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薬剤師が奨学金返済のために知っておきたい12のこと

第7回 奨学金の繰り上げ返済について考えてみる

ファーネットマガジンでの連載を始めてから、薬学部生や若手薬剤師の方からのメール相談が増えてきました。 ある程度予想はしていましたが、結構深刻な内容が多いうえ、薬学生と薬剤師とでは悩みが大きく二つに分かれることが分かってきました。
◆薬学生の相談パターン
「親からの援助がストップしたので奨学金を利用したい・・・」 「留年してしまい奨学金が停止された・・・」 中には、卒業後の返済に対する不安や悩みの相談もありますが、学費の工面に関する相談が大半です。
◆薬剤師の相談パターン
「毎月の返済が大変・・・」 「奨学金の返済が負担で、結婚など将来設計を立てられない・・・」 奨学金の返済負担をリアルに感じられるのは、やはり社会人として働き始めてからなのでしょうね。 薬剤師の場合は、毎月の返済額が4万円を超えることが珍しくなく、しかもその返済が20年近く続くとなると、現実の負担感に加えて将来への不安感は大変なものだと思います。 今回は、連載2回目の「薬剤師としてのライフプランと奨学金の返済」を参考に、繰り上げ返済について考えたいと思います。

■奨学金の返済額を振り返ってみる

日本学生支援機構奨学金の返済額は借りた総額により決められます。 薬学部で6年間借りた場合の貸与総額と返済月額を改めて見てみましょう。 第一種奨学金(無利子)
第一種奨学金(無利子)
貸与月額 6年間計 返済月額 返済年数
国公立大学 自宅生 45,000円 3,240,000円 14,210円 19年
自宅外生 51,000円 3,672,000円 15,300円 20年
私立大学 自宅生 54,000円 3,888,000円 16,200円
自宅外生 64,000円 4,608,000円 19,200円
第二種奨学金(有利子) ※返済利率1.0%で計算
貸与月額 6年間計 返済月額 返済年数
30,000円 2,160,000円 13,846円 14年
50,000円 3,600,000円 16,629円 20年
80,000円 5,760,000円 26,606円
100,000円 7,200,000円 33,259円
120,000円 8,640,000円 39,910円
140,000円 10,080,000円 46,696円
次に、厚生労働省の「平成28年賃金構造基本統計調査」から、薬剤師の毎月の手取り額を見てみます。
薬剤師の毎月の手取り額の目安
年齢 性別 月給 税・社会保険等 手取額
25~29歳 男性 342,770円 -72,209円 270,561円
女性 314,300円 -66,351円 247,949円
30~34歳 男性 401,170円 -89,593円 311,577円
女性 334,270円 -71,173円 263,097円
住民税は地域により異なるので、あくまでも目安とお考えください。 また、地域格差や企業規模によっても待遇が異なるので、この平均額よりも多いことも少ないこともあるでしょう。 薬剤師としての給与だけを見ると、決して奨学金を返済できない金額ではないでしょうが、 20年という長い返済期間を考えると、その後のライフプランに影響を与える可能性は明らかです。 結婚や子育てを考えると、多少無理をしてでも、早く返済を終えたいというのは当然の気持ちです。

■奨学金の繰り上げ返済

日本学生支援機構奨学金の返済は大学卒業後から始まります。 返済方法は、自身が指定した振替口座から毎月27日に引き落とされる形になりますが、繰り上げ返済することで返済期間を短縮することができます。 繰り上げ返済の手続きを行うには「スカラネット・パーソナル(インターネット)」「電話」「郵送・FAX」の3つの手段がありますが、スカラネット・パーソナルが最も手軽な方法です。 少し細かいですが、奨学金の返済についての考え方をここで整理したいと思います。 奨学金の月々の返済額と返済年数は借りた総額により決められると先に触れましたが、より正確に言うと、返済年数ではなく返済回(ヶ月)数だと理解してください。 例えば、毎月の返済額が2万円の人が20万円を繰り上げ返済すると、10回(ヶ月)分を繰り上げ返済したことになります。 その結果、本来よりも10ヶ月、返済期間が短縮されます。また、有利子奨学金であれば、10ヶ月の利息分も節約されることになります。

■奨学金の返済は「元利均等方式」

「繰り上げ返済すれば、毎月の返済額も少なくなるのでしょうか?」 薬剤師に限らず、奨学金の返済を抱えている方からよく受ける質問のひとつですが、答えは「いいえ、毎月の返済額は変わりません」となります。 住宅ローンなど長期のローンでは、固定金利・変動金利のほか、「元金均等返済」と「元利均等返済」がありますが、日本学生支援機構の有利子奨学金は「元利均等返済」となっています。 かなり大雑把な説明ですが、元金均等返済は、初めの頃の返済額は大きいが返済を続けるほど月々の返済額が小さくなります。それに対して、元利均等返済では、初めから終わりまで月々の返済は同額です。 どちらが良いかどうかは一概に言えませんが、奨学金の利息についていま一度整理してみたいと思います。

■一般のローンに比べてはるかに低い奨学金の利息

前回のコラムでは、多くの若手薬剤師が勘違いしている奨学金の利息に付いて解説しました。 日本学生支援機構の有利子奨学金を利用する際には、「利率固定方式」と「利率見直し方式」のいずれかを選択することになりますが、いずれの方式も上限3%までと制限が設けられているうえ、実際はかなり低利で推移しているのが実情です。 ちなみに、2018年2月貸与終了者の適用利率は、固定方式(0.27%)、見直し方式(0.01%)です。 有利子奨学金の適用利率は貸与終了月に確定するので、若手薬剤師の方は自身が借り終わった年月の利率を確認してみてください。 日本学生支援機構奨学金の利率確認ページ http://www.jasso.go.jp/shogakukin/seido/riritsu/index.html その時々の市場金利に奨学金の利率も影響されるので、卒業年度による違いはありますが、一般のローンと比べると奨学金の利息はかなり低いはずです。

■貯蓄をしながら、1年に1回繰り上げ返済を

以前お会いした20代の女性薬剤師の方は数ヶ月に一度の頻度で繰り上げ返済を行っていました。その理由を訊くと、利息が気になるので繰り上げ返済に努めているとのこと。 繰り上げ返済はインターネットで簡単にできるとは言え、日々利息を気にしているというのは結構なストレスでしょう。先に述べましたが、有利子奨学金の利息はかなり低いのが実情です。 また別の女性薬剤師からは、「早く返済を終えたいが、結婚資金も貯めたいので全て繰り上げ返済に充てるのは不安」といった相談も受けました。 今後のライフプランを考えると、このような気持ちになるのも当然のことだと思います。 そこで、奨学金の返済を抱える若手薬剤師の方には、1年に1回の繰り上げ返済を勧めています。 毎月の給料から定額の返済を行いつつ、ボーナスの半額や3分の1の額を繰り上げ返済に充てる。そのようにして、貯蓄と繰り上げ返済を同時に行う。 かなり好待遇の職場に勤めたならば、奨学金の返済期間も一気に短縮できると思いますが、そうでない場合は、計画的に着実に繰り上げ返済と向き合っていくことが大切でしょう。

奨学金アドバイザー久米忠史先生 無料メール相談

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