吉田節子が教える!アロマテラピー |
第66回(最終回) 香りのメモリー 20.ロータス
ロータスとは蓮のことです。店頭で容易く出会うことはあまりありませんが、今やネットの時代。一昔前には入手困難だった香りも、ネットを通じてずいぶん簡単に手に入れることができるようになりました。
とは言ってもこのロータスに関しては、トリートメントを主とする日本のアロマテラピー業界においては、メジャーであるとは、お世辞にも言いにくいものです。でも、さすがは蓮というだけありまして、見た目の美しさ同様に一度香りを嗅ぐと忘れられない、そんな存在感のある香りなのです。
私はあるアロマテラピーの展示会で、この香りと出会いました。溶剤抽出法のものがほとんどですが、機会があればぜひ、水蒸気蒸留法で採れたものを嗅いでみてください。甘さと深みのあるオリエンタル・フローラル調ですが、瑞々しさも湛えていて、ここが展示会であることをひととき忘れてしまうくらい、うっとりとしてしまう香りでした。まさにこれが香りのメモリーともいうべき、香り一つでドラマが浮かびそうな精油なのです。
蓮の香りの魅力は、古くから知られていました。古代エジプト時代の壁画には、蓮の華を嗅いでいる絵が描かれています。抗不安作用や精神安定作用があると言われているので、紀元前の時代から人々はこの香りの精神的な作用を期待して利用していたということが分かります。
また、スキンケアとして使用する場合には、水蒸気蒸留法で採れた精油をおすすめしておりますが、肌の保湿力を高めてくれる作用があると言われています。香りの系統から見ても、他の香りにも合わせやすいと思いますので、興味のある方は化粧水やクリームを手作りする際にぜひ一滴使ってみてください。
蓮は仏教説話にもよく登場する植物です。蓮の品種は数多くあるため、お釈迦様との関連が深いとも言われています。蓮の特性として泥の中から生じるにも関わらず、花は全く汚れていないところや、また実と花が同時につくところから、どんなに汚れた世界であっても凛として真っ直ぐに人生を謳歌し、来世に期待するのではなく今世にて仏果を得ることができるのだと、その姿も香りも、私達人間を優しく鼓舞してくれる、そんな清らかな存在の植物と言えそうです。
ハス 科名/ハス科 学名/Nymphaea lotus ・Nelumbo nucifera 抽出法/溶剤抽出法・水蒸気蒸留法 主な産地/インド