福岡県北部に位置する北九州市、直方市を訪れた。石炭の採掘や製鉄で繁栄し、明治、大正、昭和の時代を駆け抜け日本の産業革命の中心地の一つで、経済を大きく牽引した。
当時の隆盛を極めたモダンな建物、活気に満ち溢れた市場など今もそこに暮らす人々の日常であり、そのレトロな佇まいは老若男女に人気な観光地として注目されている。
到津の森公園は北九州市小倉北区にある動物園で、福岡県でも人気が高い。周辺の自然を生かし、動物の生息地に近い環境を整えている。また、何と言っても可能な限り檻を無くすことにより動物との距離が近いことも魅力。
園内には、ゾウやキリン、レッサーパンダなど愛嬌たっぷりな動物たちが約100種、500点が暮らしている。訪れた日は秋晴れで、幼稚園児や小学生などたくさんの子どもたちが遠足に来園し、あちらこちらで歓声が聞こえた。ハロウィンの飾りも手作り感があり、おもてなしも十分。居心地良い何度も訪れたくなる公園だ。
旦過市場。JR小倉駅から続く京町銀天街、魚町銀天街の商店街を約10分歩いた先にあり、入り口から一気に昭和のレトロな感じが漂う。120店舗ほどが軒を連ねる長屋式の商店街は、鮮魚・青果・精肉・惣菜などを扱う店が並ぶ、古くからの北九州の台所だ。
始まりは大正初期で100年以上の歴史を持つ。昭和30年代(1960年代)に建てられた木造建築物が今も密集し、その路地裏は当時を時代設定にした青春映画「初恋」(2006年公開、主演/宮﨑あおい)の撮影ロケが行われるほど昭和の香りが色濃い。
名物のイワシやサバの「ぬかみそ炊き」、すり身をパンで巻いて揚げたカナッペは是非食べておきたい一品。
どのお店も歴史を感じさせ、若い世代には新鮮に、40代以上の人には懐かしく感じる素敵な市場だ。火災や豪雨による浸水被害など、近年は再開発の声もあり、この姿を見られるのは今のうちかもしれない。
門司港は明治から昭和初期にかけて栄えた街、旧門司市の港町。 明治時代は石炭を扱う、国の特別輸出港に指定されてその名を馳せた。大正3年に門司駅新駅舎、現在の門司港駅が完成。大陸貿易も盛んで満州などへの貿易船や客船で賑わい、神戸、横浜に並ぶ日本三大港の一つとして数えられた。終戦とともに大陸貿易が縮小し、石炭の輸出も減り、次第に衰退。その後、門司港は官民が協力し、1995年に『門司港レトロ』として再生された。今では年間200万人以上の人が訪れる観光地として親しまれている。
日本で鉄道駅舎として初めて国の重要文化財に指定された門司港駅は約6年の歳月をかけた耐震補強、修理工事も2019年に完了し、大正時代の創建時の姿が甦った。駅舎内のカフェや食堂への入口もご覧の通りのレトロゴージャス。周辺には登録有形文化財に指定された旧大阪商船、旧門司三井倶楽部、旧門司税関などレトロな建物がさまざまな施設となり、現役で活躍していることに驚きだ。
港も美しく整備され、ハーバーデッキや日本最大級のはね橋・ブルーウィングもじ、飲食店やお土産などのショップが入る海峡プラザ、広場など憩いの場所が港一面に広がる。
地上103m、門司港レトロ展望室からの眺望も◎。マンションの最上階にあり関門橋や対岸の山口県下関市、日本海まで見渡せる。
そして、門司港発祥のご当地グルメ、焼きカレーは愛され続けて半世紀以上。焼きカレーMAPもあるほどお店も多いので、これは外せない。
レトロ情報をもう一つ。ここ、門司港駅近くの桟橋通り付近が、バナナの叩き売り発祥の地なんだそうだ。それもあってか、港ではバナナマンなる門司港のマスコットにも出会えた。
直方市石炭記念館は、本館、別館、石炭化学館の3つから構成され、それぞれ貴重な資料が展示されている。筑豊の石炭採掘の技術、歴史など幕末から明治以降にかけて日本の近代化への道筋が決定づけられた、重要な会議が行われた場所だ。
敷地には大正14年にドイツから輸入された炭鉱専用の蒸気機関車、コペル32号や、昭和13年に日本車両で製造されたC11蒸気機関車も展示されている。黒く力強い蒸気機関車の佇まいには終始圧倒されるとともに、鉄道オタクはテンションが上がってしまう。
館内には日本最大級の2トンもある石炭の塊やジオラマ、炭鉱や石炭にまつわる豊富な資料に引き込まれていく。館長のお話も楽しく夢中になった。
今回は立ち寄ることができなかったが、隕石が奉納された珍しい神社、須賀神社が直方市にある。興味深いのはその隕石が、人類史上最古の目撃記録が残り、科学的に鑑定・認証された隕石だということ。隕石が収められた桐箱の炭素年代測定法による鑑定等を経て、平安時代の貞観年間に地球に落下した隕石であると認証された。
※他に、江戸時代の寛延年間に落下したとする研究も存在。
平安時代に落下して以来、ずっと神社に納められ大切に守られてきた世界最古の記録を持つ隕石、それが「直方隕石」。普段はレプリカが展示され、5年に一度の10月に開催される御神幸大祭で実物が特別公開される。次回は2021年、まさに今年がその年だ。
石炭から石油、セメント、ケミカル工場へと姿を変えながら、また鉄鋼など北九州の工業は今も日本の産業を支え続け発展している。昭和、大正、明治、幕末へと歴史を遡りながら、平成、令和へ引き継がれた今を同時に楽しめる貴重な旅だったと、美しい工場夜景を眺めながらふり返った。
ハードもソフトもハートも提供。異業種要素をミックスさせた、新しい薬局提案のかたち。
有限会社クリエイトホーム(ハート薬局) 代表取締役
中山 将太さん
先代が建築業。まったく畑違いの薬局業を展開することになった経緯と苦労。
薬局業参入のきっかけになったのは、父が仕事で知り合ったドクターから調剤薬局の運営を依頼されたことでした。「建築しかしたことがないのにどうやって??」と思いましたが、「あなたなら信頼して任せられる」と言わしめる人付き合いの良さが、代々受け継がれているようです。「薬局のことはよく分からないから、薬剤師に聞こう」といった感じで、いろいろとお話を聞かせてもらった薬剤師から別の薬剤師を紹介してもらい、その彼らと一緒に薬局1号店をオープンしました。現在もそうですが、先代も私も自身が薬剤師ではないので、薬価の改定や法律が変わっても正直どんな影響があるのかよく分からず、ジレンマを感じることがあります。ですがそこもやはり、とにかく人に話を聞いています。分からないこと、できないことは仲間に頼ります。
反対に、異業種であることが良く作用していると感じること。
薬局を経営している建築会社は全国的に見てもかなり少ないと思っていて、これは最大の特徴だと考えています。薬局業に携わる中で自然と身についている知識もあるので、例えば薬局の新設を考えているドクターには一建築会社以上の提案が可能で、それが信頼に繋がることがあります。
薬局開業オールインワンサービス「ナイスキューブ」について。
プレハブやコンテナを使ったユニットハウスを薬局の建物として提供し、薬局開業の申請代行、棚卸し代行、HP や販促ツールの制作まで行える薬局開業オールインワンサービスです。今日ここにいる3名と、もう1名コピーライターの4名で運営しています。
立ち上げを計画し始めたのが2019年の11月で、きっかけは、当社の調剤薬局のうち1店舗が門前クリニックの移転に伴い移転することになったことでした。薬局新設となるといろんな申請や手続きにとても時間を使うので、自分ならそれをお金を払ってでも誰かにやってほしいという気持ちがあり、また、そもそもまだ開局数年しか経っていない薬局(建物)を取り壊してまた建設する費用がもったいないとも感じました。そこで「薬局の建物が移動できて、申請の代行もできたらいいんだ」と思いつきました。加えてこれからの時代は薬局のHP 作りやリーフレットなどの販促ツールも重要だと感じたので、ナイスキューブでは建物の建設だけでなく、開業にあたって必要なあれこれを一括で引き受けられる事業としました。もちろん、建物だけ、申請代行だけ、という部分的な利用もOK です。
昨年4月に本格的に始動しましたが、ちょうど新型コロナウイルスの流行の真っ只中でした。緊急事態宣言が発令され、世の中のいろんなことがストップし医療現場がひっ迫していく中で、自分たちに何かできないかと思い、ユニットハウスを使った発熱外来を医療機関に勧められるのではないかと岡村さん(下部写真参照)から提案があり、すぐに医療機関への提案に向けた準備を始めました。この発熱外来は医療機関向けには「コンパクトキューブ」という名称で本格的に案内を開始し、約5か月で10件以上の申し込みを頂きました。設置させていただいている医療機関からは喜んでいただけていて、クリニックの中には「この病院はきちんとしているね」と患者さんからのお声があったそうです。
今後の展望について。
調剤薬局は斜陽産業と言われていますが、薬を出すだけで終わらず、“ 薬局だからできること”はまだまだあると思っています。今までは患者さんの処方せんに服薬指導をするだけで十分だったのが、これからは同業や地域と深く繋がり、いろんな業種とも繋がっていくことで拓ける可能性があると思います。ナイスキューブに関わる薬局も当社もそうですが、将来残っていける・選ばれる薬局に。そのためには地域に根差すこと。どのように地域に根差すか? 地域に本当に必要とされる薬局づくりをこれからも考えていきたいと思います。
ハート薬局は現在全5店舗、8名の薬剤師が在籍しておりますが、新店舗がオープン予定のため新しく仲間になってくれる方を募集しています。自分が選んだ道に誇りを持てる人、野望がある人をお待ちしております。当社ではドクターとの繋がりや、開業に向けた情報やノウハウを持っているので、将来独立を希望される方には全力で経営のサポートをさせていただきます。“ 選ばれる薬局”を目指しながら、調剤薬局業だけにとらわれず、いろんなことに一緒にチャレンジできる人を歓迎します!
「ナイスキューブ」運営メンバー。
左から中山将太さん/有限会社クリエイトホーム(設計・施工)、岡村信二さん/ビッグアイランド株式会社(申請代行・システム導入運用・棚卸し代行)、田中謙臣さん/LOOLY(販促物デザイン)、田中大貴さん/異彩(企画・広報業務)
●取材協力 / 有限会社クリエイトホーム
直方市感田1388-1
TEL 0949-26-4149(代表)