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WEB連載

スポーツファーマシスト学習記録

番外編SP後編「スポーツファーマシスト対談 錦織功延さん」

みなさんこんにちは。スポーツファーマシストのシトロンです。

 

今回はスペシャルver後編です。 (前編はこちら)

 

錦織 功延(にしきおり こうすけ)

ドラッグストア、総合病院、大学病院、国立スポーツ科学センター(Japan Institute of Sports Sciences :JISS)の勤務を経て現在は、保険薬局で勤務する。JISSではオリンピアン、パラリンピアンへのサポート実績を持つ。

現在は、ライフセービング・アメリカンフットボール日本代表のサポートをする。またDINX株式会社、株式会社CANLIFEのスポーツファーマシストとしてスポーツビジネスにも携わる。薬剤師として子供から高齢者までの地域医療に携わる一方、アスリートへのメディカルサポートを行う、異色な薬剤師。

 

 

―現在のお仕事のこと聞いてもいいですか?

結構幅広くしていると思います。

メインの仕事は競技団体での仕事ですね。今正式に所属しているのは、ライフセービング協会とアメリカンフットボール協会です。

 

 

―競技団体のスポーツファーマシストの仕事って具体的に何をするのですか?

団体によって違いますが、方向性はどれも一緒です。

全部の団体で共通しているのは、日本代表へのアンチドーピング教育です。
トップカテゴリーに入る人への教育と、もちろんドーピングにならないように相談対応業務ですね。

 

―それは試合とかにも実際行かれるのですか?

例えば大会に行くとか合宿に行くとかは競技団体に長く入れば入るほど仕事は増えてきます。
今一番関わっているのはライフセービングです。2013年の夏に声をかけていただいて、もう10年経ちました。

 

 

―どのような経緯でライフセービングに関わることになったのですか?

この経緯が少し面白いのですが、、、

まず初めに競技団体に入るとなるとなかなか表から入ることは難しいです。


でも僕の場合JISSに行ったので競技団体関係者が集まっていて、その時にたまたまライフセービング協会で教育をする人が足らない、薬を調べられる人がいない…となっており、アンチドーピング委員会の委員として声をかけてもらいました。

 

その後選手の飲んでいる薬を確認してほしい。相談対応もしてほしいと色々幅が広がって、今はハイパフォーマンスチーム(強化指定選手)の専門スタッフとしての業務も行っています。

 

―アンチドーピング委員会とハイパフォーマンスチームはどんな違いがあるのですか?

アンチドーピング委員会は、選手の教育啓発がメインです。

薬剤師の他にもトレーナーや元競技者の方もいらっしゃいます。

 

実際の活動は、例えば大会のブースとかがあった時に教育啓発をするアウトリーチ、大会前のアンチドーピング教育、大会でドーピング検査があれば検査運営も担当します。

 

一方ハイパフォーマンスチームは、内容が重なっている部分もありますが、日本代表選手に向けての教育がメインです。あと、実際に大会行く前に使っている薬やサプリメントの確認も行います。

方法としてはアンケートフォームで集計するのですが、それだけだと情報が足りないので実際に会って個別面談をすることもあります。その内容と病態を確認して、2TUEの有無も確認しますね。

 

※2TUE:Therapeutic Use Exemptions「治療使用特例」のこと。

自身の病気や怪我の治療のためどうしてもドーピング禁止物質などを使わざるおえない場合、特例として使用が認められる場合がある。医師・選手ともに記入しなければいけない書類があるので、スポーツファーマシストはその作業が円滑に進むようサポートする。

 

 

―なるほど。色々な仕事がありますね!

もう少し違いがあるとしたらハイパフォーマンスチームの方がより選手と近い感じですね。

結構ここの線引きって、組織なので縦割りにはなっていますが、仕事自体は似ているところが多いので結構クロスしてしまいます。

 

ただ問題として、きちんとどちらかに当てはめないと、全部ボランティアになってお金が発生しないってことです。

 

 

―それは本当に大きな問題ですよね。

これは絶対切っても切れないとこだなと思います。

 

 
―今後どんなことがやりたいとか、今の時点でイメージありますか?

競技団体のスポーツファーマシストとして選手と一緒に日の丸を背負って、センターポールに日の丸を掲げることですね。一緒に見たい気持ちもありますけど、日本にいて帰ってきた選手を出迎える立場でもありかなって思っています。

 

 

―選手からなんて言われるのが1番嬉しいですか?

「ありがとうございました」ですね。

試合前まで色々と選手が納得するまで時間を費やしているので帰ってきた時に ありがとうございましたと言ってもらえるのが1番嬉しいです。

 

結果が出せなかった時はやっぱり泣いていたりもしますが、いろんな深みがありますし、そこもいいなと思っています。

 

―今高校生の頃の夢は何%ぐらいまで到達していると思いますか?

一旦ここはクリアはしたかなと思っいます。
実際には選手が表彰台に登って、 センターポールに日の丸が上がるところを一緒にはまだ見てないので90%ぐらいなんですけど、でも10何年やっていると、この目標さらに先の夢かな?と今は思っています。

 

昔は国際大会の現場に行ってみたいという気持ちが強かったのですが、今は一緒にいる二週間があれば他の競技の選手にも関われるので、大会に行かずとも裏でバックアップする形でもいいなと思っています。

 

 

―なるほど。では現在の夢はありますか?

スポーツファーマシストで食ベていきたいです。
今は週5で薬局勤務しながらこの活動を続けており、スポーツファーマシストとしては競技団体や企業のアドバイザーとしても、お仕事をさせてもらっています。

 

現在自分が40代になって働き方を考えた時、今後現場ばっかりだときついかなと思うので現場に行かないサポートの仕方ももっと考えていきたいです。

 

 

―色々な方向にお仕事が広がっていきそうですね!

今までの経験で代表の選手に教育することが自分自身好きなので、これからどんどん活動範囲が広がっていくと面白いなと思います。

 

 

 

 

元々日本のトップ選手が集まる国立スポーツ科学センターで勤務していた錦織さん。

スポーツファーマシストとしてすごい経歴の持ち主で、なぜそこまで色々なことができるのだろうとずっと不思議に思っていました。

けれど、今回お話を伺っていると、学生の頃から「スポーツの世界に関わりたい」という目標を常に意識して全力で取り組まれていること、そしてその情熱をさらに膨らませて現在も活動されていることをひしひしと感じました。

 

これからもお仕事の幅がますます広がっていき、また色々面白いお話が聞けるのを楽しみにしています。

 

お忙しい中お話いただきありがとうございました!