吉田節子が教える!アロマテラピー |
第65回 香りのメモリー 19.ユズ
「アロマテラピーでユズ?!」と驚かれる方がいらっしゃると思いますが、この精油、侮れません。
ユズの原産国は中国で、奈良時代までに朝鮮半島経由で日本へ伝わったものと考えられており、平安時代の文献にすでに栽培していたと記録があります。日本最古の医学書である医心方にも収載されており、実に1000年以上日本で使われてきた植物です。現代では消費・生産ともに日本が最大。まさに日本を代表する柑橘類の一種と言えるでしょう。
ユズの学名は、Citrus junosで、種小名のjunosは四国、九州地方でのユズの呼び名である“ユノス”にちなんでいます。耐寒性が強く耐病性があり、日本の東北以南で広く栽培されています。翼がついている葉がユズの特徴で、枝には太くて鋭いトゲがあるため、収穫のときにはトゲで実を傷つけないようにハサミで一つ一つ大切に摘み取ります。
ユズは古来より邪気を払う果物として扱われてきました。冬至にゆず湯に入る習慣は現在でも続いていますよね。ゆず湯に入ることで、体を清潔にすると同時に温めて免疫力を高め、風邪などの外邪から体を守る役割があったとされています。
さて、ユズ精油は市販されているものとしては、果皮の圧搾法と果実の水蒸気蒸留法で採れたものがあります。私は圧搾法より水蒸気蒸留法で採れたものをおすすめしています。なぜなら光毒性がなく、香りも瑞々しいからです。お値段は少しだけ高いようですが、柑橘類で光毒性を考えなくて良いなんて、本当に使いやすくて有難いですよね!
ユズ精油の香りは、優しく爽やかな香りで心を和やかにしてくれます。気分を明るくほぐしながらリラックスさせる性質のある精油。気分を明るくしますが、刺激を与えたり、覚醒感を強めたりするものではありませんので安心です。また特質すべきは、不安感やうつの改善効果が認められているのです。まさにこの国の秋から冬にかけての気鬱に、最適な精油と言えそうです。
また、ユズの香りを嗅ぐことで「懐かしい」「幼い頃の映像が頭の中に出てきた」という感想を話されることが多数あり、記憶を引き出す作用もあるのではないかとも示唆されています。香りに関しても、また作用に関しても、ご高齢の方に使いやすい、優しい精油なのです。
ユズ ・学名/Citrus junos ・ミカン科 ・果皮の圧搾法・果実の水蒸気蒸留法