至る所に史跡、寺院、風情溢れる町並みや路地裏がある京都はいつ訪れても魅了される。
闇雲に回るよりも、コースをしっかり決めて動く方が結果的に満足の高い旅になる。今回は南禅寺から哲学の道を抜け、銀閣寺へと続くコースに、お店を覗きながら、寄り道をしながら初秋の洛東を楽しんだ。
南禅寺。 絶景かな、絶景かな–歌舞伎「楼門五三桐(さんもんごさんのきり)」の中で天下の大泥棒、石川五右衛門が追っ手に詰め寄られ、南禅寺三門の大屋根から満開の桜を眺め、この「絶景かな、絶景かな」と見栄を切る場面でも有名。禅宗の1つ、臨済宗南禅寺派の大本山で、日本全国の禅寺の中で最も高い格式を持つ。
急な階段の三門の楼上へ登れば開放感抜群、京都の街並みが広がる。
大屋根の上でなくても、絶景かな。
境内の奥へ進むと法堂と国宝の大方丈、小方丈、方丈庭園があり右手奥には曲線が美しいレンガ作りの水路閣(水道橋)が現れる。
鎌倉時代に建てられた南禅寺に、明治の西洋文明を象徴するレンガ作りの水路閣が建てられた当時は相当なインパクトがあったはず。今では風格を纏う水路閣と歴史ある南禅寺とのコントラストは絶妙な空間で息を呑む。
水道橋の上に水路があり、その脇を歩くことも可能。流れをたどれば、蹴上(けあげ)発電所や桜の人気スポット、蹴上インクライン跡まで行くことができる。
南禅寺大寂門(北門)を出て、鹿ヶ谷通(ししがたにどおり)を3分ほど歩けばもみじの名所、みかえり阿弥陀如来を祀る永観堂が見えてくる。ここからもう少し歩くと哲学の道の始まり(終わり)だ。
哲学の道は琵琶湖疏水が完成した時に人工で造られた川に沿ってできた管理用道路だった。近くには京都大学もあり、文人たちがよく散歩をしていたので「文人の道」と呼ばれ、この道が好きだった哲学者・京都大学教授の西田幾多郎氏が思いを巡らせながら散歩していたイメージが定着。「思索の小径」や「哲学の小径」などさまざまな呼び名で人気を集めた。
昭和47年(1972年)に地元住民が保存運動を進め、「哲学の道」と命名。昭和62年(1987年)には「日本の道100選」にも選ばれ、ゲンジボタルが生息できるほど、水も綺麗だ。散歩をしながら川面を見てみると鯉や鴨が気持ち良さそうに泳いでいる。
早朝の哲学の道は、観光客もほとんどおらず静かで穏やか、歩いているだけで癒される。
いろんなお店が所どころにあり、そのうちの1軒、老舗のういろう店、五建外郎屋に立ち寄った。抹茶ういろセットを注文し、小川のせせらぎと静かな哲学の道を見ながら、ほっこり優しいひとときを過ごした。
銀閣寺に到着。哲学の道の終わり(始まり)が参道に繋がっている。道の両側にはお土産屋や飲食店が立ち並び、どの店も修学旅行生や観光客で賑わっている。
総門をくぐり銀閣寺垣と呼ばれる竹垣を抜け最初に目にするのが東山殿。8代将軍・足利義政は自身の後継争い(応仁の乱)が約11年も続いた結果、都のほとんどが焼けてしまい、後に出家する。焼けた浄土寺の跡地にこの東山殿を建てるのだが、1階の縁側が西側の京都市内に背を向けて建てられている。まるで義政の心を写しているかのようだ。
境内には向月台(こうげつだい)と銀沙灘(ぎんしゃだん)と呼ばれる、日本庭園では見かけない幾何学的な円錐形の砂盛りが目を引く。これらの砂盛りは江戸時代に造られ、月を観賞するためのものと、月の光を反射させて本堂を照らす役割がある、という2つの説があるがはっきりとしていない。ただ向月台、銀沙灘とも月に関することは確かなようだ。
タクシーに乗り込み、廃校となった小学校をリノベーションしたマンガの博物館へ寄り道をする。
● 清水寺(写真左)
「清水の舞台」で知られる本堂は、50年に一度の大改修中。2020年3月に終える予定でもこの人出!
年末の恒例行事、「今年の漢字」発表でも有名。
● 二寧坂・産寧坂(写真中央)
清水寺の参道として古くから賑わう二寧坂・産寧坂。土産物店が立ち並び京都らしさを存分に味わえる。
正式名称は「にねいざか」「さんねいざか」。
● 知恩院(写真右)
承安五年(1175年)、法然上人が「南無阿弥陀仏」の念仏の教えを広め、晩年を過ごした地に立つ浄土宗の総本山。
東山の自然に囲まれた境内は73,000坪。国宝や日本庭園など見所いっぱい。
京都国際マンガミュージアムは国内外の漫画に関する貴重な資料を集めた日本初の総合漫画ミュージアム。
江戸時代の浮世絵から明治・大正・昭和初期の雑誌や現在の人気作品、海外作品を含めて約30万点(2016年時点)が集められている。壁中を埋めつくす約5万冊のマンガ本を手にとって読むことが可能。
子どもからお年寄りまで老若男女、全ての世代がいろんなところで自由にマンガを読む姿を見られるのはここだけ。図書館並みに静かなことにも驚きだ。
著作権保護のため、撮影が許されるのは手塚治虫氏の「火の鳥」の巨大オブジェや外観などに限られるため、残念ながら館内写真は無いが、各フロアには素敵なギャラリーがたくさんある。中でも「マンガ家の手」は必見。イベント等で来館したマンガ家の手を石膏手型に残して展示されている。誰もが知っている有名マンガ家を含むその数、100名以上。ペンを持つ手型と自分の手をついつい見比べてしまう。
学校の匂いや歩くとギシギシ鳴る床、階段の雰囲気も懐かしい。紙芝居小屋にミュージアムショップ、お洒落なカフェなども併設され、1日中楽しめる心地いい場所だ。
夕暮れ時の鴨川。京都市内を南北に流れ、地元の方や観光客に親しまれている。
面白いのは「鴨川等間隔の法則」なるもの。カップルが隣のカップルと距離を空けて座る。間に別のカップルが入ると、自然と距離をもとのように空ける。こうして約5メートルの等間隔でカップルやグループが座るという法則だ。
この日も等間隔でたくさんの人が和んでいた。夕暮れの鴨川をゆったりと眺めながら、京都洛東の旅を終えた。
外国人、地元民、社員みんなに優しい薬局を目指して。
株式会社ファルコファーマシーズ ファルコ薬局烏丸御池店
髙山 尚久さん
一大観光地、京都の真ん中。外国人対応と町の特徴について
外国人観光客の方のご相談で多いのが便秘、不眠関係です。旅先でお通じが良くない、あるいは合わない水などでお腹を壊すことや、時差や緊張のせいか、眠りやすくなるお薬を買いにいらっしゃる方が多いです。
春と秋は鼻炎ですね。日本の花粉は海外の方にも思った以上に辛いようで、花粉症の薬を買いにいらっしゃいます。薬の成分は海外と共通しているので、「○○(商品名)が欲しい」ではなく、成分名を教えてくださる患者さんが多いです。
中国、韓国、スペイン……いろんな国の方がいらっしゃいますが、お互い英語は何となくできるので、拙いですが使う機会は多いです。“Prescription”は一番よく使う単語ですね(笑)
携帯型翻訳機は、さまざまな言語に対応していて、よく使う言葉をあらかじめ登録できるので非常に役立っています。最近は来られる方自身がスマホで翻訳されることもありますが、Wi-Fiが繋がらなくて使えない、ということもあるので助かっています。
それ以外では、このようなもの(写真参照)も活用しています。例えば、“insect bite(虫刺され)、の症状で来られる方がいるとして、この言葉は3つの意味に受け取ることができます。殺虫剤、虫除け、それとも刺されたから治療薬が欲しいのか? 同じ単語でも、どれが欲しいのか分かりません。そういうときに指してもらえるので便利です。英語、中国語の両方をカバーしていれば、今のところほとんどの方はどちらかで意思疎通ができますが、イラストを載せることでより分かりやすくなります。これからも増やす予定です。
地元の方については、この薬局周辺は二極化しています。中京区は古い町ゆえにご年配の方が多く、認知症などの慢性疾患をお持ちの方は長期に渡って通院されるため、顔なじみになることもあります。一方で、近所にある公立小学校の偏差値がとても高く、評判を聞いた教育熱心なご家族が集まった結果、小中学生やファミリー世代が多いというのが特徴です。
スキルアップに嬉しい豊富な支援制度と薬局の体制
研修認定薬剤師に関する研修費用などはさまざまな補助があります。
web研修については受講費を半額以上負担しています。また講習会の受講費の一部、薬剤師免許の更新手数料も会社負担です。その他さまざまな研修の紹介も行っており、スキルアップのための支援と機会提供は手厚いと思います。中でも、自宅でできるweb講習が人気です。
町の健康サポート薬局としては、3つの柱があります。1つはOTC。一般用医薬品をしっかりとジャンルに分けて販売し、説明をすること。お客様が相談に来られたときは、どういった症状かをしっかり聞き取って、そこから病気に結び付けていきます。それを参考にして適切な一般用医薬品をご提案していきます。ただ販売するのではなく、しっかりと根拠を持ち、専門の目で見て紹介するということが仕事です。
2つ目は受診勧奨と言い、病院を紹介するということです。例えば、頭が痛いと言って来店された方が実は片頭痛だったとします。その場合はいくら鎮痛剤のロキソニンを飲んだとしても、一時的には楽になるかもしれませんが根本的な治療にはなりませんよね。このような場合に、片頭痛の専門医を紹介してあげます。そのため、地域の病院がどのような特徴を持った病院なのかを把握していることが大切です。適切な治療が受けられるように、患者さんに適した病院をご紹介します。
3つめは情報発信です。セルフメディケーションや受診勧奨ももちろん大切ですが、そもそも病気にならないことが一番望ましいですよね。一時期、食べる順番ダイエットというものがすごく脚光を浴びました。あれは薬剤師の目から見ても素晴らしいダイエットですが、そういうことをまだご存じない方は非常に多いです。知っている人は知っているが、知らない人も多い。ちょっと知るだけで生活が便利になったり健康になったりする豆知識を、できるだけ病気になる前にお伝えすることが大事です。
ただ薬の説明をするだけの時代は終わり、病気や薬ではなく「人」を見ていく時代になっていっていると思います。
求める人物像と若手薬剤師に向けたメッセージ
求めるのは、人間力が高い人。自分の家族や友人ではない、来ていただく方と仲良くできその人に寄り添えるかどうかが大事です。自分以外の人を他人事として見るのではなくて、その人も自分と同じように楽しいことも辛いこともあって生きているのだ、と共感できる力は必要ですね。スキルは後からついてきます。
私はよく新入社員を励ますとき、赤の女王仮説を引用することが多いです。“その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない。もし他の場所へ行きたければ、その倍走らなければならない”。
恐らく、薬剤師を目指される人の中には安定したいという気持ちを持っている人もいると思います。そのことは全く否定しません。ただそのために、薬剤師に限らずどんな仕事の人でも、全力で走って(=働いて)やっと今の生活を維持しています。そして人とは違うことがしたい、人よりも上に行きたいと思うならば、全力の更に倍を走らなければいけません。これは一生続きますが、世の中の働いている人たちはみんなそうしているんですよね。学生さんであれば、国試合格がゴールではなく、そこからまた人生が始まるので、戦って走り続ける覚悟をして社会に出てほしいと思います。
●取材協力/ ファルコ薬局烏丸御池店
京都市中京区御池通柳馬場西入ル御所八幡町231
TEL:075-741-6181(代表)