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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第39回 薬剤師だから知っておいてほしいアロマの化学①

「アロマテラピー」=「芳香療法」と訳されますが、なぜ海外では古くから「療法」と認められているのか……。そこにはしっかりとした学問があったからなのです。
日本で周知され始めたのは1990年代。「アロマってちょっといい雰囲気がする・癒される」という「イメージ」が先行して入ってきたため、化学といってもピンとこないかもしれません。
今回は2回に分けて、アロマテラピーを化学の視点からお伝えしたいと思います。ちょっとマニアックな内容ですが、きっとこの記事を読んでいただいている薬剤師さんや薬学生さんにはわかっていただけると思います!

〇精油は数百種類の化学物質の混合物である
→精油は植物を蒸留したもの。簡単に言うと、例えば主流の水蒸気蒸留法であれば、裁断した植物に水蒸気をあてて香り成分を気化させ、それを冷却器の中を通すことで再び液化させたものです。
香り成分とは、熱をあてると気化して飛ぶほどの軽い小分子であり、平均で200~300種類の小分子が集まったものと言えます。
ローズなど芳醇な香りは、500種類近い小分子が混ざり合って構成されています。そう考えると精油の小瓶を見るたびに、ミクロの分子構造が混合されている世界が見えると楽しいのに……と思ってしまいますね。

〇精油の化学は有機化学
→精油を構成している分子は、ほとんどが有機化合物、つまり炭素原子が連なる骨格を持った化合物ばかりです。それは抽出の過程において、水溶性の部分は除いてしまうからです。
水溶性の部分にはミネラル分などが多く含まれていますが、この部分を一緒に瓶詰めしてしまうと持ちが悪く、香り成分も劣化してしまいます。つまり精油の性質としては、「芳香性があり、揮発性があり、脂溶性である」ということが成り立ちます。

〇精油の化学は簡単!なぜならCHOの世界だから
→ほとんどの精油の芳香物質は、科学的に見るとC(炭素)、H(水素)、O(酸素)原子で成り立っています。まれにS(硫黄)やN(窒素)が植物の中の香り成分に含有されることがありますが、ニンニクなど独特で強烈な香りなので、アロマテラピーとして精油という凝縮された形で使われることは、まず無いと言えるでしょう。
そして精油の中の芳香成分の骨格は煩雑ではありません。なぜなら軽くないと揮発性が無いので、空気に乗って飛び香りとして人間の鼻粘膜にくっつけないからです。せいぜいCが20個程度のジテルペン程度です。
つまり、数個のCとHの骨格にOが修飾されているといった形の原子がたくさん混合されている、それが精油の小瓶の中の世界なのです。

いかがでしたでしょうか? 少しでも精油の中身を見る時の視点が変わってくると嬉しいです!
次回は代表的な構造と作用の違いを説明しますね。