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薬剤師 吉田節子が教える!アロマテラピー

第40回 薬剤師だから知っておいてほしいアロマの化学②

前回は『精油は有機化学の世界』というお話をさせていただきました。今回はその少し奥の構造についてのお話です。原子・分子の世界に思いを馳せて、イメージしながら読んでいただけると嬉しいです。

〇骨格は軽くないといけない
前回説明させて頂いた通り、分子が香るためにはまず鼻粘膜までたどり着かねばなりません。そのため、骨格は軽い必要があります。軽いからこそ、揮発性が生まれるわけです。ですから香り分子のほとんどはモノテルペン(C10)からジテルペン(C20)くらいの大きさになります。
C(炭素原子)が連なった鎖状骨格のものもありますし、環状になったものもあります。そこに、O(酸素原子)やH(水素原子)といった原子が官能基として組み合わさっているという構造になります。

〇官能基の種類と作用
・アルコール類……ポピュラーな―OHがついているものにはさまざまなバリエーションがあります。香りもグリーン系からフローラル系まで多種多様。それだけ鼻粘膜にくっつきやすいと言えます。作用は広すぎて一言では言えませんが、総じて軽い抗菌作用があります。
例)メントール、リナロールなど

・アルデヒド類……炭素骨格に―CHOがついています。酸化の途中の構造ですので、刺激性があります。十分に希釈せずに皮膚につけるのは避けましょう。神経的な作用としては交感神経興奮作用があります。また、血行を改善する作用が多数報告されています。
例)シトラール、シトロネラールなど

・ケトン類……C=Oを持つ化合物です。体内に入ると代謝されにくいため、トリートメントなどで使う時は、大量使用は避けましょう。にもかかわらず、少量を使うと去痰作用を有するものがあり、ホメオパシーのようだと驚いたことがあります。
例)カンファー、ヌートカトンなど

・エステル類……―COOHがついています。構造としても安定しており、植物が育つ過程で酸とアルコール類が反応してできる最終産物なので、芳醇な良い香りがするものが多いです。果実の香りや花の甘い香りなどはほとんどがエステル類です。
ミントやセージなど、さまざまな香りの品種がある植物がありますが、すべて最後にできるエステルの種類が少し違うだけなのです。
作用は鎮静作用や抗炎症作用があるものが多いです。
例)酢酸リナリル、酢酸ベンジルなど

・フェノール類……ベンゼン環に―OHがついたものを特別にフェノール類と呼びます。強い殺菌作用や抗炎症作用を持ちますが、香りは薬品臭そのものなので、アロマの世界で重宝されることは少ないと言えそうです。医薬品の発見にもつながった、他とは違う強力な官能基です。
例)チモール、オイゲノールなど

アロマというとあいまいで優しいイメージですが、化学の視点からとらえてみると、なんだか斬新でより正確にアロマテラピーの世界に触れることができます。興味のある方はぜひ学んでみてくださいね。