ONサプリ」という形にすることができました。食事と併せて、不足しがちな栄養素をサプリメントで補って頂きたいと思います。

    【オーソビタミンBR】
    オーソモレキュラー治療で重要なビタミンB群を中心に、それぞれのビタミンの相乗効果が出るよう多くのビタミンをバランス良く配合しています。ビタミンKはお薬によって摂ってはいけない方もいるので、ビタミンK以外を全て含んでいます。すべての方に安心してお勧めできるマルチビタミンです。

    【オーソミネラルFe】
    生理が始まって閉経するまでの女性が、食だけで鉄を十分に補うのは難しいので、是非食事と併用して頂きたいと思います。また、汗でも鉄分を失ってしまうので運動をする方にもお勧めです。

    【オーソミネラルZn】
    ストレスの多い方や食生活が乱れがちの方にお勧めです。また、男性機能を維持するのには亜鉛が大事ですが、ただ亜鉛を飲めば良いということでもありません。亜鉛が強化されたマルチミネラルで、バランス良くミネラルを補ってください。

    【オーソオイルωR】
    現代の食生活で不足しがちな“良いアブラ”の摂取をサポートします。以前はω3の摂取が推奨されていましたが、6や9をバランス良く摂ることの重要性が再認識されてきました。アレルギーや月経前症候群(PMS)が気になる方にも有効です。

薬剤師ができる食事・栄養指導

―それでは、薬剤師の皆さんが食事指導を行うために、患者さんの栄養状態を知るにはどうすれば良いでしょうか?

  • 溝口

    各栄養素が不足してきたときに出てくる症状がありますので、どの栄養素が足りない可能性が高いのかを栄養不足チェックシート(表)で見ていくことですね。

  • 大柳

    お食事の内容を聞き取ることも大切です。24時間思い出し法という、食事指導をする際の内容把握に使われている方法があります。前日1日の食事内容を思い出してもらい、聞き取ります。最近では、スマホで写真を撮ってきて頂いてお話することもあります。食前と食後の写真を撮影してもらい、残しているもの等もチェックできると食事量も分かりますね。

  • 溝口

    更に詳しく知りたいという患者さんがいらっしゃれば、オーソモレキュラー療法をしている医療機関で血液検査による栄養解析をするという方法もあります。検査費用は医療機関によって異なりますが、大体1.5〜2万円程度です。

―薬剤師の皆さんへ期待されることはありますか?

  • 溝口

    食事や栄養に関して、メディアから様々な情報が入ります。一般の方々は、何が本当に正しく、自分に最適な食事なのかということは分かりません。健康サポート薬局として地域の皆さんの健康を支える薬剤師さんが、正しい栄養の知識を持っていることは非常に重要だと思います。食事にしてもサプリメントにしても、適切な優れたものを入れると、驚くほど自然治癒力が上がります。オーソフードスタイルの概念を一人でも多くの方に知ってもらい、一人ひとりが口にするものに気を付ければ、国レベルで非常に大きな結果に繋がると考えています。

  • 大柳

    近年、「栄養の科学」が一般の方々にある程度浸透してきたと思います。血糖を上げる栄養素が糖質であるとか、卵を食べてもコレステロールに変わりは無いとか...。「食」はサイエンスの部分だけではなく、楽しみや文化という面も大きく持ち合わせています。まずは栄養の科学を知った上で、自分の嗜好や体調に合わせてハンドリングしていける一人ひとりの感性、意識が広まれば良いなと思います。その一端を是非、薬剤師の皆さんに担って頂きたいですね。

オーソモレキュラー療法導入クリニックが使用する、オーソフードスタイル紹介冊子等に掲載されているシート

大柳 珠美(おおやなぎ たまみ)氏 プロフィール
大柳 珠美

管理栄養士。糖質制限理論と実践の第一人者。一般社団法人「オーソモレキュラー.jp」理事。講演会、雑誌、ブログ「管理栄養士のローカーボ・キッチン」などで情報を発信し続けるほか、「食べ方だけで不調をなくす」(宝島社)など著書多数。

溝口 徹(みぞぐち とおる)氏 プロフィール
柳 珠美

日本初の栄養療法専門クリニック『新宿溝口クリニック』院長。「疲労も肥満も「隠れ低血糖」が原因だった!」(マキノ出版)など著書多数。本誌第10号より「薬剤師が知っておくべき食事と栄養の話」連載中。