マナーのこと |
好かれる新人薬剤師になる! 医療マナーのすすめ
【はじめに】マナーはなぜ必要?
春から薬剤師になられる皆さま、おめでとうございます! 長く大変な勉強が終わって、晴れて薬剤師として社会人の仲間入りですね。
医療従事者として、いち社会人として、マナーを身につけることは非常に大切です。医療マナーの極意は、実は身近な「患者」という言葉に隠されています。
病気を意味する「患」という漢字、「心に串が刺さっている」と読めますよね。この心の串を抜くことが、我々医療従事者の仕事です。
「串」は、身体的な気掛かり、精神的な不安、情報不足、環境の悪さ……など、人によってさまざまです。そんな患者さんを元気にするためには、単に治療や薬の説明だけでなく、マナーをわきまえて気持ちの良いコミュニケーションを図れることが不可欠です。
また、社会人としてのマナーは礼儀作法であり、相手を思いやる言動・行動、お互いが尊重しあうための知恵と手段でもあります。違う環境の人どうしが安心して活動でき、それぞれの能力を生かすために、大切なものなのです。
マナーはたくさんあるので、今回は、ひとまず入社までに押さえてほしい5をつお伝えします。ぜひ参考にしていただき、初日から気持ちの良いコミュニケーションが取れるように準備しましょう!
教えてくれるのは
栗田 瑠美子さん(医療マナー講師/薬剤師/メディカルスキンアドバイザー)
患者様のために薬局ができることを追求し、医療マナーと融合させた実践的な研修を行う。大学や専門学校をはじめ、医療機関、介護施設やハローワーク委託訓練など多方面で講師を務め、現場経験に基づいた研修に定評がある。
<研修内容>
・医療におけるマナーと患者接遇・新人研修
・3秒でつかむ5分ファンにするコミュニケーション術
・働くモチベーションアップ
・チームとしてのスタッフ間コミュニケーション
・薬局を支えるアシスタントスキルアップ
ほか
①現場の声に学ぼう
まずは、若手薬剤師の言動に不快な思いをしたことのある患者さんや先輩薬剤師さんのリアルな声をお届けします。できればこんな風に思われたくはないもの。なぜそう思われてしまったのか、どう対応したらいいのか、まずは自分事としてしっかり考えてみましょう。
<患者さん’s VOICE>
- 先輩の前では丁寧な話し方なのに、スタッフ同士だと突然友達言葉になっていてびっくりした。
- 言っていることはわかるけど、その言い方が失礼でしょ。
- 自分よりもずっと若いスタッフに子供のように扱われて傷ついた。もう話したくない。
- 質問されたことに自信がないなら答えないでほしい。
<先輩’s VOICE>
- 患者さんからいろんなことを学んでほしい。
- 話をちゃんと聞いているのか分らない。
- ミスを指摘すると言い訳ばかりする。
- 年上の人への言葉遣いができていない。
- できないことがあるとすぐに「向いてない」「合ってない」「辞めたい」などと言う。
- 無断で遅刻や欠勤など。最低限の社会的ルールやマナーを、まず身につけてほしい(例えば、急な休みのときは電話で伝えること。メールで携帯に送られても見ていないので)。
②まずは笑顔!
「当たり前では?」と思う方もいらっしゃると思いますが、意外と落とし穴でもあるコミュニケーションの基本の“キ”。
特に昨今は新型コロナウイルス対策で四六時中マスクをしているので、表情を読み取れるのは目だけになります。ですが、目だけで笑うことはできません。マスクの中でも口角を上げて、表情筋をしっかり使って笑顔を作ることが重要です。笑顔は共鳴して、自分も相手の心を豊かにできる最高の武器なので、苦手な方はちょっとずつでもトレーニングしてみましょう!
<笑顔のトレーニング>
口を大きく開けて「おーはーよーうーげーんーきー」と言ってみましょう。
③挨拶
感じの良い挨拶とは、相(あい)手を察(さつ)する気持ちからするものです。笑顔同様、いち社会人としてマスターしておきましょう。
<挨拶のコツ>
あ……明るくアイコンタクト
い……いつでも
さ……先に
つ……続けて一言(例:「今日もいい天気ですね」「昨日はお疲れ様でした」など)
④身だしなみ
第一印象は最初の6秒で決まると言われています。第一印象が良いと、患者さんや同僚からの信頼につながり、さらにそれが仕事の楽しさにもつながるなど良いことずくめです。
相手に好印象を与えるには、身だしなみが重要なポイントです。家族や友達に客観的にチェックしてもらうのもおすすめです。
<医療従事者の身だしなみポイント5つ>
① 清潔であること
② 動きやすいこと
③ 調和がとれていること
④ 落ち着きがあること(=安心感と信頼感)
⑤ 安全であること
具体的には
■服装……職場で決められたものを着用する。下着は色やラインが透けないものを。
■靴、靴下……色味を限定する。柄物や汚れているものはNG。
■アクセサリー、香水……つけない。制汗スプレーを使うときは無香料のものを。
■化粧……肌を守るためのスキンケアであるという意識で、健康的に見えるメイクを心がける。
■髪の毛……顔にかからないよう、すっきりと束ねる。※前髪が長いと暗い印象になってしまうため注意! 髪の色は会社のカラー見本で確認しましょう。6番、7番くらいが無難です。
⑤お辞儀
お辞儀にもパターンがあります。使い分けることで、相手に良い印象を与えましょう。
①会釈(シーン:廊下ですれ違うとき・入室、退室時など)
立ち姿から中指の二節分程度(5~6センチ)が膝頭に向かって下がる。
しっかりと腰を後ろへ突き出すようにし、首を曲げずに、少し上体を傾ける。
②敬礼(シーン:「おはようございます」「お大事にどうぞ」)
太ももの真ん中に手の平が下がるよう上体を倒す。しっかり腰から曲げ、ごく自然に背中が軽くカーブする。
③最敬礼(シーン:「ありがとうございます」「大変申し訳ございません」)
中指がひざ頭につく、約45度の深さの礼。感謝やお詫びの意を表す。最も深く上体を倒すので、ゆっくり三呼吸ほどの速さで礼をする。
⑥報連相
組織におけるコミュニケーションの基本ルール、「報告」「連絡」「相談」です。
組織とは、同じ目的を持った集団のことです。目的を達成するためにも、報連相をきちんとできることは最も重要かつ最大の社会人マナーと言えます。最初は緊張するかもしれませんが、丁寧を心がけて頑張りましょう。
【指示を受けたら】
名前を呼ばれたら、すぐに返事をする。
〇「はい、お呼びでしょうか」「はい、ただいま参ります」
×「はいはい」「は~い」
どうしても手が離せない場合……
「はい、申し訳ございません。この~~が済み次第すぐに参ります」
指示にはメモを取り、確認する。5W2Hを意識して!
- Who(誰が) 例:担当は〇〇さんですね
- When(いつ) 例:〇時までに準備すればよろしいですね
- Where(どこで) 例:〇〇にお届けするのですね
- What(何を) 例:〇〇の件についてですね
- Why(なぜ・目的) 例:〇〇のための資料ですね
- How to(どうやって) 例:前回のものを参考にすればいいのですね
- How many/much(どれくらい/予算) 例:〇部(〇円分)用意すればいいのですね
【報告するとき】
- 事実をありのままに述べる
- 推論を避ける
- 報告点を先に述べる(結論を先に)
- 経過や理由は後で簡潔に話す(悪い内容ほど早く)
- ポイント① 自分の意見と報告内容を混同させない。
→「これは私の意見ですが・・・・・・」と前置きする。 - ポイント② 悪い報告ほど早く伝える!
→例:「大変申し上げにくいのですが」「今回は残念ながら」「力不足で申し訳ありません」 - ポイント③ 報告が遅れる場合には「中間報告」
→例:「〜の件ですが、まだ結果が出ておりません。現在はここまで進行しております。」