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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第6回 基材を学んでアロマを上手に使いましょう ― その1

今回はアロマテラピーでよく用いる基剤についてのその1です。基材と言ってしまうと、「香り成分を薄めるためのただの溶媒でしょ?」と思われがちですが、基材についての知識こそ、薬剤師としての腕の見せ所なのです。アロマの知識が深い方ほど、作りたいものに合わせた基材選びが上手です。実際に私もアロマテラピーを使ったクラフト講座を開きたい方々から幾度となく質問を受けますが、最適な基材についての質問はおそらく半数くらいを占めると思います。

基材は大まかに①親油性基材 ②親水性基剤 ③その他 に分類できます。今回はその中でも、アロマトリートメントには欠かすことができない、親油性基材についてご説明します。

親油性基材とは
精油は親油性ですから、親油性基材を使えばしっかりと均一に混ぜ合わせることができます。代表選手は植物油です。主にアロマトリートメントをする時に精油を希釈するのに用いるのはこれです。国内のアロマ最大手団体である日本アロマ環境協会ではアロマトリートメントを行う場合、健康な成人には1%を超えない濃度で薄めるよう推奨していますが、団体によって異なり、海外では更に高濃度の使用を進めている団体も多くあります。

・スイートアーモンド油・・・スイートアーモンドの種子を低温圧搾して採ります。余計な匂いもなく、伸びが良く低感作性なので比較的誰にでも使う事ができます。バラ科アレルギーの人には注意しましょう。 ・オリーブ油・・・オリーブの果実から採れる植物油で、アロマファンがよく薬局に買いに来られますよね。注意したいことはスイートアーモンド油の場合は100%、これと精油を混ぜるだけで良いのですが、オリーブ油は栄養価が高く多くの有機化合物が含まれているため、体全体をトリートメントするオイルとしては少し感作性があります。全体の25%程度混ぜるといった形がベストだと思います。ここで薬剤師あるあるですが、オリーブ油を授乳されている新米ママさんが買い求められるケースがありますが、おもに元気な赤ちゃんに授乳のたびにかまれる乳房ケアですから、精油を混ぜてはいけません。赤ちゃんが母乳とともに精油成分をなめてしまう可能性がありますし、お乳の味が変わったと思って飲まなくなる危険性もあります。 ・米ぬか油・・・まだマイナーな存在ですが、大注目の植物油です。お米を精製する際に大量に捨ててしまっていた米ぬかを圧搾して、米ぬかから油を採ることができるようになったのです。皮膚にすぐに吸収されるためすべりが悪いので、全身トリートメントではなく、顔用の保湿油などとして使用されることが増えて来ています。 ・ホホバ油・・・ホホバ油は厳密にいうと植物油ではなく植物性ワックスです。そのため、伸びが良く皮膚上に留まりますので感作性が少ないためアレルギーを起こしやすい方にも使えます。主にベビーマッサージなどに使われます。 ・椿油・・・昔からちょんまげを結う鬢付け油として使用されてきた植物油ですので、ヘアケアには最適です。こちらもオリーブオイルと同じく、ヘアケアならこのままで大丈夫ですが、体全体のトリートメントの場合は25%程度にとどめましょう。

精油は香りをもった有機化合物の混合物です。ベストな基材にベストな濃度で薄めてこそ、素晴らしい香りを体験できますので大切な部分です。ということで次回引き続き基材論を語らせてください。