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黒川眞妃子先生の薬膳レシピ 20 不眠対策 高野豆腐と百合根、ナツメの卵とじ

材料(4人分)
高野豆腐・2枚、百合根・1個、乾燥ナツメ・4個、卵・2個、三度豆・2本、出汁・500㏄、酒・大さじ1、砂糖・大さじ1、醤油・大さじ1/2、塩・少々
作り方
  • 百合根は一枚ずつほぐしてよく洗う。三度豆は斜めに薄くスライスする。
  • 鍋に出汁を沸かし、乾燥ナツメを入れて5分ほど煮る。
  • 2.に酒、砂糖、醤油、塩、高野豆腐を加えて15分ほど煮る。
  • 3.が煮えたら百合根を加えて2分ほど煮て、更に三度豆と卵を割り入れて蓋をして3分ほど煮る。
効能
精神不安や不眠に有効なナツメ、百合根とトリプトファンを多く含む高野豆腐を合わせた不眠対策に嬉しい一品です。

「不眠症と薬膳」

日本の成人の5人に1人は、布団に入ってもなかなか眠れない、朝早くに目が覚めてしまう、ぐっすり眠った感じがしない、全く眠れないなどの不眠症状を感じていると言われています。
不眠症は古典の中にも記載されており、『黄帝内経』には「胃気が不和になると寝ても安らかでない」とあり、また『景岳全書』には「精神が安定すれば安眠でき、精神が不安定だと睡眠も不安定となる」とあります。不眠症の薬膳を考えるときはどんな不眠なのか? と随伴症から「心脾両虚タイプ」「心腎不交タイプ」「肝火タイプ」「痰熱タイプ」の4つにタイプ分けをして考えます。

「心脾両虚タイプ」は、寝つきが 悪い、夢を多く見る、すぐ目が覚めるなどの不眠の症状に加え動悸や健忘、食欲不振や胃脘部の痞(つか)えなどの症状が表れます。このタイプは胃腸がもともと弱いか、過度の思慮や心労から胃腸の働きが弱くなり気血を補う力が弱いタイプです。胃腸の働きを高める味噌、麹、納豆、芋類、豆類、南瓜、百合根、蓮根などと血液増加に働くほうれん草、鯖、鰯、赤身肉、卵、ベリー類の組み合わせがお勧めです。

「心腎不交タイプ」は少し眠ると目が覚める、また早朝に目が覚めてしまう不眠症状に、イライラ、動悸、寝汗、驚きやすい、口や喉が乾く、耳鳴り、健忘、腰や膝のだるさなどの症状が表れます。このタイプは加齢、性生活の不節制、慢性疲労などから体内を潤す水分が不足したタイプです。
イカ、牡蠣、スッポン、貝柱、海藻類やネバネバした野菜、黒色、紫色の食材、苦瓜、せり、百合根などを積極的に摂りましょう。

「肝火タイプ」はなかなか眠れない不眠症状に、イライラする、怒りっぽい、頭痛、めまい、目が赤い、脇痛、口が苦いなどの症状が表れます。このタイプの人は緊張や社会、環境、人間関係からの過度のストレスで自律神経が警戒状態に入って交感神経の働きが優位に立っています。セロリ、せり、ミント、春菊、ハーブなどスッキリした香りの食材や緑茶、苦瓜、山菜などの苦み野菜で熱を鎮めましょう。

「痰熱タイプ」は眠りが浅い、何度も目が覚める不眠症状に上腹部の痞え、げっぷ、舌苔(ぜったい)が黄色くベタベタしているなどの症状が表れます。このタイプの人は暴飲暴食、偏食などの食習慣を見直すことが大切です。油ものや甘味料、アルコールを控え、消化促進効果のある大根、パイナップル、トマト、サンザシ、発酵食品や体内の余分なものの排出に働く昆布、わかめ、筍、ごぼう、蒟蒻、海藻類などが良いでしょう。

睡眠は身体や精神的疲労の回復、成長ホルモンの分泌にも重要です。
軽い運動や寝室の室温や明るさにも気を配り快適な睡眠から明日の身体と心を作りましょう。

黒川 眞妃子氏プロフィール
黒川 眞妃子 氏

経歴

おばんざい料理店経営のち、国際中医薬膳管理師、国際薬膳調理師を経て国際中医師に。現在医療学院薬膳講師の傍ら「関西薬膳びと」「国際ウェルネス薬膳協会」を立ち上げ市民大学講座、鍼灸学院薬膳セミナー、企業様薬膳研修セミナーや薬膳調理実習会、産科病院での産前、産後食セミナー、幼稚園での薬膳給食献立。その他飲食店 薬膳メニュー開発、薬膳コラム執筆など。
食べることは生きること……食卓に昇る「おばんざい薬膳」普及に奮闘中。

資格

国際中医師、国際中医薬膳管理師、国際薬膳調理師、中医薬膳指導士、食育インストラクターSecond Grade

執筆

大阪人「祭りのときの食養生」、フェリエ「キッチンからのラブレター」連載、ママ育コラム連載、「お出かけ帖」料理ページ担当など多数。

メディア情報

TV:朝日放送 おはよう朝日です/ 大阪テレビ なにしょ
ラジオ:原田伸郎 のびのび金曜日

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