薬剤師のための心と身体のスタイル提案マガジン ファーストネットマガジン

薬学生のホンネ テーマ「実務実習」

薬学部が6年制となり、薬学生は病院・薬局で各11週ずつの実務実習を行っています。
2017年10月、第2期実習中の薬学部5年生の皆さんに「実習に行って感じていること」をざっくばらんに聞いてみました!
また、実習の受け入れ側であるセコメディック病院(千葉県船橋市)薬剤部長の長澤宏之先生にご協力いただき、薬剤師として・病院としてのご意見をいただきました。

城西国際大学5年生
(1期病院・2期薬局)

関 隼人さん

城西国際大学5年生
(2期薬局・3期病院)

五十嵐 哲太さん

城西国際大学5年生
(1期病院・2期薬局)

藤田 清花さん

城西国際大学5年生
(1期薬局・2期病院)

松原 征司さん

医療法人社団誠馨会セコメディック病院 薬剤部長

長澤 宏之先生

星薬科大学5年生
(1期病院・2期薬局)

海老原 奈々さん

星薬科大学5年生
(1期病院・2期薬局)

斎藤 勇太さん

薬局実習に行ってどうだった?

  • 1か月近く薬局実習をしてきて、業務に関しては頭打ちなのかなと感じるのと、薬局は薬剤師さんが少ないので、身近な人と自分を比べて安心してしまうような気がしました。病院実習では他の病院との連携や勉強会にも参加させてもらって、自分を鍛える場としては病院の方が良いのかなという印象です。

  • 五十嵐

    地域包括ケアシステムやかかりつけが制度として言われ、大学でも勉強してきましたが、実習先の薬局ではそこに対してあまり積極的な体験ができませんでした。勉強してきたことが実際に起きていると思って実習に入ったので、ギャップがありました。

  • 藤田

    私の実習先は病院門前なので、流れ作業のようになっていると感じることがあります。でも、薬剤師さんによっては薬が管理できていない患者さんと一緒に考えて、朝の分をまとめて入れるボックスを作ったりしていて、患者さんの一番身近で仕事ができるのはいいなと思いました。在宅患者さんのところへも行かせていただき、指導薬剤師の先生に「在宅に行くことは難しくない」とお話してもらったのですが、元々在宅に行くこと自体は難しくないと思っていたので…。在宅に行ってもっと積極的な取り組みができる薬局があれば、そういうところに勤めたいなと思いました。

  • 長澤

    在宅患者さんのところに行っても、薬を配達するだけという薬剤師も沢山います。本当はフィジカルアセスメントを行って患者さん毎に薬の効果を確認し、副作用の早期発見や受診勧奨をするのが理想ですが、現場の薬剤師は忙しくて勉強が後回しになっていたり、地域の研修会に行かない人も多い状況です。本当は薬剤師が介入したことで「患者さんがどう変わったか」、例えば入院率の減少や容体が安定して歩けるようになった、という視点を持つことが大切ですね。

  • 松原

    僕も門前薬局で流れ作業だと感じましたが、実習先の都合で行った別の薬局が在宅訪問投薬にとても力を入れていて、薬局でも勤める場所によって業務の内容や質が大きく変わるんだなと思いました。今病院実習に行っていますが、薬局の方が患者さんとの距離が近かったなと思って、それまであまり考えていませんでしたが、薬局もやってみたいなという気持ちが芽生えました。

  • 海老原

    実習中、薬薬連携の勉強会や歯科医師会の勉強会に薬剤師の実習生として参加させていただき、勉強してきたことが本当に起こっているんだと実感できました。意欲的な人が多い環境だと、薬局の仕事の幅もどんどん広がって面白いかなと感じています。

  • 斎藤

    新卒で薬局には入りたくないというのが率直な意見です。今は薬局の在り方が変わろうとしている時期で法規的にグレーな部分も多いので、一薬局の一薬剤師として入ってもできることが限られてると思っています。ただ、僕の実習先は処方箋1日80枚ぐらいで決して多くないのですが、調剤以外に色々なことをしていました。在宅はもちろん、学校薬剤師や井戸水検査、地域ケアプラザの多職種連携の会議にも参加させていただき、薬局としてできることの可能性を感じました。

  • 長澤

    薬局にネガティブな印象があるのは、「大学で学んできた理想」と「現場の業務内容」がかけ離れているからかもしないですね。本当は大学側も、行政が掲げている教育プランが実行できる施設を実習先として選びたいのですが、実習が義務化され、これだけ薬学部が増えた世の中で薬学生全員を受け入れてもらうために、大学側がお願いする環境になっています。だから、実習先での体験にも大きな差がでてきますね。

病院実習に行ってどうだった?

  • 病棟の薬剤師さんが何か気付いた際、すぐに電話で医師に処方変更の提案ができているのがすごいなと思いました。

  • 斎藤

    医師が薬剤師を信頼して、特に抗菌領域だと必ず薬剤師さんに確認を取っているのを見て、病院の方が薬剤師としての職能を発揮しやすいのかなと思いました。

  • 五十嵐

    僕はまだ病院実習に行っていませんが、医師との連携は病院で働く上でそもそもなくてはならないスキルなので、プラスアルファのところについて実習に期待しています。

  • 海老原

    実習中の医師への処方提案・変更で、私が言ったことでも処方に反映され、風通しの良さと薬剤師としての責任の重さを感じました。また、患者さんがその場にいらっしゃるので自分に時間があればずっとお話ができるし、何回でも会いに行ける点が良いなと思いました。

  • 藤田

    カルテで治療内容や病気の状況がわかるところが良いなと思ったのと、患者さんの状態からすぐに提案できるので、治療に関わっている実感ができました。でも、病院に来る患者さんは治療しようと思って来ているので薬の管理ができている人も多く、家族も協力的だと感じました。根本的には病院に行く前の人をもっと見ていかないといけないのかなと感じました。

  • 松原

    僕の実習先は大学病院で、まだ眼科の病棟にしか行っていないのですが、本日入院・当日手術・明日退院という回転の速さで、ほとんど患者さんと話せないなと思っているのが現状です。でも、患者さんの質問にすぐに答えられなくても、調べてまた来ますと言えるので、患者さんに納得してもらえるまでやり取りができるのは良いですね。

実習を経て、今考える就職先は?

  • 斎藤

    僕はMRを志望しています。実習中に複数の病気を併発している患者さんが入院され、薬を選ぶために文献を探しても中々見つからなかったのですが、MRの方からは症例に対する使用実績が聞けてとても参考になり、医薬品情報の大切さを再認識しました。併せて、MRは資本と人脈が得られるので、その先の視野が広がりやすいと考えています。

  • 海老原

    私もMR志望です。薬局実習で参加した薬薬連携の勉強会はMRの方が主催していたり、病院実習でメーカーに何度も問い合わせをしたり、持っている情報も大きく、それを医療に関係する色々な人に伝えるのはすごく大切なことだと思いました。あと、就職活動は企業が一番スタートが早いので、それに合わせて準備しておこうという気持ちではあります。

  • 松原

    僕も一番お金が入るという理由でMR志望でした。でも、薬局・病院実習、MRのインターンに行った中で、すべてにやりがいを感じました。僕の中で薬局・病院・MR・研究職の順で、薬局に行けば個人の患者さんと密に接することができ、研究職側に行くほど薄くなる。逆に、研究職は作った薬を使った人数分だけ救うことができて、薬局側に行くほど救える人数が少なくなる。やりがいをどこに置くかで自分の就職先が決まってくるのかなと思います。

  • 6年間で1000万円以上の学費をかけて、薬剤師でない方でもなれるMRになるのはもったいないと思っていましたが、皆さんのお話を聞いて、薬剤師がMRになることで更に活躍できる伸びしろがあるのかなと印象が変わりました。僕自身は病院か薬局かで迷っています。最初は病院に行って医師とのカンファレンスに参加するような環境に身を置くことで、自分を高めて経験を積んで、年を重ねたらそれまでの経験を活かして薬局へというキャリアプランをざっくり考えています。

  • 藤田

    私は患者さんと近いところで仕事がしたいので、薬局か病院で働きたいと思っています。病院実習では毎日違うことを習って楽しかったのですが、11週だけではわからないことの方が多く、実習の「楽しかった」だけのテンションでは決められないなと思っています。

  • 五十嵐

    今は薬剤師の世界を広く見ようと思い、薬の印字プリンターの会社等、一般企業を視野に入れて就活をしています。MRは給料も高く興味があります。ある程度お金がないと自分がやりたい時に挑戦できないということもあると思うので…ただ、医薬品情報をMRという「人」を介さなければならない時代があと何年続くのかという疑問もあります。将来的にはヘルスケアITや医療情報をネット上で管理するシステムを作るようなところで働きたいと思っていますが、そのためにもまずは現場に出た方がいいのかなと悩んでます。

  • 長澤

    みんなが偉いのは、最終的には患者さんを相手にする目的で薬剤師という職業を見ていることですね。今は学費を払って理想の世界を追い、知識・スキルを身につけていますが、それをすぐに100%活かせるところはほとんどないと思います。社会に出ると、「なんでこんなことやらされてるんだろう」という社会人として乗り越えるべき壁と、患者さんに不幸を与えてはいけないという医療者としての壁の2つの壁に当たることがあると思います。これを乗り越えるには、そこで働く強い意志が必要です。「自分の職場はここじゃなかったのかな」と思うことがあっても、意志をしっかり持っていれば、自分の視野が広がっていきます。自分が置かれているその環境で、薬剤師として役に立つにはどうしたらいいのだろうというステップアップにしてほしいですね。