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今月のPickUpファーマシスト

第18回 金子穂香(かねこち)さん(オンライン講師)

今月のPickUpファーマシスト

さまざまに活動、活躍されている薬剤師&薬学生の方のインタビューをたっぷりお届けします!

金子穂香(かねこち)さん

2022年都内某薬学部卒業
第107回薬剤師国家試験合格

低学年時、勉強がうまくいかず切羽詰まっていたところ、ひょんなことから勉強法を変え学年上位の成績常連に。
「同じように辛い思いをしている学生をサポートしたい」という想いから、大学卒業後は主に薬学生のオンラインサポートに従事。

勉強の仕方を変えて、学生生活が一変。

―金子さんのお仕事内容と1日のスケジュールを教えてください。

 

主に薬学生を対象に、勉強方法や具体的な勉強のサポートをオンラインで行っています。

サポートは全学年対応していますが1年生と6年生が特に多く、浪人生の方もいらっしゃいます。SNSで見つけて登録してくださった方や、すでにサポートを受けている方からの口コミで知ってくださった方が多いようです。

特に1年生は再試や留年率が高いので、そうならないためのフォローや、そもそも授業についていけないという方の相談に乗ることが多いです。勉強そのものというよりも、勉強計画やメンタル面のフォローが中心です。

 

大学の授業がある平日日中はSNSの運用やサポートシートの作成、記事の執筆などを行っています。授業が終わりはじめる17時あたりからサポート依頼が入り始め、以降は個別に電話やチャットでの対応を行います。土日は朝から対応することもあります。

 

電話サポートは1人1時間ほど、繁忙期は17時から23時頃まで対応し続けることもあり、それが終わった後に学生さんごとのフォローシートを作成したりすることもあるので、夜は遅めです。SNSの投稿内容を夜中に考えることもあります。

この事業を始めて2年半ほど経ちますが、とても楽しいですね。

学生さんから「成績が上がった」「テストの点数が上がった」と言っていただけるのが嬉しいです。

 

―勉強で悩んだり困ったりしている薬学生のサポートをされているとのことですが、金子さん自身はどんな学生生活を送られていましたか?

 

サークルにも入ってアルバイトも経験したので、結果として大学生らしいキャンパスライフは謳歌できたかなと思います。総合大学だったので、いろんな人と関わることができたのも良かったです。ただ初めからうまくいっていたわけではなく、むしろ1~2年生の間はかなり大変でした……。

 

もともと大学の進路選択が消去法で、文系科目が壊滅的に苦手、数学が好きだったという理由から安直に理系を選択し薬学部へ進むことにしました。調べる中で薬剤師に興味が沸いていったというのも確かですが、動機がそんな感じだったので、入学当初は本当に後悔しました(苦笑)。あんなに暗記が多いとは思っておらず、絶望しましたね。

勉強が大変すぎてバイトもほとんどできず遊ぶためのお金を貯められなかったので、テストが終わっても遊べない状態でした……。

 

そんな生活が変わるきっかけになったのは、3年生で一人暮らしを始めた頃でした。ある友人と一緒に勉強するようになったのですが、同じ時間を過ごしていても、その子のほうが明らかに勉強の進度が速いことに気付きました。薬学部生は徹夜で勉強をしがちなのですが、その子はしたことがなかったみたいです。

私はというと、1日10時間勉強したり、学校から帰って徹夜したり……明らかにその友人よりも勉強に時間をかけていたのに、成績はイマイチ。その友人から勉強の無駄を指摘されたことがきっかけで、自分の勉強法を大きく見直すことになりました。

 

―それが、現在の金子さんの事業に結びついているということですか?

 

そうですね。それがきっかけで成績がかなり上がったので、このサポート事業を始めた当初は学生さんに「勉強」そのものを教えようと思っていました。

でも、学生さんの悩みを聞いていると、勉強そのものの相談ももちろんですが、勉強法についての悩みの方が多くて。私自身が勉強法を変えてうまくいったので、そちらの相談を中心に始動することにしました。

ただ、その勉強法が私にだけ有効なのかもしれない、相性があるかもしれない、と思ったので、勉強法や脳科学についての書籍もいろいろと読み込みました。

 

結局、どの書籍でも伝えられていた本質はほとんど一緒で、自分の勉強法もそれらに合っていたので、独自の勉強法と本から学んだことをブラッシュアップして教えているイメージです。長記憶・短記憶はどういった基準でそうなるのか、定着のしやすい方法など……海外の大学の研究結果に基づいた報告を読んで、それを薬学部らしい学習の形に落とし込んでいます。

 

―その勉強法に変えてから、金子さんの学生生活は具体的にどう変わりましたか?

 

1~2年生のうちは勉強に追われ、なかなかバイトに入れなかったので、出勤するたびに新人みたいな感じだったのですが(笑)、3年生で始めた新しいバイトがすごく楽しくて、勉強法を変えてうまくいくようになったからたくさんシフトに入ることができましたし、「バイトに行きたいから勉強を頑張ろう」というモチベーションにもなりました。

それまでは”バイト=成績が落ちる”という印象だったのが、反対に3年生ではシフトに入れば入るほど時間の使い方が上手になると実感しました。月3,000円しか稼げていなかったのが、月10万円近く稼げるようにもなりました。ほかの薬学生よりはかなり多いほうじゃないでしょうか。

 

おかげで、憧れだった海外旅行にも行けるようになりました。低学年のときは他学部の友人が海外旅行に行っているのがすごく羨ましくて、「薬学部に入っていなかったら行けていたのになあ」と後悔していましたが、勉強がうまくいくようになった3年生からは、春休みと夏休みは1か国ずつ行けるほどになりました。

 

サークルでも2~3年は幹部をやっていました。テスト前はさすがに大変でしたが、バイト前の15分に集中して勉強をするなど、隙間時間をうまく活用していました。

両立のために詰め込んだ生活ではありましたが、結果的にかなり充実したキャンパスライフを送ることができたと思います。

 

 

“自分にしかできないこと”で起業の道へ。

 

―就職するか、起業するのか。卒業後の進路はどの時点から考えましたか?

 

4年生頃でしょうか。実務実習に行くタイミングで、薬剤師自体に否定的な気持ちはまったくありませんでしたが、それ以外にもっとやりたいことがあるなと感じていました。海外に行くことがその一つでした。

薬剤師になるという選択も当然ありましたが、「薬剤師という資格があるからこそほかのことにチャレンジできるんじゃないか?」と思い、薬剤師免許を取りつつ、ほかのやりたいことをやってみたいなと、4年生頃から考えていました。

 

ほどなくしてコロナ禍になったので結局海外には行けませんでしたが、薬剤師以外の就職先を考える中で「自分にしかできないこと」を模索しました。そこでフリーランスという働き方を知り、いろいろ調べる中でビジネススクールを運営している企業とご縁があり、「成績が良いなら勉強を教えてはどうか?」と助言を頂きました。

ちょうど私自身国試の勉強もしていかないといけないタイミングで、人に教えることが知識が一番定着するということを知っていたので、教えながら自分の身にもなる活動ができるのではないかとも思いました。

 

―それが薬学生のサポート事業という形で3年近く続いているのですね。やりがいは感じていますか?

 

はい。これまで累計250名ほどのサポートをさせていただいたのですが、正直これほど大きくなるとは思っていませんでした。人に教えつつ、自分にとっても嬉しい‟知識の定着”を期待してのスタートでしたが、こんなにたくさん悩んでいる薬学生がいて……なんなら薬剤師になった後も悩んでいる方がいるのだなと驚きましたし、言われてみれば、私も1年生のときに再試がしんどすぎて親に薬学部を辞めたいと泣き言を言ったこともあったので(苦笑)、みんな悩みは同じなんだと実感しました。

 

私は運良く勉強方法を確立してストレートで卒業し、国試にも合格できましたが、友人の中には留年してしまった子や退学して音信不通になってしまった子もいます。もしその子たちをサポートしてあげられていたら、ひょっとすると留年せずに国試にも受かって、今でも仲良くしていたのかなと後悔しています。なので、今まさに勉強法で悩んでいる学生さんたちを助けたいなと思っています。

 

―事業における課題はありますか?

 

私はフリーランスで、学生さんから見ればただのSNS上の人物なので……学生の親御さんから不審に思われてしまうみたいです。YouTubeなどで顔も出していますし、しっかり説明させていただいたうえでサポートを希望される学生さんは多いのですが、その費用を出すことになる親御さんからの了承が得られない方がけっこう多くて悔しいですね。

もっと活動を頑張らなきゃいけないと思っています。

 

―そんな親御さんと直接やりとりをする機会はないのですか?

 

電話で直接お話をすることはあります。お話しすると納得していただけることが多いのですが、そもそもそこまで至れるかどうかがカギですね。一度、サポートを希望されている学生さんとの電話中に親御さんが入ってきて、電話を切られてしまったこともありました。大手の予備校や運営母体が大きい企業だと理解してもらいやすいのかもしれませんが……これはフリーランスならではの悩みかもしれません。

 

―具体的なサポートのプランなどについて教えてください。

 

今後内容を変更する可能性はありますが、単純に勉強を教えるのではなく、学生1人ひとりに合わせたコーチングをメインとしています。

 

主に

・電話での相談や質問、添削や特別セミナー

・効率的な勉強方法に関するテキスト

・一人ひとりに合わせた勉強計画作成

を行っています。

 

また参加者さん主体の勉強会や交流会もあり、いつでも相談や質問をできるので、勉強できる環境が整います。

 

お値段やプランは参加される方の希望にそったカリキュラムのため、一人ひとり異なりますが、大手予備校だと~集団授業・1年でトータル100万円くらいの受講料がかかったり、1回の電話相談で数千円の料金を設定しているところもあるので、比べていただくとかなりリーズナブルかと思います。

 

今現在で、サポートしている人数は累計で250名を超えました。さすがに私1人で全員をサポートすることは難しいので、現役薬剤師の方10数名にサポートスタッフとしてついていただいていますが、まるっきり任せるというわけではなく、どんな学生さんでも必ずどこかのタイミングで私もフォローに入るようにしています。

また、チャットなどですぐに答えられないような質問は文献や論文を参考にすることはもちろん、知り合いの大学教授を頼ることもあります。

そのため、サポートの質は担保できていると思います。

 

生ごとに個別対応をするかねこちさん

 

―卒業後の年数が経っていく中で、常にフレッシュな学生さんと接していると思います。知識の更新やその時々の学生さんのトレンドを知ることも必要だと思いますが、それはどう対応されていますか?

 

予備校の動画などを観て自分自身も勉強したり、例えば新しいガイドラインが出ればサポートスタッフでもある現役薬剤師の方とお話して、最新の知識を仕入れたりしています。国家試験も最新のものを解きましたし、これからも毎年そうしていくつもりです。

 

 

“勉強の先にある目標を”持って、充実したキャンパスライフを諦めないでほしい。

 

―ご自身の学生時代と比べて、今の学生に感じることは何かありますか?

 

メンタル面や勉強方法の悩みなど……悩みそのものはそれほど変わらないと思います。学生さんは真面目でいい子が多いなという印象です。

 

私が学生さんに思うのは、しっかり勉強しつつ、最終的なゴールとしては”学生っぽい生活”ができるようになってほしいということです。だから「夏休みどこか行くんですか?」など、遊びのお話もけっこうします。だいたいは「勉強が怖いので遊びは……」と返されてしまうのですが…。

私の学生時代の目標は”遊べるようになること”で、皆さんの目標は、再試にならないことや留年しないことになってしまっているので、そこがとてももったいないと感じます。

その先にいけると思っていないというか「そんなの薬学部じゃ無理だ」と、はなから諦めている方が多い印象です。せっかく大学生なんですから、キャンパスライフも楽しみたいですよね。

 

勉強方法を見直せば、他学部と同じように勉強以外も充実した生活を送れるようになります。「それは金子さんだから」と思われることもありますが、でも、私も実際に本当に成績が悪かったですから。

 

勉強方法を変えて勉強自体が楽しくなったと言ってくださる方もいますし、中には成績が上がりすぎて友達に嫌味を言われたという方もいます(笑)

基本的に薬学生は真面目で、勉強をサボるから伸びないのではなくやっているけれどうまくいかないという方が大半なので、勉強のやり方や方向性を整える手助けをしてあげられたら、ちゃんと成績は上がっている印象です。

 

それまで勉強が忙しくてできなかったけれど、勉強が軌道に乗ったことで時間の余裕ができバイトを始めてみました、という方もいます。バイトを始めたりサークルに入ったりすると年上の人や学外・学部外の人との接点が増えて、コミュニケーション能力もつきますし時間の使い方も上手くなります。それ自体が自身の大きな財産になりますし、遊びや行動範囲の幅も広がると思います。

勉強がうまくいくようになったら、勉強以外の楽しいことをちゃんとやってほしいなと思います。

 

―今後の金子さんの目標を教えてください。

 

現在”日本一の薬学部オンラインスクール”を目指していて、オンラインの塾としてもっと規模を拡大していきたいですね。サポートさせていただいている人数が多くなり手が回りきらなくなっているのですが、この個別対応という形態は変えず、1対1でのコーチングを続けていきたいと思っています。

どうしても私1人だけでは対応しきれなくなるので、サポートスタッフをもっと増やしたいですし、採用するスタッフにも妥協はしたくありません。

 

同時に、サポートスタッフへの恩返しもしたいと思っています。

手伝ってくださる理由はさまざまで、シンプルに私の活動を応援したいという方もいれば、さまざまなライフイベントがある中で時間や場所にとらわれない働き方としてサポート事業を考えている方、CROなど薬剤師の中でもマイナーな職種を広めたいという方、将来的に小学生を対象に勉強を教えていきたいと考えている方……。

そういった方々の夢や目標を、今度は私がお手伝いすることで叶えたいとも思っています。

 

もちろん、具体的な勉強のフォローも可能です!

 

―最後に薬学生へのエールをお願いします!

 

薬学部に入って勉強以外のことに充てる時間を諦めてしまう方や、間違った勉強の仕方でうまくいかない方が多いと思うのですが、本当に諦めてほしくないと思っています。”勉強をするために勉強をする”ことが目標になってしまいかねないので、そうではなく、勉強をした先に薬剤師資格を取りたいとか、サークルやバイトをして私生活を充実させたいとか”勉強の先にある目標”を持ってほしいですね。

 

勉強をしているのにうまくいかずにしんどい思いをしている方もいらっしゃると思います。要領が悪いとか頭が良くないからとかではなく、一度、今している勉強方法を疑ってみてください。それを変えたら本当に自分が変わり、学生生活が大きく変わる可能性があります。