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薬学×付箋ノートBOOK著者 くるみぱんの薬学ノートと日常メモ

第53回「「カットオフ値」について理解しよう」

調剤薬局で算定される「後発医薬品調剤体制加算」は、後発品の使用実績によって評価される加算です。この加算に関連してよく耳にするのが「カットオフ値」という言葉ですが、どんな数値なのかあやふやな方も居るのではないでしょうか。

今回は後発医薬品調剤体制加算における「カットオフ値」の意味や背景、臨時の取扱いについてまとめました。

 

 

カットオフ値とは?

カットオフ値とは、調剤薬局で調剤した薬剤のうち、後発医薬品のある医薬品が占める割合のことです。

カットオフ値 = (後発医薬品のある先発医薬品+後発医薬品) ÷ 全医薬品 ×100%

後発医薬品がまだ発売されていない先発医薬品ばかりが処方されていると、この割合は下がってしまいます。

この値が50%以上であることが、後発医薬品調剤体制加算1・2・3を算定するための共通条件となっています。つまり、どれだけ後発品置換率が高くてもカットオフ値が50%未満であれば、加算は算定できません。

 

カットオフ値が設定されている意味って?

後発品置換率だけでなく、カットオフ値が設定されている背景としては、下記のようなものがあります。

〇後発品置換率しか見ない場合

後発品の使用量が少なくても点数が取れる可能性があるため


〇全体として後発品が十分使われているかどうかを見て、体系的な体制整備を促すため

例として、新薬ばかりを多く扱っていた場合、たとえ置換率が高くても、その薬局全体としての後発品取扱いが乏しいため加算対象外とされるわけです。

 

 

カットオフ値の除外品

カットオフ値は、薬局が調剤した全医薬品のうち、後発医薬品のある医薬品の数量が占める割合を指すものですが、「全医薬品」といってもすべての医薬品が分母に入るわけではありません。

一定の品目群は除外され、分母にも分子にもカウントしないルールになっています。

  1. 経腸成分栄養剤
  2. 特殊ミルク製剤
  3. 生薬
  4. 漢方製剤
  5. その他生薬・漢方処方に基づく医薬品

 

臨時的取扱い

カットオフ値の計算では、分母には一部の除外品を除いて全ての医薬品が含まれますが、分子には薬価が後発医薬品≧先発医薬品のものは含まれません。つまり、薬価が逆転してしまっている医薬品の使用が多いと、分母ばかり大きくなりカットオフ値が下がってしまいます。

そして、2025年4月の薬価改定でカルボシステイン錠やロキソプロフェンNaテープなどよく使われる医薬品の薬価が変更されました。そのため、分子に含めることができなくなり、カットオフ値が大幅に下がってしまう薬局が出てきました。

これに対して厚生労働省から臨時的取扱いとして、カットオフ値の算出に含める品目リストが公開されています。1ヶ月単位でリストに載っている医薬品を分子に含めることができます。カットオフ値が50%を下回ってしまいそうなときは活用したいですね!

 

 参考

令和7年度薬価改定に伴う診療報酬上の臨時的な取扱いに係わる追加対応について