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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第19回 心いたわるアロマ体験談

本格的な冬が到来しました!子どもの頃は、冬=雪・こたつ・クリスマス・お正月と、あんなに楽しみにしていた季節なのに、大人になるに連れて寒さが身にしみるようになるのはなぜなのでしょうね…。
ちょっと夢のないことを書いてしまいましたが、実際にこの時期に突出して増えるご相談があるんです。それが「なんだか心にぽっかり穴が開いているようなんです…」。これを私は勝手に、「心の冷え」と呼んでおります。体と心は密接に繋がっていますから、外気温が下がれば表皮の温度も下がり、なんだか心の芯まで冷え切ったような物悲しい気分にさいなまれることがあります。
そんな時こそ、アロマテラピーです!今回は心の冷えに使いやすい精油をご紹介します。

①柑橘系・・・スイートオレンジ、ベルガモット、マンダリンなどの香りは、気持ちを前向きにするという研究結果が多数の国の研究機関を通じて集積されている、代表的な香りです。またどんな人にも好まれますし、ブレンドするときにも、合わないことがないと言っていいほど、汎用性が高く使いやすい香りです。

②フローラル系・・・ローズ、イランイラン、ジャスミンなどの花の香りの正体は、多数のエステル類。リラックスしながらも独特の高揚感が湧いてくる香りですので、女性の季節性神経障害や更年期にも好まれることが多い香りです。一つ注意してほしいのは、花弁から採取できる精油は非常に高価であるため、アセトンなどの溶剤を使って抽出したアブソリュートがよく出回っていますが、私はお勧めしません。高くても水蒸気蒸留法で採れた、ピュアな香りを使われることをお勧めします。せっかくの香りなのに、残った微量の溶剤によってアレルギー症状や頭痛が起こることがあります。

③甘いウッディ系・・・サンダルウッドやヒノキの芯材などの甘い木の香りは、落ち着きつつも心を温めてくれるかのような力強さを感じます。分子量の大きい化合物を多く含有するため、ベースノート(後残り)の香りとして使用することが多いです。入浴やトリートメントに使うと、冷え固まった心が解きほぐされるような感覚になります。

多くの香りをご紹介しましたが、中でも一番クライアントに感謝される香りは何かと聞かれたら、私は迷わずにローズオットー(バラの水蒸気蒸留法で得られた香り)と答えます!ローズオットーがテキメンに作用する方の特徴は、心が疲れすぎて何も考えられないというような、一種の強い喪失感を抱いている方です。時には泣くという感情すら忘れてしまったような方がローズオットーの香りを嗅いで、自然と涙がでて自分の気持ちを語ることができるようになった、という事例がありました。
しかしながらローズオットーは高価で、いつもすぐに用意できる香りではありません。1mlの価格が5000円以上することもあります。そんな時には、ゼラニウムやパルマローザをブレンドして代用します。本格的とは言えませんが、バラらしい香りに近づけることは可能です。これを商業的にやってしまうと偽和と呼ばれるかもしれませんが、香りのブレンドをご提案するのに問題になることはありませんし、もしかしたらその香りで、クライアントの気持ちが大きく晴れる可能性があるのです。

さて、日本でアロマテラピーが大きく認知されるきっかけになったのは、阪神淡路大震災でした。避難所の方々へのハンドトリートメントのボランティア活動で、多くの人が香りの素晴らしさに着眼し始めたのです。日本のアロマテラピーは、医学的というよりはむしろ、「心を癒す何か」という位置づけから始まったことも、意味深いことだと感じます。
私たちも患者さんの体だけではなく、心を癒す香りをご提案できる薬剤師を目指したいですね♪