スポーツファーマシスト学習記録 |
第36回「パラスポーツににおけるアンチ・ドーピングについて」
こんにちは。スポーツファーマシストのシトロンです。
やっと気候が変わり冬らしい気温になってきました。
皆様いかがお過ごしでしょうか?
前回、前々回とスポーツファーマシストの錦織先生からお話を伺う特別編をお送りしました。
今の活動や今後のことなど、なかなか聞けないお話を伺うことができました。
(ご覧になられていない方はこちらから)
スポーツファーマシストは仕事の幅が広い分、いろいろな形で活動されている方が多くいらっしゃいます。私は結構そういったお話を聞くのが好きなので、これからも不定期に特別編としてこのような機会を作れればなと思っています。
いつかは全国のスポーツファーマシストの方のところへ伺ってインタビューしてみたい、なんて野望もありますが、それは徐々にですね。
では、本題に移ります。
今回はパラスポーツに焦点を当ててみたいと思います。
みなさんはどんな競技を見たことがあるでしょうか?
先日のパリパラリンピックでも多くのパラアスリートが活躍し、日本選手団は金メダル14個、銀メダル10個、銅メダル17個の計41個メダルを獲得しました。
当然のことですが、パラスポーツにもアンチ・ドーピングのルールが適応されます。
私もパラアスリートの方から何回も相談を受けたことがありますが、それぞれに事情があり難しい部分があるなと感じています。
アスリートからも
「治療で使っている薬だけなのに、申請するのって大変」とか、
「介助者の人にうまく伝えられない」
などといった話を聞くことがあります。
また、周りの関係者からは
「パラ競技でドーピング引っかかる事例なんてあるの?」
という質問をされることもありました。
そこで今回は実際に起こった事例について、みなさんとシェアしながら一緒に学んでいこうと思います。
これはボッチャ競技にて起こった事例です。
2022年アメリカの選手が競技会外検査を受けた際、陽性反応が出ました。
この選手はBC1というクラス分けで競技に出場していました。
ボッチャには障害の程度によりBC1からBC4のクラスがあり、BC1は車椅子を操作できず四肢・体幹に重度の麻痺がある脳原性疾患のみのクラスとされています。
(引用:一般社団法人日本ボッチャ協会)
日常生活でも支援が必要な選手が多く、当該選手も在宅ケアを受けながら競技を行なっていたようです。
では、なぜ陽性反応が出てしまったのでしょうか?
実はこれ、選手ではなく在宅ケアをしていたスタッフが謝って薬を渡してしまったことが原因です。彼の家族が飲んでいたフロセミドという利尿薬を本来の薬と間違って渡してしまい、その形状も似ていたことから選手も服用してしまったことでこのような結果になったと報告されています。
もちろん渡し間違えてしまったことが原因ではありますが、スタッフ側にもアンチ・ドーピングの知識がしっかりあればもっと注意深く対応できたのではないかと個人的には思います。
この事例を見ると、選手だけでなく周りの家族やサポートスタッフへの教育がいかに大事かを感じていただけるのではないでしょうか?
少しでも知っている知識を共有したり日頃から話し合ってもらえると、もっと理解が深まるのではないかと思います。
スポーツファーマシスト側も、そういった視点で教育活動をもっと広めていかないと、と実感した事例です。
いかがでしたでしょうか。
なかなかパラスポーツのアンチ・ドーピングについて取り上げる機会が今までなかったので、今回みなさんとシェアすることができてよかったなと思っています。
もっと気になる方はぜひHPで検索してみてください。
では本日はここまで。
寒い時期になってきました。季節の変わり目体調には気をつけてお過ごしください。
以上、シトロンでした。